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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パニック関連

戦争は核ミサイルから

作者: よぎそーと

 その戦争は核ミサイルで始まった。



 開戦と同時に核ミサイルが発射された。

 それが首都で爆発した。

 多数の人間が死んだ。



 それから戦車や戦闘機などの通常兵器の部隊が動いた。

 中枢を破壊され、まともに行動できない防衛側は簡単に蹴散らされていった。



 戦争は呆気ないほど簡単に侵略側の勝利で終わった。

 そのまま占領がはじまる。



 この核攻撃に各国は抗議を出した。

 究極の大量破壊兵器。

 それを民間人が多数住む首都に撃ち込む。

 暴挙というだけでは足りないほどの大量虐殺である。



「それがどうした?」

 撃ち込んだ方はまったく意に介さなかった。

 確かに抗議はある。

 だが、抗議だけでしかない。

 鬱陶しくはあるが、損害はない。

 そんなものがいくら届いても害にはならなかった。

 面倒ではあったが。



 それに、他の核保有国が攻撃をしてくるわけでもない。

 侵略先の占領制圧を阻止してくるわけでもない。

 禁輸措置などもしてこない。

 どの国も核攻撃をおそれて何もしない。



 交易も今まで通り。

 特段有利になる事もないが、不利な条件をふっかけられるわけでもない。

 豊かになりはしないが、今まで通りに必要なものや欲しいものは手に入る。



 それもそうだろう。

 核攻撃を恐れてるのだから。

 誰も何も言わないし言えない。



 いわゆる報復核攻撃もない。

 互いの核攻撃による相互確証破壊もない。

 全ては核攻撃を行った侵略国の思いのままだった。



 こんな侵略国に核攻撃を、という声もある。

 軍隊を出撃させろとも。

 だが、それらが実現する事はない。

 侵略国は核攻撃をためらわない。

 そんな者達に核攻撃をしたら、確実に報復がくる。

 そんな危ない橋は渡れなかった。



 軍隊を送り込んでも同じだ。

 その報復に核攻撃が来る。

 確実にやるとは言いがたいが、発射する可能性は充分にある。

 少なくとも実績は既にある。



 こんな調子である。

 報復する意思がないのだから、報復の連鎖などあるわけがない。

 相互に核ミサイルを撃ち込まないのだから、互いに互いを確実に破壊する事もない。

 一方的に侵略国が猛威を振るっただけだ。



 暴力団がのさばってるのと同じだ。

 人間は暴力をふるう者に服従する。

 侵略国は核攻撃という圧倒的な暴力をふるった。

 それに誰も対抗しない。

 自分が狙われる事をおそれて。



 大きな勘違いを世界はしていた。

 侵略国はためらう事無く核攻撃をする。

 つまり、世界は既に攻撃対象になっている。

 やるかやらないかは、侵略国の気分次第。



 だからどの国もご機嫌うかがいをはじめる。

 核保有国もだ。

 対抗する手段があるとはいえ、攻撃を受けないならその方が良い。

 下手に機嫌を損ねて核ミサイルを撃ち込まれたらたまらない。

 反撃手段があっても、攻撃を受けて被る損害は無視できない。

 被害を少しでも受けるなら、ご機嫌うかがいをしていた方がマシだと判断した。



 それを世界は選択した。

 例え一方的に損をしてもだ。

 侵略国は無傷で防衛側の国を制圧した。

 核攻撃を受けた国は悲惨な事になってる。

 一方的に損をしてるのは防衛側だった国。

 得をしたのは侵略国だけ。



 そんな状態が、世界中にひろがっていく。

 いつ暴力を振るってくるか分からない侵略国。

 だが、それらの機嫌を伺ってれば痛い目にあわずにすむ。

 核ミサイルを撃ち込まれた国は可愛そうだが、他国が気にする事ではなかった。

 直接被害にあったわけではないのだから。



 世界はこうして侵略国の奴隷になった。

 それをよしとした。

 生きているならそれで良いと。



 それがその後に続く侵略国の横暴を許す事になった。

 侵略国は周辺国をいくつも侵略。

 次々に制圧していった。

 それを誰も止めなかった。



 そうして幾つかある核保有国も攻め込まれていく。

 核攻撃を受けるよりは、とどの国も抵抗もせずにくだっていった。



 最後にのこった国は、もう少し積極的だった。

 この状態を放置できないと核ミサイルを発射した。

 侵略国に向かって。

 ようやく行われたささやかな反撃だ。



 ただ、反撃の仕方が最悪だった。

 放った核ミサイルは一発だけ。

 それも、相手を必要以上に刺激しないようにと無人地帯に撃ち込んだ。

 そんなもの、侵略国が気にするわけもない。



 これが核ミサイル発射基地だったら。

 軍事基地だったら。

 工場などの生産地帯だったら。

 人口密集地帯だったら。

 侵略国の中にあるそうした場所の全てに攻撃を仕掛けていたら。

 おそらくその後の反撃もなかっただろう。



 だが、何の意味もない攻撃をした。

 それで相手が止まるわけもないのに。



 報復は即座に行われた。

 最後の核保有国は、国の全土に核攻撃を受けた。

 軍事基地だとか民間の地域だとかいう区別もなく。

 徹底的な破壊を行った。



 少しずつ様子を見よう、などという馬鹿げた考えで事を起こした結果である。

 やるなら最初から一気にやる。

 侵略国が初手で核ミサイルを発射したように。

 防衛に回った敵の首都を一気に破壊したように。



 この瞬間、世界は侵略国の奴隷となった。

 侵略国は各国からあらゆるものを収奪。

 空前絶後の繁栄を手にした。

 対照的に各国は、貧困に陥り困窮の中で衰退していった。



 相手を刺激しないように。

 自分に被害が及ばないなら。

 そうして横暴な連中を放置してきた結果である。

 同情の余地も何もない。

 生きていればと問題を無視して、生きている事すら出来なくなっていく。



 暴力を認め、暴力に服従した者達。

 暴力による蹂躙を認めた者達は、当たり前のように踏みにじられていった。

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