兄の躊躇い
あああ
庄三くんに言われた。
「もう今後は、やめてください。」と。
「わたし、雨風の当たらない、邪魔にならないところに、置いたん…」
「そういう問題ではないんです。
荷物が届いているか、どうかがお客様が分からないのがネックなのです。」
私は、このとき、何でも、そつなくやれる集配ドライバーに本当になりたい…と思った…。
が、その気持ちとは裏腹に、
「まぁ、気づいてもらったんだから結果オーライだよね♪」という言葉がサラリと出てしまい、
強ばった顔の庄三くんが、何か英語で捲し立てた。
「…ユー サーティンリー ソー キュート、バット、
ノンノン クレーバー…」
「は?
イギリス帰りか知らないけど、言いたいことはハッキリ言って!」
「ガッテム!!」
「キー~~!!!」
… …
…
庄三くん、庄三なのに、三男ではないからな。
「え、そうなの?」
事務員は、基本、自分の担当ドライバーのエリア情報だけを把握していればいいのが、うちのスタンスだが、庄三くん、営業所のすべてのエリアをほぼ詳しく知り尽くしているからな!
俺なんか、担当している隣街でさえも、己の管轄以外のエリアは、よく分からんのが現状であってな…。
あ、でも、
庄三くんに、腕時計の話は、振らない方がいいぞ…。
「腕時計?」
この間、セイコーとオンピースのコラボの時計をしていて、
「お、チョッパー!」と思わず言ってしまったら、その日、休み時間、お昼タイム、帰り際まで、その時計の話を延々と聞かされてさ、
シリアルナンバー入りで、羅針盤は黒は、かなりレアで、ほかのキャラの時計も託さん出ていて、それらにも各々特徴もあって、…とマジで話が止まらなかったわ…。
兄ちゃん、あるとき、本当に、
良く生きよう、良く生きるんだ!
って、しゃにむにアンテナを張っていたんだけどな、
まぁ、ちょっと今は、その反動もあって少し疲れていて…。
落語家を目指す人が、どのくらいいて、どのくらいの人が真打ちまで昇格されるのかは、俺は、はっきりとは分からないけど、
テレビを見ていて、すごい名の知れている落語家さんが話しているのを俺は見ていたんだが、お弟子さんに『普通にやれ、そのようにやって、にじみ出てくるのが、お前の個性だ』みたいなことを、よく言うらしいんだ。
俺は、入社してきた和子を始めから見てきたが、兄ちゃんも含め、父さん、母さん、
そして、ちょっと癖のあるヒトや血の気の多い人もいるけど、それ以上にハートフルな営業所のみんなが、やっぱり、今まで、おまえに色々、言ってきてくれたと思うんだ…。
だから、そのだな、
まぁ、今からも、これからも、と同時に、すでに、事は成されているというかだな…
今まで、和子が、どのように、やってきたかが…
あれ、どうした急にうつむきかげんになって?
「…お兄ちゃん、わたし、わたし、