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【書籍化】秋津皇国興亡記  作者: 三笠 陣@第5回一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞
幕間 北国の姫と封建制の桎梏

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1 御家再興

 病を得て体に不自由を生じるようになった景忠公に代わり、宵が他家に赴く機会は多かった。

 本来であれば景忠公正室の久姫が行う役目もあるのだが、久の政治的無関心(あるいは政治的能力の欠如)から、次期当主正室である宵が積極的に動く必要があったのである。

 その代表格が有馬頼朋翁と長尾多喜子との会談なのだが、その二家とだけ家同士の交流があるわけではない。また、領内の視察・慰問なども宵は精力的に行っている。

 ただ、やはりそうした政治的な場は必然的に駆け引きや互いの腹の探り合いが始まることから、時々、辟易した気分になることもある。

 景紀がいればこうした政治的な問題について一緒に相談することが出来たし、それによって精神的に楽になることが出来た。

 しかし、戦時中となればそうもいかない。

 あの呪術空間でのつかの間の逢瀬は、本当に偶然の産物であった。

 鉄之介や八重は比較的宵に気楽に接してくれる相手ではあったが(特に八重)、やはり景紀の代わりにはならない。

 自分に付けられた護衛である菖蒲は完全に臣下としての態度を崩さないし、新八についても口調そのものは気安いものであるが、態度はやはりどこか一歩引いたものがある。特に新八の場合、男性であるために余計に宵に対する態度が慎重になっている部分があった。

 それはそれで宵に妙な噂が立たないように気を配ってくれているのであろうが、主従関係というものの難しさを感じてしまう。景紀と冬花の関係が、本当に羨ましく思える。






 そうして“結城家次期当主の正室”として動き回る宵であったが、一方で彼女には“佐薙家の実質的な家長”という立場もあった。

 佐薙家自体が政治的・経済的に没落し、ほとんど結城家に従属するような立場に追いやられてしまっているため、宵が実家である佐薙家のために政治的判断を下さなければならない場面というのはこれまであまり生じてこなかった。

 せいぜいが、景紀と共に行った領内振興政策の進捗状況について報告を受ける程度である。

 しかし、戦時という状況が結城家と佐薙家を巡る関係に、ある問題を引き起こしていた。

 それは、戦後における論功行賞についてであった。

 佐薙家領嶺州の兵士たちが、歩兵第二十八旅団として戦地に赴いている。彼らは結城家領軍と共に遼東半島を占領し、遼河平原の重要拠点たる海城まで電撃的に進攻したという戦功を挙げている。

 さらに冬季攻勢の失敗を糊塗するために、大本営は遼河平原防衛戦における第三軍の活躍をいささか誇張して発表していた。

 こうしたことから、これら戦功を御家再興の機会と捉えている佐薙家家臣団もいたのである。

 こうした運動に佐薙家次期当主たる大寿丸の母・定子も加わっているという報告が、宵の元にも寄せられていた。

 どうやら定子は、未だ自分の息子に佐薙伯爵家を継がせるという未来を諦め切れないらしい。

 御家再興を望む家臣団の間でもその目的は分かれているらしいが、大きく分ければその目的は元当主・佐薙成親の配流を解くこと、戦後の論功行賞に備えて大寿丸を元服させることの二点にまとめられる。

 佐薙成親や当時の重臣・側近たちが犯した、長年にわたる電信維持費横領という事実から考えれば、たとえ佐薙成親の配流が解かれたとしても、当主として復帰することは不可能だろう。

 だからこそ、どちらかといえば家臣団の望みは大寿丸の元服であった。

 戦後の論功行賞を前に元服させることで、彼が賞典禄などを受け取る資格のある正統な佐薙家後継者であることを示したいのだ。

 つまり逆に言えば、実質的な家長となっている宵の佐薙家に対する影響力低下を狙っているとも受け取れる。

 大寿丸は今年で満九歳となり、数え年では十歳である(二月時点ではまだ満八歳)。

 皇国では近代的な学制や徴兵制が整えられた関係で、法律上は満年齢で歳を数えることを定めている。しかし、七五三や年祝いなどの伝統行事では未だ数え年を用いる場合も多い。

 だからこそ、数え年十歳となったから元服の儀を行いたいという佐薙家家臣団の要求は、ある程度、道理が通っていた。

 もっとも、佐薙家は現在、領軍であった嶺州軍(歩兵第二十八旅団)の指揮権を失っている。このため、たとえ大寿丸が元服を果たし、己の戦功を主張したとしても軍の率いる立場にはない以上、今次戦役に関する賞典禄などを受け取る資格は存在しない。

 そもそも、自らは何もしていないのに戦功だけは主張するなど、景紀を始め自ら前線に赴いた将家の人間たちから失笑を買うだけだろう。

 場合によっては、嶺州の民たちからもそう思われるかもしれない。


「どういたしましょうか?」


 宵のところに景忠公側用人・里見善光がやって来て、そう判断を仰いできた。

 どうやら佐薙家は、結城家現当主・景忠に大寿丸元服に際しての烏帽子親を務めてもらいたいと考えているらしい。ある程度は、結城家に配慮しているわけである。


「この件について、景忠様は何と?」


「景紀様は満十歳で元服の儀を行いましたので、大寿丸様に関しましてもそれに倣うべきとのご意見のようです」


「つまり、兵学寮入学直前に行うべき、というお考えなのですね?」


「はい、その通りにございます。それに、幼子にそのような重荷を背負わせるのも酷であろう、ともおっしゃっておりました」


 景忠公は、大寿丸の境遇にそれなりに同情しているらしい。自分の子供が次々と流産ないしは夭折し、景紀ただ一人となってしまったことで、子供には甘いのだろう。景紀への円滑な当主の継承に腐心していることからも、それは窺えた。


「では、景忠様のご判断通りで」


「ははっ」


 里見は宵に対して平伏した。

 景忠公や里見がわざわざ宵の意見を窺いに来たのは、宵に対する配慮だろう。里見に関しては自分に対する影響力強化を狙っているのかもしれないが、いずれにせよ、佐薙家のことで宵があえて便宜を図る必要もない。

 自分は景紀の正室として、彼を支える決意をしたのだ。

領民たちの関わってくる問題ならばともかく、大寿丸の元服はあくまで佐薙家内の問題である。

 結城家家臣団に対して宵が次期当主正室であるという立場を堅持していることを示すためにも、実家である佐薙家に不必要に肩入れするわけにはいかなかった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 宵やその周囲の結城家家臣団が彼女を次期当主正室として見ていたとしても、佐薙家家臣団までもがそう見ているとは限らない。

 むしろ政略結婚という経緯を考えれば、結城家と佐薙家という家同士の結び付きを強め、それによって佐薙家に恩恵をもたらすのが宵の役目であると考える佐薙家家臣団も、一定数、存在している。

 宵の実父である成親が、結城家に嫁いだ後の娘を誘拐して尋問するという凶行に及んだのも、究極的には宵が実家である佐薙家に利益をもたらそうとしているのか疑わしかったことが原因である。

 宵自身は、佐薙家ではなく故郷・嶺州に利益や恩恵をもたらそうとしていたのであるから、宵と一部の佐薙家家臣団の意識に乖離が生じてしまうのも、やむを得ないことといえた。






「宵姫様は佐薙家の再興にご関心があられないらしい」


 皇都のとある邸宅に、佐薙家家臣団の中でも特に若い者たちが集まっていた。

 一人は、佐薙家重臣の大堀家の嫡男・史高(ふみたか)という二十六歳の青年であった。

 この邸宅は、史高の父が皇都で作った愛妾を住まわせるために作った、いわゆる妾宅であった。


「やはり、あの娘は所詮、長尾家の血を引く人間ということか」


 失望と怒りを込めてそう言ったのは、同じく佐薙家家臣団重臣の家系に生まれた戸澤義基(よしもと)であった。


「こら、義基。流石に姫様に対して不敬であるぞ」


 義基の発言を、史高は咎める。


「事実を言って何が悪い」


 義基は不機嫌に鼻を鳴らす。

 二人は学士院の同期であり、その後は二人して千代の東北皇国大学に進むなど、子供の頃からの長い付き合いがあった。そのため、互いに対する気安さがある。


「だいたい何故、若君の元服に結城家の許諾を得る必要がある?」憤慨したように、義基が吐き捨てる。「宮内省宗秩寮に申請すれば、それで済む話ではないか。烏帽子親は、定子様のご実家の者に務めてもらうという手もあろうに」


「仕方あるまい。今の主家は結城家の庇護下にあるようなものだ。不用意に機嫌を損ねるようなことがあれば、それこそ主家の再興という目的は達せられん」


「それは佐薙家に仕える者として、あまりに卑屈な態度ではないか?」義基は史高を睨み付ける。「我らが仕えるべきは佐薙家であって、結城家ではない」


「事実は事実として認めねばなるまい」


 史高は腕を組んで唸った。


「御館様……、ああ、もうそうは呼べぬのであったな。成親様の行いの所為で、佐薙家の立場は非常に危ういものとなってしまった」


 もともと佐薙家と長尾家の対立は皇国臣民の広く知るところであり、佐薙家の中で長尾家の血を引く宵が冷遇されていたことは、佐薙家の者でなくとも華族の事情に詳しい者ならば周知の事実となっていた。

 そうした中で発生した成親による宵誘拐事件は、その後に佐薙家による電信維持費横領事件が発覚したこともあり、多くの人間たちの同情が宵に集まる結果となってしまった。

 佐薙家家臣団の中にも、成親は強迫観念に駆られ過ぎていたのではないかと批判的に思っている者も多い。

 そのために、現在の佐薙家家臣団は分裂を起こしていた。

 一つは、主家の再興を目指す者たち。この中には単に六家への反発を抱いている者たちも多く、主家への忠誠心だけではない、複雑な感情を抱えている者たちもいる。

 二つ目は、宵姫の目指す領内振興に賛同して、それに従う者たち。どちらかといえば、現在の佐薙家家臣団はこちらの方が主流派であった。

 三つ目は、日高州に配流された佐薙成親に付き従って日高州の開拓団に志願した者たち。

 主に家臣団はこの三系統に分かれ、当然ながら日高州に渡った者たちは嶺州領政にはまったく関わっていない。

 この他、佐薙家に最早将来はないと見切りを付けて、マフムート帝国に向かう牢人傭兵に参加する者も存在していた。

 問題は、嶺州や皇都に残った佐薙家家臣団が主家の再興と領内の振興という二つの目的で分裂してしまっていることである。

 史高の父は、佐薙家重臣の中でも清廉潔白と評判の高い人物であった。それ故に電信維持費の横領には一切関わっておらず、横領に関わった他の重臣たちのように成親の失脚に連座して財産没収の上、流罪となることはなかった。

 ただし清廉潔白というのも善し悪しで、結城家から引き続き嶺州領政に携わって欲しいという要請を断り、家督を息子である史高に譲ってしまった。そして自身は士族籍を脱した従兄弟が運営する北溟道の農場に身を寄せ、嶺州に近寄らないようにしている。

 主君の不正を見抜けなかった自分がこれ以上領政に関わるべきではないという思いと、成親時代の重臣が留任していては結城家も嶺州統治がやりにくいだろうという配慮からの決断であったという。

 家督は嫡男である史高が継いだものの、まだ若いことを理由に重要な役職には就けられていない。現在の彼は、佐薙家皇都屋敷にあって結城家を始めとする他将家との折衝を担う渉外担当掛の一人であった。

 一方、史高とは学士院、大学と同期であった義基は、皇都の政情を嶺州に報告する役目を負っている。

 共に、本来であれば佐薙家重臣の次代を担うべき男たちであった。だからこそ、宵姫の態度には失望や怒りを禁じ得ないのだ。


「成親様のなさったことは、我ら家臣団が不甲斐なかったことにも一因があろう」


 前当主・成親にいささか批判的な史高に対して、義基は成親の行いに一定の理解を示していた。


「だからこそ、今度こそ我らで次期当主であられる大寿丸様をお支えせねばならんのだ」


「宵姫様の態度には、私も疑念を抱いている」


 主家再興に積極的な義基に対して、史高は渋面を浮かべていた。


「嶺州は、正統なお血筋を引く方の手で統治し、発展させるべきだ。領民は主君に忠勤を誓い、主君もそれに応えて仁政を行う。これが皇国の伝統であった。しかし、宵姫様のなさりようは……」


 一瞬、史高は口ごもる。

 たとえ長尾家の血を引くとは言え、宵姫もまた佐薙家家臣団が仕えるべき人間の一人である。それを安易に批判しても良いのか、少しの間、逡巡する。それでも、彼は続けた。


「姫様のなさりようを見ていると、良い政治を行えるのならば統治者は誰でも良い、と言っているようにも感じるのだ。これは、民権派の者どもが唱える共和制に繋がりかねない危険思想だ。領内の振興のために結城家の援助を引き出したことは姫様の功績であろうが、それは嶺州の正統な統治者と連携して行うべきものだ」


「ならばなおのこと、若君には速やかに元服して頂き、嶺州領主の正統な後継者であることを民に示す必要があろう。このままでは、戦後の論功行賞にも佐薙家は参加出来ぬ」


「しかし、段階は踏まぬとかえって主家再興が遠のく可能性もある。そもそも、佐薙家が軍権を失っている現状で、どう論功行賞に参加するというのだ?」


「むっ……」


 痛いところを指摘されたからか、義基が黙り込む。だが、すぐにまた口を開いた。


「……しかし、元服して後継者であることを示さぬことには、軍権を取り戻すことすら出来ぬはずだ。いずれ、西洋列強と対決する日が来よう。その時に、若君が軍を率いられるようにするのが、我ら臣下の務めであるはずだ」


「まだ兵学寮にも入ってもおらぬ若君であるぞ? 大寿丸様が兵学寮をご卒業あそばされるまで、まだ六年以上ある。まずは入学試験を見据えたご教育に力を入れるべきではないのか?」


 兵学寮には皇族・華族のための特別入学枠があるが、無試験で入学というわけにはいかない。入学者全員の学力を測るためにも、特別入学者、試験入学者ともに入学試験が課されるのだ。


「結城の若君は兵学寮の入学試験で首席を取った。そして卒業までそれを維持した。そこまでとは言わぬが、せめて上位十位には収まっていただかねば、若君が御家再興のために家臣団をまとめることも難しくなろう」


「六年も待てぬから、若君には早く元服して佐薙家の正統な後継者であることをお示し頂かねばならないのだ」


 史高の言葉に、義基は納得しなかった。


「六年もあれば、あの長尾の小娘と結城の小倅との間に何人かの子が生まれているだろう。長男は結城家を継がせ、次男には佐薙家を継がせるということをせぬと、どうして言えよう? 今のうちに、大寿丸様には佐薙家次期当主としてのお立場を確立させて頂かねばならないのだ」


 結城家、そして宵姫の下で嶺州が発展していけば、当然、結城家と佐薙家、双方の家の血を引く者を新たな領主にすべきという声が出てくるだろう。それが領民の間にまで広まってしまえば、最早、大寿丸を新たな当主に戴く形での佐薙家再興は不可能となってしまう。

 佐薙家は、結城家の一分家のような存在に転落してしまうだろう。

 それが、義基の懸念していることであった。


「若君の元服は、佐薙家家内の問題だ。本来であれば結城家にお伺いを立てる必要もなければ、許しが必要なものでもない。ここは、元服を強行すべきだ」


 史高が渉外担当掛であるからか、義基の口調には説得するような響きがあった。


「これは、俺だけの意見ではない。嶺州にいる家臣団たちも、若君の元服を望まれている」


 嶺州との連絡役となっている義基は、嶺州の事情にも詳しかった。もっとも、自分の望む情報を誇張して伝えている面もあっただろうが。

 渉外担当掛の史高にとっては、難しいところであった。彼もまた、佐薙家の男系男子である大寿丸が佐薙家を継ぐのが正しいと考えている。

 しかし一方で、現在の佐薙家が結城家に従属するような立場になってしまっていることも事実であった。

 それに納得している家臣は嶺州の振興に力を尽くそうとしており、彼らも彼らで正しいと史高は思っている。

 佐薙家再興の問題は、所詮は御家騒動のようなものだ。それによる混乱によって徒に領民を苦しめる結果になってしまえば、かえって彼らの心は大寿丸から離れていくだろう。

 しかし一方で、正統な領主の下で故郷たる嶺州は発展させなければならないとも思っている。その意味では、宵姫が佐薙家家臣団の一部や領民に対して求心力を発揮している現状を看過するわけにはいかない。

 そして、領民が佐薙家と結城家双方の血を引く者を新たな領主に迎えようという動きが出てくれば、これは最早皇国の統治体制を根本から突き崩しかねない大問題である。

 領民が領主を()り好みしようとするなど、それは共和制思想に繋がりかねない危険な思想的動向である。

 その意味では、宵姫の存在は嶺州の思想的安定にとって極めて危険であった。

 宵姫が大寿丸を尊重する姿勢をとってくれれば、もう少し問題への対処はたやすかっただろう。しかし、あの姫君は佐薙家そのものに最早関心がないようだ。

 一応、佐薙家家臣団が牢人となり東北地方を荒らす匪賊と化さないよう、家禄の支給や再就職先の斡旋などは行っているが、実家を再興しようという動きは見せていない。

 これもまた成親様の残された負の遺産の残滓か、と史高は内心で嘆息するのだった。


  ◇◇◇


 義基が邸宅を去ると、史高も時間差で佐薙家皇都屋敷に戻ることにした。

 佐薙家重臣の息子二人があまり屋敷を不在にしていると、監視しているだろう結城家の密偵に怪しまれる。

 あくまで、休みの日に皇都をうろついていただけという体を取らないといけない。

 その意味では、妾宅というのは格好の隠れ蓑であった。あるいは史高の父も、皇都で誰かと密会をするためにこの邸宅を買ったのかもしれない。

 もっとも、仕事面では清廉潔白と言われた父も、私生活面では単に一人の男であっただけなのかもしれないが。


「……家の周囲に、張り込んでいる者はいないか?」


「はい、今のところ」


 廊下の影からそう答えたのは、佐薙家の御庭番、つまりは佐薙家の忍の者であった。佐薙家に直接仕えていた忍の中にも、やはり主家の再興を目指す者はいた。

 あくまでも当主に直接仕える形となっている御庭番の者は、他家から見るとその実態を把握しづらい面がある。そのため、結城家の隠密にも知られずに今も活動を続ける佐薙家の忍は一定数、存在していた。

 それにしても、結城家の密偵の尾行一つないとは。

 こちらも尾行には十分警戒してはいたというものの……。


「我らが主家はすでに“終わった存在”だと、侮られているのやもしれんな」


 史高はそう言って、自嘲気味に唇を歪めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 史高君、頭でっかちな官僚もどきにしか見えないのが何とも。 後、既に終わった家の残り滓のような忍がなんで 結城の隠密を出し抜いて見つけれるものと信じ切れているのか 尾行さ…
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