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プロローグ

「スピカ……君に伝えたい事があるんだ……」



 私は黙って彼の手を握る。


 大量の出血からか、すでに体温は低く、血の気はない。


 光り輝いていた白銀プラチナの鎧は、いたる所が破損し、腹部には大きな穴がポッカリと開いていた。


 最後の力を振り絞り、愛おしそうに私を見つめる瞳に、もはや活力は感じられない。


 私は冷たい床に横たわる彼の手を両手で強く握り、魔力が無くなるまで上級回復魔法を使い続ける。


 魔力によって放たれた清らかな白い光が、ポウッと彼を包み……そして消える。



 回復の見込みはない。致命傷なのだ。




 そう、彼は ()() 死ぬ。




「ずっと……君の事が……好きだった……愛している……」


 息も絶え絶えにそう言い残すと、勇者リゲルはゆっくり瞼を閉じた。





……





………





…………





まだ生きてやがんなコイツ……



 背後でガラガラと瓦礫が崩れる音がし、勝利の雄たけびが静寂を破った。


「フハハハハハッ!!エメラダッ……見ているか!俺はッ!俺はついにやったぞ!!」


 黒い獅子の仮面をつけた男、黒獅子将軍プロキオンだ。


 黒獅子将軍プロキオンは勇者リゲルと壮絶な戦いを繰り広げ、必殺技(フェイバリットスキル)を撃ち合い、そして勝利したのだ。

 



 ………ふぅ。




 あーあ、やっぱりね。だ~から私はリゲルに言ったんだよね。


 氷血女帝エメラダと黒獅子将軍プロキオン。


 先に倒すんなら絶~対プロキオンだって。


 恋人を殺されて狂人になった男なんて、相手にしたくないじゃん。いつもより強いの当たり前じゃん。


 もともと勝率五割を切ってるプロキオンとの勝負なんだからさぁ……ちょっとは考えようよ。


 そりゃさ、氷血女帝エメラダも怒ると超怖いよ?


 けどね。


 氷血女帝エメラダは爆龍奮迅レグルスと二股してるから、恋愛感情的には黒獅子将軍プロキオンを先に倒したほうがいいのよ。


 ほら、エメラダって結構ビッチじゃない?


 男一人死んだくらいで取り乱さないはずよ。


 それにさ、ほらほら見て見て、勇者の必殺技(フェイバリットスキル)で黒獅子の仮面の片側が壊れて判ったんだけど、プロキオンてどう見てもリゲルのお兄さんじゃん?


 もしかして、プロキオンと和解して共闘って尊い道だってあるのかも?


 勇者リゲルの遺体(死んでない)をポンポンポンポンとリズミカルに軽く叩きながら考える。

 

 はぁ……まっ、こーなるのは当然だよね。


 俺が君を守るから大丈夫だって、私の言う事ぜーんぜん聞かないし。


 ホント馬鹿なんだから。馬鹿っていうかポンコツ?


 

 うん、まぁ今回はもうどうしょもないから次回だねっ!次回!


 と、独り言をブツブツいいながら、うんうんと頷く私。


 そんな私を睨みつけ、黒獅子将軍プロキオンは剣を構える。

 

 勇者リゲルを葬り去った(死んではいない)あの必殺技(フェイバリットスキル)を放つつもりだ。

 

「スピカよッ!!リゲルと共に死ねっ!!ブラックライオンソォオォォォド!!」


 いや技の名前に草。


 ギリギリの所でブラックライオンソード(ものすごく速い突き技から放たれる黒い獅子の形の光)を回避する。


 私が回避したブラックライオンソードがリゲルの遺体(まだ死んでない)に直撃し、爆風が吹き荒れる。

 

 ヨシッ!


 これには私も思わずガッツポーズ。




ブツンッ……




 突然、意識が途切れ私は暗闇に包まれる。




 勇者リゲルが死に、私は  ()()()()  戻される。





 あの日に……


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