第95話 【警戒・2】
妖精達の報告を聞いた後、俺は夕食と風呂を済ませて寝室へと入った。
そうして翌日、いつもの様に朝起きて朝食を食べていると玄関の呼び鈴が鳴った。
「……無視するか」
魔力で誰が押しているのか分かった俺は、居留守をする事にした。
そんな俺の居留守に対して、玄関にいる人物は俺が居ると確信して呼び鈴を連打してきやがった。
「グレン、出てあげたら良いじゃない」
「絶対面倒事だろ……話ならティアさんから聞いてるから、態々あいつと話さなくても」
そう俺が言っていると、今度は大声で「グ~レ~ン~」と俺の名前を呼んできやがった。
あのクソ猫! 近所迷惑って言葉知らねぇのか!
「うっさいぞ、クソ猫!」
「にゃ! グレン君が開けてくれないからにゃ!」
俺は叫ぶキャロルを家の中に入れ、リビングへと移動した。
「……それで何だ。こんな朝っぱらから来て」
「新しい情報が入ったから教えに来たんだにゃ、グレン君が聖女様達とコソコソしてる間もあたしはあたしでちゃんと仕事をしていたにゃ」
「やっぱ、気づいていたのか」
時々、こいつの視線らしきものを感じていた。
だから俺は溜息交じりにそう言い、キャロルが手に入れた新たな情報を聞く事にした。
◇
聖女、賢者、そしてグレンの3人が王都の守りを固めて居る間、キャロルは王妃から頼まれ別行動を行っていた。
そして調査として向かった先は、グレンの故郷にある今は廃墟となっている教会だった。
「教会って、一年前に爺達が捕まった時に一回調べたんじゃないのか?」
「調べていたにゃ。でも、その時はまだ内部に敵が居た時にゃ、王妃様もそれがあってもう一度詳しく調べる為にあたしを調査に向かわせたにゃ」
グレンの質問に対してキャロルはそう答え、話の続きに戻った。
教会を調べた結果、やっぱり報告には無い地下への入口を見つけたとキャロルは言った。
「教会に地下室? 俺が居た時に、そんな部屋見た事も無いな……」
「厳重に隠されてたにゃ。でも、残念にゃけど既に中の物は、殆ど壊されてたり持ちだされていたにゃ……」
「そうか、まあ既に一年経過してたらそうなるわな」
「……でも、一つだけ見つける事が出来たにゃ」
グレンの言葉にキャロルは少し溜めてからそう言うと、懐から一枚の紙きれを取り出しテーブルに置いた。
テーブルに置かれた紙にグレンは目をやると、その内容に二度見して驚いた表情をした。
「ま、マジでこれを見つけたのか?」
「そうにゃ、王妃様もこれを見て驚いていたにゃ。でも扱いが難しいから、グレン君達に相談しましょうって王妃様に言われて、今日来たんだにゃ」
キャロルがグレンに見せた紙には、帝国との繋がっているという内容が書かれていた。
更にそこにフレイナが、この紙には悪魔の魔力が付いてると言い。
帝国、シャドースネーク、悪魔の繋がりが確定した。
「薄々、そうだろうなって話をしていたが、これで確定したな……」
「にゃ? グレン君達は、もう帝国が絡んでるって見てたのかにゃ?」
「ああ、ティアさんが色々と情報を持ってきてくれてな、それで少し帝国方面を気にしてたけど、確信はしてなかったんだよ。でも、この紙きれの内容を見て確信に変わったよ」
そうグレンが言うと、キャロルは「聖女様の情報、気になるにゃね……」と言った。
それからグレン達は、一先ず話し合いが必要だとなり、今日の夜にグレンの家に集まる事にした。
「キャロル。ティアさん達への報告頼む、俺はもう訓練の時間だから行かないといけないから」
「分かったにゃ。夜にまた来るにゃ」
その後、グレンはキャロルを見送りクランハウスへと向かった。
クランハウスに着いたグレンは、メンバー達に挨拶をしてリーダー室に入った。
「……また何かあったのか」
「いや、お前俺の顔色で直ぐに分かるのマジで気持ち悪いぞ」
グレンの顔色を見て、直ぐに察したガリウスにグレンはそう辛辣な言葉を言い放った。
「これでも大所帯のクランのリーダーだからな、悩んでたりする奴が居たら直ぐに分かる様になったんだよ」
そうガリウスは言い、グレンに「何があった?」と尋ねた。
尋ねられたグレンは、キャロルから聞いた内容を伝え、今日の夜に話し合いをする為、少し早めに帰宅したい事も伝えた。
「成程な……分かった。今日の訓練は少し早めに切り上げて、話し合いの時間を少しでも多く作るか」
「すまん、助かる」
「良いよ。グレンが頑張ってるのは俺も知ってるからな、ただ無理はするなよ? 悪魔だの、帝国だの、話が壮大過ぎてついて行けて無い部分もあるが。協力がいるなら言ってくれよ。俺はいつでも手を貸してやるからな」
そのガリウスの言葉に、グレンは「心強いぜ」と返し笑みを浮かべた。
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