第93話 【それぞれの報告・3】
「私は、先程話にも上がった通り、帝国が悪魔と絡んでいるのではないかと思っておりましたので、帝国に関して色々と調べてきました」
そうティアさんは言うと、異空間から資料の束を取り出した。
……普通に取り出したから、何とも思わなかったけどティアさんも空間魔法を使えるのか。
俺は内心そこに驚きつつ、ティアさんが取り出した資料に目をやった。
そこには帝国のここ数年間の動きが、かなり細かく書かれていた。
「……これ、軍事に関しても書かれてますけど、よく調べられましたね」
「師匠程ではありませんが、これでも顔は広い方ですからね。帝国の方に知り合いが居ますので、色々と調べて貰いました」
「知り合いが軍事関係を調べ上げるって、その知り合いって一体何者なんですか……」
そう俺が聞くと、ティアさんは笑みを浮かべるだけだったので、それ以上の事は聞かないでおくことにした。
◇
その後、グレン達は聖女が持ってきた資料を隅々まで目を通した。
その結果、軍事費の一部が消えている事が発覚した。
更に土地の開拓費として割り当てているのに対して、その開拓が行われていない等、細かく見るとおかしな点がいくつも浮かんできた。
「この資料怖いですね……マジで、国の殆どの情報が載ってるじゃないですか……」
「ティアよ。お主、どんな伝手を持っておるんじゃ……」
グレンとマーリンは、流石にこの情報の量に驚きそう言葉にした。
「まあ、そこは相手の方との約束で教える事は出来ません。それよりもこの資料で分かる通り、帝国は何かしら隠している事が分かりますね」
「そうですね。もしかして、帝国は悪魔もそうですけど〝シャドースネーク〟との繋がりがあるんじゃないですか? 国が隠しているのであれば、あの犯罪者集団が隠れる事も可能だと思いますし」
「その可能性は高いかもしれんのう」
グレンの言葉にマーリンがそう言うと、聖女も「グレンさんの考えは当たっているかもしれませんね」と言った。
「取り敢えず、帝国を警戒する事は確定ですね」
「そうじゃな、警戒はしておいた方が良いがこれ以上の情報収集は止めておいた方が良いのう。今回、ティアの伝手がかなり内部の人間だったから成功したかもしれんが、帝国には厄介な者がかなりおるからのう……」
「確かにそうですね。あの方も彼等を注意しながら動いたと言ってましたが、既に警戒されてる可能性もありますね」
マーリンと聖女は難しい表情でそう言い、今回の報告会は終わった。
今後の動きとして、聖女とマーリンは国と動くとグレンに伝え、グレンはグレンでガリウス達の訓練を見つつ妖精達と行動すると言って解散した。
「フレイナ、妖精達に帝国を調査してもらう事って可能か?」
解散後、家に帰宅したグレンは風呂に入ってる途中、一緒に入っているフレイナにそう尋ねた。
「ええ、出来るわよ。でも、グレンと離れる事になるからこの子達が引き受けてくれるかは別ね」
フレイナがそう言うと、グレンの周りに飛んでいる妖精達は「グレンと離れるの嫌!」と皆同じ言葉を言った。
「あ~……まあ、それなら仕方ないか。なら、王都の出入りする者だけでも調べてくれるか?」
そうグレンが言うと、それなら大丈夫と妖精達は言って交代で見回りをする事が決まった。
「それにしても、悪魔が帝国と繋がってるか……フレイナは、どう思う?」
「そうね。私もさっきの話し合いの後、少し帝国方面の魔力を調べたけど少し違和感のある所があったわ。だから、多分だけどグレン達の想像は合っているとおもうわね」
フレイナの言葉にグレンは「そうか……」と呟き、寝室のベッドに横になった。
報告会で得た帝国の情報は、グレンにとってもかなり頭を悩ませるものでグレンは少し横になるつもりだったが睡魔に襲われ眠りについた。
そんなグレンにフレイナは、魔法で体を綺麗にして毛布を掛けてやった。
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