第90話 【最強の魔法剣・3】
最強の魔法剣を習得する為の訓練を始めて、二週間が経過した。
最初の三日間は剣に魔法を付与する事が出来なかったが、一週間が経過した頃には付与自体は出来るようになった。
しかし、付与が完成してもこの魔法は少しでも気が緩むと解けてしまい、完全習得には更に一週間が掛かってしまった。
「出来たぞマーリン」
「おぉ! おぉ! 凄いぞグレン! 儂の考えていた以上に、その剣から凄さが漂っておるわ!」
完全習得したグレンは自慢気に様子を見ていたマーリンに声を掛けると、マーリンは子供の様に興奮してグレンの持つ剣をマジマジと見つめた。
「凄いの~、凄いの~、あの魔法が剣に収まった事で安定しておる。……グレン。魔力を強めて魔法の威力を上げれるかの?」
「ああ、魔法の調整なら出来るぞ」
マーリンからの言葉にグレンはそう答えると、剣へと流れる魔力を強め剣に付与された魔法の威力を上げた。
すると、剣に付与された魔法の吸い取る力が増した。
マーリンはその剣の変化にも興味津々といった顔で見つめると、小さな火の玉を剣に向けて放った。
マーリンが放った魔法は剣に近づくと、一瞬にして魔力が吸い取られて消滅した。
「魔法本来の力も十分あるようじゃのう~、どれもう少し検証しても良いかの?」
「別にいいぞ、俺もこの魔法剣の力を試したいと思っていたしな」
それからグレンとマーリンは、完成した〝最強の魔法剣〟の検証を始めた。
その結果、魔法剣となったマーリンの考えた最強の魔法は、欠点であった速度を完全に克服した状態である事が分かった。
威力は勿論、魔力の調整により魔法状態で使うよりも使いやすくなっていた。
「被害が出るからと儂は使わない様に封印しておったが、これなら味方に当てる事も無いのう」
「そうだな、魔法状態だと速度は遅いが敵味方関係なく吸い込む状態だったが、魔法剣にした事で意識した場所に伸ばしたり出来るから、敵の魔法だけを消滅させるという使い方も出来るな」
「うむ……儂が考えたとはいえ、これは本当に凄い魔法を誕生させてしまったのう……」
そうマーリンは嬉しそうに言うと、グレンは「そうだな」と言葉を返した。
「実際、この魔法は本当に凄いよな。マーリンの魔法もそうだが、まさかフレイナの魔法すらも消滅させるなんてな……」
「ええ、あれには流石に驚いたわ。まさか、私の魔法も消滅させる魔法が出来るとはね」
検証の際、マーリンがどの程度まで魔法を消滅させるのかやっていると、フレイナもそれに参加する事になった。
流石にフレイナの魔法は無理だろうとグレンは思っていたが、予想外にもフレイナの魔法すらもグレンの持つ魔法剣は消滅させる事が出来た。
流石にフレイナの本気の魔法はこの世界で行うと色々と迷惑が生じる為、本気の魔法では無かったが、それでも人の力を超えた魔法をも消せたのは事実だ。
「まあ、でもフレイナのおかげでこの魔法剣は相当強力な攻撃魔法でも消滅させる事が出来るって分かったから、悪魔がもしも強力な攻撃魔法を使って来ても少しは対抗できるだろうな」
「ええ、そうね。私の魔法を消滅させたって事は、その魔法剣は任意でありとあらゆるモノを吸い込む強力な魔法って事ね」
「本当に注意して使わないと、エグイ事になるからな……人が近くに居る時は封印してた方が良いだろうな」
「そうじゃな、儂もこの眼で完成形を見れて満足したから、後の事はグレンに任せるよ」
心配するグレンとフレイナとは違い、一人満足そうな顔でマーリンはそう言った。
その後、これでマーリンとの訓練も終わりの為、折角なら儂が美味しい物を食わせてやるぞ! とマーリンから飯に誘われた。
「飯って、今の時間は何処も開いてないだろ」
「むっ? そうじゃったな……。それなら、夜はどうじゃ? 折角なら、色々と報告も兼ねてティアも呼んで三人で食事なんてどうじゃ?」
「あ~、そうだな。ティアさんにも報告しておいた方が良いし、その方が良いだろうな」
そうして、食事の席をマーリンに全て任せてグレンは、家に帰宅して朝風呂と朝食を済ませてからクランハウスへと向かった。
クランハウスに着いたグレンは、その足でそのままがガリウスの所へと向かった。
「ガリウス。ちょっと、報告したい事が出来た」
「いつもの厄介事では無さそうだな、顔が少し緩んでるし何か良い事でもあったか?」
ガリウスはグレンの顔を見ながらそう聞くと、グレンは「良い事ではあったな」と言葉を返し、新たな技を身につけたとガリウスに伝えた。
「ほう。遂に賢者様との訓練で習得しようとしていた技を習得したのか……それで、どうなんだ? 使ってみた感想は」
「まあ、強力過ぎて普段使いは出来ないだろうな。強敵相手にしか使えない禁断の技って感じだな」
「そんなにか?」
「マーリンの魔法もそうだが、フレイナの魔法も消滅させる技って言ったら凄さは分かるか?」
グレンのその言葉に、ガリウスはギョッと驚いた顔をした。
「それはヤバイ魔法だな……まあ、でも取り敢えずお疲れ様。グレンが強くなる事はクランのリーダーとしても心強いし、これからもクランの事を頼むよ」
「ああ、これからもよろしくなリーダー」
ガリウスの言葉にグレンはそう返すと、二人は手を出して握手を交わした。
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