第09話 【強く・2】
訓練内容は至って単純で、属性ごとの妖精を扱う訓練だ。
普通に魔法を使うより、その方が圧倒的に魔法に対しての経験値が多く、速く色んな魔法を扱えるようになると、フレイナは言った。
「妖精を扱うか……それって、どんな風にするんだ?」
「簡単よ。私達の力を借りたいって思えばいいのよ。試しに、私とやってみましょうか」
フレイナにそう言われた俺は、指示された通りに体を動かした。
その体を動かした結果、何故か俺は左手をフレイナと指まで絡めて掴み、もう片方の手でフレイナを抱き寄せていた。
「なあ、本当にこれであってるのか?」
「えっ、ただ私がしたいからよ?」
「……そりゃっ! 真面目にやれい!」
俺はそう言ってフレイナを引っぺがして、正しいやり方を伝えるように説教した。
その結果、普通に頭の中でフレイナ達を思い浮かべるだけで良いと言われた。
「早くそれを言えよな……んで、フレイナ達を思い浮かべるって、それは属性毎にその属性の妖精を思い浮かべたりしなきゃいけないのか?」
「そんな事はしなくていいわよ。グレンが魔法を使いたいって念じて、私達の力を借りたいと思ったら、勝手にその属性の妖精が現れてグレンの魔法と合わせて魔力を発動させるわ」
「さっきの動き本当に全くと言っていい程、関係無いな……」
そう言いながら俺は早速試しに、火の魔法をいつも通りイメージをして発動しようとした。
その時、妖精を使うイメージをせずに一度使い、そして直ぐに新たに魔法を構築して、今度は妖精の力を借りたいと念じた。
すると、ポンッと火の妖精達が現れると、楽しそうに笑い俺に力を与え、先程と同じ魔力の量なのに先程の魔法の数倍以上の威力が出た。
「どう? 思っていた以上に凄いでしょ、妖精の力って」
「ああ、全くその通りだよ。これって、あれだよな妖精と契約してる数によって、貸してくれる力も変わって来るって感じか?」
「ええ、その通りよ。グレンの場合、全属性に子供達が契約してるから、全ての属性魔法を使用する際に妖精から力を借りる事が出来るけど、契約してる妖精が多い属性は更に力を貸して貰えるわ」
それを聞くと、本当に妖精と契約すると嬉しい事しか無いな。
魔力自体底上げされ、魔法の威力さえも上げて貰える。
「なあ、一つ疑問に思ったんだけど妖精と契約すると悪い事って無いのか?」
「悪い事ね……しいて言うなら、契約をしてない者達から妬まれて厄介ごとになるくらいかしら?」
「それ聞いた事有るな。昔話にもなってるよな」
タイトルは忘れたけど、国に仕える魔法使いの弟子が居て、片方の魔法使いが妖精と契約して、もう片方の魔法使いが妬んで妖精と契約した魔法使いを陥れる物語だったかな?
「その物語。実際に起きた事よ。それより酷い話も沢山あるんだけど、まあそんな事があって妖精と契約した事を公にする人は少なくなっているわ。妖精側もそんな事が沢山あって、本当に失いたくない人とは直接会わずに影から応援してる子もいるわ」
「そうだったのか……妖精の生態をフレイナから聞く限り、そうするしかなかったという感じだな。本来だと、今の俺達のように関わり合いたいのが妖精達の本音なんだろ?」
「ええ、そうよ。本来はこうして契約者と関わって、楽しい会話だったり一緒に遊んだりするのが契約する目的の一つよ」
成程な、だとすればもしも俺が外に出るとなった時、フレイナ達は俺に危険が出ない様になるべく、俺と関わらない様にするかもしれないな。
それは何か嫌だな、今こうして楽しく会話してるのに外に出たら、会話も無くただ力を貸して貰える関係って……
「よしっ、決めたぞ! フレイナ、俺に魔法の技術を叩きこんでくれ! 期間は、そうだな冒険者カードの期限ギリギリの1年以内だから残り10ヵ月間、みっちり訓練をしてくれ!」
「きゅ、急にどうしたのグレン?」
「外に出た時、フレイナ達と関係を断つなんて今更俺には無理だ。なら、徹底的に今のうちに鍛えて妬んで攻撃してくる邪魔な奴等を跳ね返す力を付けておきたいんだ」
「それだと、グレン大変よ? 人間って本当に性格が悪い人は悪いのよ?」
「それは今までの生活で、痛い程分かってるよ。それに、今の俺の気持ちとして人間と上手くやるより、フレイナ達と楽しく過ごす方が良いからな」
そう俺が言うと、フレイナは驚いた顔をした。
そして直ぐに笑みを浮かべて、決心した様子で「分かったわ、グレン。貴方を徹底的に鍛えてあげるわ」とフレイナから言われた。
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