第89話 【最強の魔法剣・2】
ガリウスに模擬戦の提案をされたグレンは、内心驚きつつもその提案を了承し、二人は戦う事となった。
「それで試合形式はどうする?」
「そうだな、純粋に剣術で勝負でどうだ? 俺も盾を使わないから、グレンも魔法を無しで」
「純粋な剣術での勝負か……それを言うって事は、鈍ってた剣術の勘を取り戻したって事か?」
「それもあるが、やはり強敵と戦う事で思いだすって事もあるだろ? 後はまあ、本当に気分を変えたいんだよ。マジで」
グレンの言葉に対して、ガリウスは真剣な表情でそう答えた。
そんなガリウスの表情にグレンは、少し引き気味に試合の準備を行った。
準備が終わったグレンは、合図の説明を行いガリウスと距離を取った。
「それじゃ、ガリウス。始めるぞ」
「おう! いつでもいいぜ!」
ガリウスからの返事を聞いたグレンは、用意していたコインを正面へと軽く投げた。
そして重力によって地面に落とされたコインの音を合図に、ガリウスとグレンの戦いは始まった。
「ガッ!」
両者の剣がぶつかり合い音が鳴ると、そこから激しい攻防が始まった。
力で押すグレンと、的確にグレンの剣を受け止めて反撃の機会を伺うガリウス。
見た感じグレンが押しているようにも見えるが、ガリウスはグレンが隙を生じた瞬間を逃さず攻撃を与えて行った。
「流石、守りは固いなガリウス」
「まあな、それが俺の代名詞みたいなもんだしな……」
既に戦いが始まって30分が経過しており、普段戦っている相手よりも慎重に戦わないといけない為、両者はかなり疲労が溜まっていた。
それから更に30分が経ち、結局どちらも決め手に欠けてしまい、これ以上やっても訓練の時間が無くなる為に引き分けとなった。
「……マジで、盾が無いのにお前のその異常な固さは何だよ」
試合が終わった後、このまま指導するのはきついとなって休憩をする事にした。
「盾が無くても剣を盾代わりに使う技術は、身につけていたからな……しかし、思っていた以上にグレンの攻撃は痛いな、確実に攻撃を受け流したと思っていたのに痣が出来ていたしな……」
「力技だよ。元々、ソロみたいな動きをしてたせいかそっちの方が性にあってたみたいで、フレイナに教わってる時も防御よりも攻撃重視に訓練をしていたからな」
「そうなのか? まあ、でも今のグレンに防御はそんなに必要ないか。強力な魔法や、もしもの事があれば妖精の力も使えるしな」
ガリウスからそう言われたグレンは「そうだな」と言い、それから二人は10分程休憩を行ってから訓練を再開した。
そうして訓練が終わり、クランハウスに帰宅したグレンはリック達の誘いを今日は断り、直ぐに家に帰宅した。
帰宅後、グレンは敷物だけ敷いた部屋に入り、地面に座り瞑想を行った。
魔法剣の失敗が続いているグレンは、ここ最近雑念を取り除くためにこうして一時間程瞑想をする時間を作っている。
「……ふぅ」
「今日のは、いつもより長かったわね」
「そうか? まあ、でもいつもより深く瞑想をしていたのは確かだな……こうも失敗が続くのは久しぶりな感覚で、焦りを感じてるからな」
「確かにグレンって、なんだかんだ色んな事を器用にやれたものね」
「ああ、今までのように上手く行かなくて焦ってる自分が居るんだよな……」
そう言うグレンに、フレイナは後ろから安心させるように抱き着いた。
「焦らなくても大丈夫。グレンならきっと成功するわ」
「ああ、ありがとな。でも、抱き着かなくてもその言葉は言えたんじゃないか?」
「良いでしょ? 最近、グレンったら私達の事を放ってるじゃない」
「……まあ、訓練が落ち着いたらゆっくり過そうな」
そうグレンが言うと、フレイナは笑みを「ええ、また温泉に行きましょう」と言った。
それからグレンはフレイナに抱き着かれたまま、汗を流す為に風呂場へと向かった。
その後、風呂と夕食を済ませたグレンは明日も朝早くから訓練がある為、寝室に入り眠る事にした。
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