第88話 【最強の魔法剣・1】
「……くっそ、また失敗だ!」
マーリンの考えた最強の魔法を三日で習得したグレンだったが、その次の過程である〝魔法剣〟としてその魔法を使う事に苦戦していた。
「やはり、難しいようじゃの……」
「ああ、いつも使ってる魔法は簡単に剣に付与する事が出来るんだが、マーリンの魔法は構造が難しくて剣に付与する途中で弾けるんだよな……」
グレンがいつも使ってる魔法剣では、基本的に雷魔法の攻撃魔法の一つを使っている。
その魔法は簡単な魔法で殺傷能力も高い為、グレンは好んで使っており、今ではある動作をする事で〝魔法剣〟を瞬時に出せる域まで達している。
そんなグレンだが、マーリンが考えた最強の魔法を魔法剣として扱うのに苦戦していた。
それもその筈で全属性を使うという規格外な魔法構造をしている為、剣に付与する前にその魔法が消え去ってしまっている。
「だぁ~……くっそ、やっぱり普通に発動は出来るが、剣に付与しようとしたら意識が少し外れて魔法が消えちまう……」
「儂は魔法剣を使えないから分からんが、やはり魔法剣には出来そうにないか?」
「いや、一応一瞬だけだが魔法剣になった事もあるし、原理的に出来る筈だ。後は、それをどう維持するかって問題なんだが……」
グレンはそう言うと、再び挑戦したが失敗して今日の訓練の時間は終わった。
それからグレンは家に戻り風呂で汗を流し、朝食を食べた後、クランハウスへと移動した。
最近の行動としては、早朝マーリンとの訓練、朝食と朝風呂を済ませてクランでの訓練に向かうという流れだ。
「おはようございますグレンさん!」
「おはよう。リックは、今日も朝から元気だな」
クランハウスに着くと、リックに迎えられたグレンはそう言って建物の中に入った。
強化訓練が始まってから、朝の集まり具合は一気に上がりこの時間でも大半のメンバーは揃っていた。
「グレン、おはよ~」
「グレン、おはよう。今日も訓練よろしくな!」
クランハウスの奥に行くと、ニーア達に挨拶をされたグレンは挨拶を返して、そのままガリウスの所へと向かった。
階段を上がりリーダー室の前に到着したグレンは、扉をノックして中に入った。
すると、いつもはもう少し遅くに来るアリシアが部屋の中に居た。
「んっ? アリシア、今日はいつもより早いな」
「ちょっと、リーダーに渡す書類があったから早くに来たのよ」
「成程な。それで、そこで疲れた表情をして天井を見上げているガリウスは何なんだ?」
「確認する書類の多さに疲労が溜まって、現実逃避をしてる所ね。ほっといていいわよ。どうせ、もう直ぐで訓練の時間だから」
アリシアの言葉通り、それから放置して部屋を出て訓練の時間まで待っていると、復活したガリウスがリーダー室から出て来た。
「んっ、グレン。今日は部屋に来てなかったな、何かあったのか?」
「いや、来てたぞ? ただお前が放心状態になってたから、放置して出て行ったんだよ」
「そうだったのか。すまんな、久しぶりに凄い量の確認作業をしてたら現実から逃げたくなってな……」
ガリウスは遠い目をしながらそう言うと、仕事の事は忘れて訓練だ! と叫んでグレンの転移眼でいつもの訓練場所へと移動した。
移動した後、早速訓練が始まったが、開始早々にガリウスがグレンを呼び止めた。
「グレン。ちょっと良いか?」
「何だ? 今日は俺が教える番だか、代わりたいのか?」
「ああ、いや違う。ちょっと気分転換に俺と戦ってくれないか?」
訓練が始まって初めてガリウスは、グレンに対して模擬戦の提案をした。
それを見ていたメンバー達は「おぉ!」と驚いた声を上げた。
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