第86話 【賢者マーリン・3】
マーリンに弟子入りする事になったグレンは、次の日の朝っぱらからマーリンに叩き起こされ王都近くの平原に連れてこられた。
「……まだ日の出の時間じゃねえか。なんでこんな時間に……」
フレイナに言われて弟子入りした事を早くも後悔し始めたグレンは、そう愚痴を言いながらマーリンの後をついて行った。
「なあ、フレイナ。何でマーリンの弟子になれって言ったんだ?」
(それは昨日も言った通り、賢者としての力は相当な物だから弟子にしてやるって言うんならなっておいた方が良いと思ったのよ)
「そうか? 賢者って言われてるけど、ただのエロ爺だろ……」
「聞こえておるぞ、グレン」
「別に隠そうとしてないからな」
そうグレンが言うと、マーリンは自分の凄い所を歩きながらグレンに説明をした。
しかし、グレンにとって初見の出会いが娼館での待合室。
更に、その時にグレンにマーリンは酒に酔っていた事もあり雑絡みをした。
そのせいで、マーリンが凄い人だと理解していてもその部分が記憶に強く残っていて、グレンはマーリンの事を尊敬できないでいる。
「ってか、マーリン。何処まで行くんだ? もう大分、王都から離れてるぞ?」
「う~む……そうじゃな、この辺りなら音が出ても迷惑にはならないじゃろう」
マーリンはそう言うと、立ち止まり異空間から杖を取り出した。
「それで、何を教えるんだ? 俺が全属性って知ったら、慌てて弟子になれとか言ってたけど、そんなに教えたい事でもあったのか?」
「まあ、そうじゃなそこから説明しておくかのう……」
グレンからの言葉にそう返したマーリンは、魔法で椅子を作り何故弟子にしたのかという説明を始めた。
「まず最初にじゃが、グレンが言うように儂は全属性を持ってるという点でグレンを弟子にしたいと思ったんじゃ」
「だろうな。でも、俺の知識だと全属性持ちなら他にも居るよな?」
「うむ、数は少ないがグレン以外にも存在はしておる。じゃが、儂が弟子に欲しかったのはただの全属性持ちでは無いんじゃ」
「ただの全属性持ちじゃないって、全属性でも珍しいのに更に何を求めていたんだ?」
マーリンの言葉にそうグレンが聞くと、マーリンはグレンを指した。
「儂が求めていたのは、グレンが持っている〝魔法剣〟と剣術の二つの力じゃ」
「……純粋な魔法使いのマーリンが何で、その二つを持ってる弟子が欲しいと考えたんだ?」
「儂はな昔から考えておったんじゃよ。最高の魔法を武器に付与させて使用したら、どうなるんじゃろうって、じゃが儂はグレンの言った通り魔法使いとしての腕はあるが、武器を扱う事は苦手なんじゃ」
悲しそうなそう言うマーリンは、グレンを見た。
「儂は自分の思い描く最高の技術を、誰かに教える事は出来ないじゃろう。そう諦めかけていた時に、グレンと出会ったんじゃよ。ああ、儂が求めている力を持っておる! と出会った時、そう思ったんじゃよ」
「そうだったのか? にしては、俺と会ったそん時は別にそんな風には見えなかったぞ?」
「それはグレンが魔法に関して、そこまで技術が無いと見えたからじゃ。魔法剣は使ってはいたが普通の魔法は、戦闘ではあまり使ってなかったじゃろ?」
「まあ、本職はそっちじゃないし」
そうグレンが言うと、マーリンは「じゃが、グレンは魔法の力を得たと言った」と力強く言った。
「それはもう儂が考える最高の技を、教える者として完全に適したものじゃ! そう儂は神に感謝して、グレンに弟子になって欲しいと頼んだんじゃ」
「……成程ね。大体納得したよ。マーリンが俺を弟子にしたいって思ったのは、あんたが考えた〝最高の技〟を完成させる為か」
マーリンが弟子になってくれと頼んだ理由を理解したグレンがそう言うと、マーリンは「そうじゃ」と頷き返事をした。
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