第83話 【聖国の聖女・3】
それから話は、今回の事件についてに変わった。
聖女は事の発端から聞かされていて、既に国の主要都市等には悪魔に効果があるとみている結界を張り終えた後だと言った。
「まだこちらの国に来て、そんなに日が経っていないのに既に結界を張り終えたんですか?」
「ええ、これでも結界魔法は幼少の時から使っていて回復魔法より得意な魔法なんですよ? 一分程時間があれば、王都を囲む結界を作る事も出来ます」
「それは凄いわね。妖精の子でも、そんなに早く結界を張れる子は中々いないわ」
フレイナは聖女の結界魔法の熟練度に驚き、それに対して聖女は嬉しそうにしていた。
ちなみにフレイナの話を聞いたりしていた時に自分の普段の姿を見せすぎたと反省したらしく、今は少し落ち着いた口調で聖女は喋っている。
「そう言えば聖国の方では、どういった対策をしているんですか?」
「悪魔についてこちら側もそんなに知識は無いのが現状です。なので、グレンさんが教えて下さった聖魔法での対処を主にしていますね」
「成程、聖国にも悪魔について書類等は無い感じですか?」
「そうですね。悪魔という存在は知っていましたが、悪魔について具体的な対処法などは伝えられてませんでした」
聖国でも悪魔の事は伝えられてないとなると、フレイナが俺を気に入ってくれてこの世界の住人として本当に良かったな……
「でも大変だったんじゃないですか、冒険者が発案した対策の仕方を国に取り入れるのって」
「そうでも無いですよ? 私の言葉に大抵の人は、付いてきますからね。文句を言う老人も居ますが国の危機に文句を言って、もしもの事があれば自分の地位を崩す事になりますから」
「あっ、聖国もそう言う感じなんですね」
「はい、それに今回は特に自分達も知らない〝悪魔〟の対策で国を守らないといけないので、自分の考えよりも素直に私に従ってリスクの回避をしようと思ってるんだと思います」
聖女は呆れ顔でそう言い、俺は聖国も他の国と同じなんだなと思った。
それから、聖女は聖国の苦労話を少し話して、今回の話し合いは終わった。
話し合いが終わった後、また今度お話をしましょうと言われ、聖女は部屋から出て行った。
「……聖女も色々と苦労してるんだな」
「聖女と称えられてるけど、一人の人間だものね。色々と溜まってたんでしょうね」
「そうだろうな……でも、その苦労話を話す相手が会って間もない俺ってのが気になるけどな」
「話せる相手がこれまで居なかったんじゃないの? 父親からもあんな固い感じで話す様にって言われてるんなら、寛げる場所って限られてると思うわ」
成程な、それで今回の話し合いなら防音もシッカリしてたし、溜まってたものを吐き出したのか。
「それに結局、話し合いで俺を使うって話も無かったし、ガリウスに話したのは杞憂だったな……」
そう言って立ち上がると、部屋の扉が開いて先程出て行った聖女が戻って来た。
聖女はそのまま、急いで部屋の中に入って来た。
「あれ、ティアさんどうしたんですか?」
「……お話に夢中で忘れてました。グレンさん、この後、用事か無ければで良いのですが、付き合ってもらえませんか?」
聖女からそう言われた俺は、上手く反応が出来ず返事をするのに少し間が開いた。
「……えっと、特に用事は入れてないですけど、どうしたんですか?」
「実は私と一緒に来た方がグレンさんと会いたいと言ってる事を思い出しまして、お時間があるのであれば会って頂きたいかと」
「あっ、別にそれくらいなら良いですよ」
そう俺が返事をすると、不安そうな顔をしていた聖女はパァッと笑顔になった。
その後、俺は聖女と一緒に部屋を出て、会わせたい人物の所へと向かった。
「それでその会わせたい人ってどういった人なんですか?」
「あ~……会ったら分かります……」
聖女は何か言い難そうにそう言って、俺は会ったらわかる? と考えながら聖女について行った。
それから数分後、その人物が居る部屋の前に到着すると聖女は、深呼吸をしてから部屋の扉を開けた。
その瞬間、部屋の中から強い魔力を感じ、一瞬後ずさり部屋の中を視認した。
「……えっ?」
「ぐ、グレンさん? ここで止まったら、他の人にバレますから!」
視界に入ったその光景に俺は驚き固ると、動かなくなった俺に驚いた聖女が俺の手を引っ張って部屋の中へと連れて行き、部屋の扉を閉めた。





