第82話 【聖国の聖女・2】
「人型の妖精さん初めて見ました!」
フレイナ達の事を話す為に、フレイナに実体化してもらおうと聖女は瞳をキラキラと輝かせ、興奮した様子でそう言った。
「ティアさん、落ち着いてください!」
フレイナの姿に興奮した聖女は、立ち上がってフレイナの周りを回って色んな角度からフレイナを観察した。
ここまで印象が変わる相手、今までいなかったぞ……
内心俺はそう思いながら、聖女に落ち着くように言い、それから数分後やっと聖女は落ち着きを取り戻してソファーに座りなおした。
「すみません! グレンさん、大きな妖精さん初めて見まして興奮しちゃいました」
「ああ、いえ別に大丈夫ですよ……ただ、まあ少しイメージは変わりましたけど……」
「うっ……実の所言いますと、さっきの私が本来の私なんですよね。いつもの落ち着いた感じは、聖女のイメージを崩さない為にそうしてなさいってきつくお父様に言われてやってまして……」
聖女は言い難そうにそう言うと、上目遣いで「さっきの私の事、内緒にしてください」とお願いをされた。
「大丈夫ですよ。どうせ、喋った所で信じられないと思いますから……まあ、でもさっきのを見たおかげで俺の緊張感も少し解けたので良かったです」
実際、さっきの聖女の様子を見た俺は、最初に部屋に入った時のような緊張感は無くなっていた。
「ねぇ、二人だけで話進めるなら、戻っていいかしら?」
聖女と話していると、拗ねたような口調でフレイナからそう言われた。
何で、拗ねてるんだ。折角、姿を現したのに余り触れないからか? そんな奴だったんだな……
「すまん。フレイナ」
「ごめんなさい、フレイナさん!」
そう俺達が謝罪すると、フレイナは俺の横に座り俺の力について説明を始めた。
「へ~、強い力を感じてましたけど色んな能力があるんですね~」
「……えっ? そこは気づいてなかったんですか?」
フレイナ達の事や眼の力の事を話し終えた俺は、聖女のその言葉に目を見開いてそう聞き返した。
いやいや、ちょっと待て、そういやあの時〝その眼程では無い〟って言ってたよな?
「気づいていたのは、鑑定の能力くらいですよ? 後は、妖精さんの力が少し感じたので、あっ凄い眼をしてるんだろうな~って思っていただけですよ」
「……」
眼の力がバレてるって、俺の勘違いかよ! 全部、話しちまったよ!
心の中でそう叫んだ俺は、隣に座るフレイナの方を見た。
フレイナもまた俺と同じような気持ちなのか、少し驚いた表情をしていた。
「あっ! 心配しなくても、今の話は誰にも言いませんよ?」
「あぁ、はい。お願いします……」
それから話は最初の、どうやって脳を治したのかという話に戻った。
既にフレイナの事や眼の事を話している以上、変に隠したところで意味も無い為、森で脳を破壊した所から聖女に話した。
「自分の脳を壊す何て、グレンさんって本当にヤバい人だったんですね……」
「あの、今は普通な人と同じ生活をしてるのでそんな目でみないで欲しいです……」
脳を壊したと話すと、聖女はあからさまに引いた顔で俺の事を見て来た。
まあ、俺も自分の脳を自分の手で破壊した何て言う奴が居たら、同じような感情にはなるけど自分がされるのは少し辛い。
「それにしても私でも治せなかったものをフレイナさんは治せるって事は、私以上の回復魔法を持ってるんですね」
「そうね。そこは妖精と人間の力の差かしらね。それに人間がほぼ蘇生に近い魔法を習得したら、それこそ今は落ち着いてる戦争が再び起こるでしょうね」
「そうですね。そこまでの能力が無くても、回復魔法は凄く貴重な魔法なので争いは起きますからね」
フレイナの言葉を聞いた聖女は、そうフレイナの言葉に続けて言った。
そう言えば昔、聖女の力を欲した国が聖国に戦争を起こしたって話を聞いたな……
「グレンさんも回復魔法を使えると先程言ってましたが、あまり人が居る所では使わない方が良いですよ」
聖女からそう忠告をされた俺は、聖女の真剣な表情を見て「そうですね」と言葉を返した。
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