第81話 【聖国の聖女・1】
聖女との話し合い当日、俺はいつもより少し早くに起きて身支度を整えていた。
「なんだか、グレン。王様達と会う時以上に緊張していないかしら?」
準備をしている俺ちに対して、フレイナはそう声を掛けて来た。
フレイナの指摘通り、今の俺は物凄く緊張している。
「相手は世界の聖国様お抱えの相手だからな、緊張しない方が無理だってもんだろ?」
「グレンって、意外とそう言う所は気にするのね」
「普通に気にするに決まってるだろ、問題を起こしたら国が動く相手だからな……」
今日会う聖女は冒険者という職業に属しては居るが、実際は事実的な聖国のトップに君臨している相手でもある。
それから俺は、少し早めに王城へと向かう事にした。
王城には事前に転移で向かうと伝えているので、リビングから王城の門の前へと転移した。
転移した先では既に兵士が居て、俺は兵士の案内で聖女との話し合いをする為に用意された部屋に通された。
「初めまして、私は聖リュドシエル国から来ましたティア・リュレクスです。聖女と呼ばれてますが、ここではティアとお呼びください」
案内された部屋には聖女だけが居て案内をしてくれた兵士も外へと出て行き、部屋の中には俺と聖女の二人だけとなっていた。
いやいやいや! 王様とか、キャロルとかは居ないのかよ!?
「は、初めまして冒険者をしている。グレンと申します」
俺は内心、二人っきりのこの状態に焦りつつも、何とか自己紹介をした。
「ふふ、そんなに緊張しなくても良いですよ。ここは二人だけですから」
「は、はい……」
それから俺は部屋の中央に設置されているソファーに、聖女とテーブルを挟んで座った。
ソファーに座る俺の事を聖女は、ずっとニコニコと笑顔を浮かべて見て来た。
「あの、どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」
「あら、顔に出てました?」
「出ていたと言いますか、その凄く笑顔で見られていたので……」
「ふふっ、すみません。私、興味がある事に対して凄く意識が持っていかれる性格なんですよね。それで今は、凄くグレンさんに対して興味が湧いているんですよ」
お、俺に興味? 俺、聖女が気になるような事をしたかな?
「あっ、今自分の何処に気になるような事がって思いましたか? それはですね~……どうやって、脳を正常に戻したのかですよ」
聖女はニコニコと笑顔のまま、俺の顔をジッと見つめながらそう言った。
「どうやって知ったのかって顔ですね。それはただの偶然ですよ? 偶々、お忍びでギルドに顔を出した時にグレンさんを見つけたんですよ。あの時、治せなかった人だと思いまして、よく見てみたら何故か脳以外の負傷していた場所まで全て完治していまして、どうやって治したのだろうって気になっちゃったんです」
「……聖女様って、鑑定系の能力も持ってるんですか?」
「持ってますよ。ただグレンさんの持ってるその眼程では、無いですけどね」
(この子、凄いわね。鑑定系の能力ではバレない様にしてたのに、見破ってるみたいね)
聖女の言葉にフレイナは驚きつつも、冷静にそう判断した。
(これはフレイナ達の事を話した方が良いかな?)
(そうね。眼の事がバレてる以上、下手に隠すよりも他人に話さないように伝えた方が賢明だと思うわ)
フレイナのその言葉を聞いた俺は、ジッと見つめ続けて来る聖女へと視線を戻した。
「……これから話す事なのですが、秘密にしてもらえますか?」
「内緒話ですね。良いですよ。私、口が堅いですから」
キラキラとした目でそう見てくる聖女に、俺は少しだけ聖女のイメージが変わった。
以前会った時や、最初部屋に入った時は落ち着いた大人のイメージの聖女をだったが、今は玩具を待つ子供の様なイメージだ。
そんな聖女に誰にも話さないで欲しいと最初に伝え、俺はフレイナ達の事を話し始めた。
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