第76話 【クランの一員として・３】
無事に全員、属性魔法が使えるようになった所で、話は〝魔法剣〟へと戻った。
「属性魔法は他の魔法とは違って、色んなやり方で扱う事が可能だ」
属性魔法と、それ以外の魔法は全くの別物。
属性魔法は自分の使いたい思いによって、形を変えて扱えるが、他の魔法は一つの事にしか使えない。
例として出すのであれば、鑑定魔法は〝見る〟事しか出来ず、攻撃に使えるか？ と問われれば、無理だと答えるだろう。
だが属性魔法は決められた使い方は無く、こう使いたいという使用者の思いに形を変えて扱う事が出来る。
「魔法剣って技術は結構知られているが、使用者が少ないのはその形を作る思いが足りないつ奴が多いからだと俺は思っている」
グレンは〝魔法剣〟の前提条件の説明を終えると、魔法剣のイメージをより分かり易く説明を始めた。
「グレンさん、一つ質問しても良いですか？」
「んっ、何だ？」
そう言ったのは説明を受けていたメンバーの、今日初めて属性魔法を使う事が出来た冒険者の一人だった。
「僕はさっき属性魔法を扱えるようになったばかりなんですが、魔法剣を使う事って出来るんですか？」
「まあ、流石に今日明日って直ぐには出来ないが、早くて一ヵ月もあれば使う事は出来るぞ？ それなりに魔法の訓練もしないといけないぞ」
「えっ、そんなに早く出来るんですか！？」
グレンの言葉に、その冒険者と話を聞いていた他のメンバーも同じように驚いた顔をしていた。
「グレン。流石に一ヵ月で魔法剣の習得は難しいんじゃないか？」
「まあ、素質の個人差があるから、一ヵ月で絶対とは言い切れないが半年以内には習得は出来るぞ？」
グレンのその自信の根拠は、グレンの頭上で姿を消しているフレイナ達の存在だった。
属性魔法に物凄く精通している妖精達に加え、フレイナの観察眼に指導技術は相当高いと、グレンは自分が修行を受けて感じていた。
指導をするという話をした時、グレンはフレイナに自分を通して技術を教えてやって欲しいと頼んだ。
フレイナはグレンの頼みを引き受け、今も属性魔法、魔法剣は全てフレイナが考えた事だと、ガリウスに耳打ちで伝えた。
その説明を聞いたガリウスは、納得してグレンの指示に従うようにメンバー達に伝えた。
その後、フレイナ考案の訓練が始まった。
魔法が元々使えていた者達はグレンの所に残り、初めて魔法が使えるようになった者達は魔法訓練班の方へと移動させた。
説明を終え、グレンはフレイナから指示された通りに訓練を始めた。
「「……」」
「おいおい、お前等どうした～？ ガリウス、何で地面で寝てんだよ？」
訓練開始から一時間後、グレンの周りには剣術訓練で集まった者達が倒れ伏していた。
その殆どは、大量の魔力消費による魔力枯渇状態だった。
「お、俺達は〝普通〟の人間だ。お前のその馬鹿みたいな魔力量と一緒にすんな……」
辛うじて話が出来るレベルで耐えていたガリウスは、声を掛けて来たグレンに対してそう言葉を返した。
「……あ～、そういや訓練開始した時、既に契約してて魔力量がおかしかったな」
（そう言えばそうだったわね。グレンと同じ感じで訓練をつけようと思ったけど、それはちょっと無理そうね）
契約による魔力量のアップ等を完全に忘れていたグレン達は、ガリウスの言葉で思いだしてそう言葉にした。
そのグレンの言葉を聞いたガリウスは「ちゃんと考えろよ……」と言って意識を失い、初日の訓練は続行不可能という事で、早めに終わる事になった。
結局、初日の不手際を認めたグレンとフレイナは、常人でも耐えられる訓練内容へと変えた。
それと魔法剣の訓練と同時に、魔力量の増強も視野に入れる事にした。
その結果、更に地獄を見る〝シルバーナイツ〟のメンバー達だった。
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