第74話 【クランの一員として・1】
会議終了後、国王、グレン、キャロルは貴族達が出て行った部屋の中に残っていた。
「グレン殿、キャロル殿、悪魔の痕跡を早期に発見してくれて本当に助かった」
国王はグレン達に対して、改めてそうお礼を述べた。
そんな国王のお礼をグレン達は受け取り、今後も情報を手に入れた際は直ぐに報告に来ると言って部屋から出て行った。
「グレン君、この後はどうするにゃ? あたしは、王妃様の所に戻るにゃけど」
「……俺はガリウスの所に戻るよ。一応、あいつにも早めに話おいた方が良いからな。さっき、王様には許可はとったし」
「そうかにゃ、それじゃまたにゃ」
キャロルはそう言うと、グレンの前から姿を消し、グレンも転移眼を使いクランハウスへと転移した。
突然現れたグレンに対して、ガリウスは「行き成り現れんなよ」と叱る様にそう言った。
「すまんすまん、ちょっと離れた場所に居てお前に話す事が出来たからな。今、時間あるか?」
「別に良いぞ、大した仕事はしてなかったからな」
グレンの言葉に、ガリウスはそう言うと手に持っていた資料を置いて背伸びをした。
それからグレンは、防音の魔道具を設置してガリウスに国王達との会議での事を伝えた。
「……まさか、悪魔が事件に関与しているとはな」
話を一通り聞いたガリウスは、その内容の濃さに溜息を吐くと、そう言いながらグレンの顔を見た。
「この話をするって事は、また事件の為にクランから離れるのか?」
「いや、今回は俺は事件の手伝いはするけど国が既に動いてるから、俺が行動する事は殆ど無い。ただまあ、気になった事があれば動くかも知れないとだけ頭に入れておいてくれ」
「そうか、なら当分はクランの活動を優先すると考えていいんだな?」
グレンの言葉を聞いたガリウスは、そう言うとグレンは頷いた。
「分かった。それじゃ、取り敢えず今後の動きとして俺達のクランは王都から離れないようになるべくして、団員達の力を上げる事に専念するか」
「そうしてくれると俺も助かる。転移で移動が可能ではあるが、相手が悪魔という得体のしれない相手だから、遠くに行くのは怖いしな」
「ああ、俺もグレンと同じでこの国は好きだからな」
その後、ガリウスは団員達に対して明日、話し合いをするから幹部クラスの者達は集まる様にと通達を出した。
突然の通達に団員達は驚きつつも、翌日の会議室には幹部メンバーが全員揃っていた。
そうして集めたメンバーにガリウスは、グレンから聞いた話を他言しない様にと最初に言い、メンバーに伝えた。
団員達はその内容に驚きつつも、ガリウスが言った今後の動きを把握し、王都外への依頼を受ける事を止め、下の者たちの強化に力を合わせると言った。
「……正直、俺教えるよりグレンから剣術を教えて貰いたいんだけど」
幹部の一人である剣士の男、ニックはグレンの方を見ながらそう言った。
「俺も一応その強化の指導役として動く予定だし、受けたいと思うなら受けてもいいぞ?」
「本当か!?」
ニックはグレンの言葉に喜びを隠さず、嬉しそうにそう言った。
そんなニックとグレンのやり取りを見ていた他のメンバー達は、自分達の得意とするものもグレンの方が上だし、グレンから教わりたいと言い出した。
「おい、お前等あまりグレンに頼りすぎんなよ? 確かにグレンは、お前らより上のランクだが下の奴等の方が圧倒的に多いんだ。自分達の事を優先するんじゃないぞ」
そうリーダーから言葉に興奮していたメンバー達は落ち着き、取り敢えずグレンは剣術と身体強化をメインに教える事になった。
「え~、それじゃあニックだけが得になってるよ。ガリウスさん」
その決定にニックの双子の妹、魔法使いのニーアがそうガリウスに言った。
「ニーア、文句を言うな。それにな、それだけだとも言ってないだろ? 経過を見て、グレンには他の事にも回ってもらう予定だ。良いよな、グレン?」
「ああ、俺が出来る事はするつもりだ。散々、自由に動かさせてもらったからな、少しはクランの為に何か力になりたいと思ってる」
グレンのその言葉を聞いたニーアは、剣術と身体強化が下の者達が使えるようになったら魔法を教えてと頼み、グレンはそれを了承した。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。





