第73話 【新たな・3】
グレン達の報告によって急遽集められた貴族達は、何事かと各自思いながらも会議室へと集まった。
少し前の事件によって多くの貴族が居なくなり、以前より役職を持っていた貴族達は少しばかりの緊張感だけを持って集まった。
しかし、空いた役職に急に昇進した者達は、突然の会議に口の中の水分が無くなる程、ガチガチに緊張していた。
「すまないな、急に呼び出してしまって」
グレン達の報告から約三時間後、全ての貴族が集まったのを確認した兵士によって報告された王は会議室へと姿を現した。
その王の横には、事件の立役者であるグレンとキャロルが居て、貴族達は「何故、あの二人がまた?」と少し疑問に思った。
「皆に集まって貰ったのは、これより話す内容に力を合わせ、解決する為に集まって貰った」
国王がそう発言すると、集まっていた貴族達は身を引き締め、国王の言葉を待った。
それから国王は、集まった貴族達に対してグレン達から報告された内容を伝えた。
「あ、悪魔ですか」
一人の貴族が信じられないと言った顔をして、そう聞き返す様に言葉を発した。
「ああ、信じられないと思う者も居るかもしれないが、ここに居るグレン殿が悪魔の残した痕跡を見つけた。グレン殿は先の事件で多大な貢献をしてくれた。私は、この話を真実だと思い、行動に移そうとお主達を呼んだ」
「……グレン殿、一つ質問をしても良いかな」
国王の言葉が終わるのを待っていた貴族は、グレンの方へと見つめながらそう言った。
「はい、何でしょうか」
「グレン殿は、どのようにして悪魔の痕跡を見つけたのだろうか? 私はあの牢を調べたが、何一つとして手掛かりを見つける事は出来なかった。それなのにグレン殿は見つけたという、王の言葉を信じないという訳では無いが自分の見落としがあったと言われるのが悔しいのだ」
国王の話で牢に悪魔の痕跡を見つけたと言われた貴族の男、バルドス・グリファール侯爵はグレンに対してそう質問をした。
「……私は人より多くの妖精と契約をしています。そのおかげで、鑑定等のスキルの効果が高くなっており、それのおかげで今回悪魔の痕跡を見つける事が出来ました」
グレンはフレイナから自分の事はなるべく伏せるようにと言われ、だったら普通の人より少し妖精が多く契約してると言って誤魔化す作戦を行った。
「妖精と契約……確かに、妖精と契約すると力が高くなると聞くな……」
「ええ、ですのでグリファール様の調査が甘かったという訳ではありません」
「……そうか、いやすまない。グレン殿には国を救ってもらったのに、自分の力が甘かったのではないかと焦ってしまった」
そう謝罪をしたグリファール侯爵は、国王にも話を脱線した事を謝罪して会議を再開した。
「しかし、悪魔の存在があるのは分かったとして、その悪魔を使っている者の正体がイマイチ分からないのが痛い所ですな……シャドースネークの組織は国でさえ、掴めていないですし」
貴族の一人がそう言うと、他の貴族も同じ気持ちだったのか少し暗い雰囲気となった。
シャドースネークの王都にあった拠点は、グレンの力というより妖精のおかげで見つける事が出来たが、王都以外の拠点については全くといっていい程、情報は無い。
「グレン殿は、王都の拠点を見つけた時はどのようにして見つけたのだ?」
「私の場合は、アレイン。元の仲間だった男を妖精に尾行してもらい、見つける事が出来ました。ですので、他の場所にある拠点を探し当てるのは難しいかなと思います」
「グレン殿の力でも難しいか……」
国王は少し希望を持ってグレンに話しかけたが、グレンからの返答にそう言葉を返した。
その後、敵の特定よりも自国の安全を優先するという話に変わった。
「敵に悪魔が付いている事は、大きな情報だと思います。悪魔には聖なる力が効くと聞いた事がありますので、聖国に協力を求めるのはどうでしょうか?」
「ふむ、確かにその話は私も聞いた事があるな……グレン殿、悪魔に聖なる力は聞くというのは聞いた事があるか?」
グレンの話を信用している国王は、貴族の言葉を聞いてそうグレンに聞いた。
その言葉に対してグレンは、フレイナから聞いていた話をする事にした。
「悪魔に対して、聖なる力は聞きます。ただし、相手の悪魔の力にもよります。弱い聖なる力でしたら、悪魔に対応できない可能性もあります」
「成程……であれば、聖国への協力要請は必要ではあるな。ラムドル、至急聖国に対して連絡を取っておくのだ」
「ハッ、分かりました」
国王に呼ばれた貴族、ラムドル・ブラルス公爵はそう返事をした。
その後、聖国への協力以外にも自国にいる聖魔法の強い者を集めるようにと、国王は貴族達に呼びかけた。
会議終了後、ラムドルは聖国への連絡を急ぐ為、直ぐに会議室から退出し、他の貴族達も自分達に与えられた命令に従い部屋から退出して行った。
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