第72話 【新たな・2】
家に戻って来たグレン達は、リビングに移動して防音の魔道具を作動させた。
「グレン君、それで何か分かった事あったかにゃ?」
「……一つ、気になる事はな。それは、フレイナから聞こうと思う」
グレンがそう言うと、フレイナは実体化をしてグレン達の前に姿を現した。
「フレイナ、さっきの事を詳しく聞かせてくれ」
フレイナはグレンの言葉に頷き、先程の牢屋に残っていた魔力の説明を始めた。
アレインが居た牢に残っていた微量な魔力、その魔力には人間では無い魔力が感じられた。
「人間じゃない魔力にゃ?」
「ええ、人間では無い者というより、正確に言えばこの世界とは別の者の魔力。悪魔の魔力よ」
フレイナのその言葉に、グレンは悪い予感が当たり眉間に皺を寄せ、キャロルは驚いた顔をした。
その後、悪魔について殆ど知らないグレン達は、フレイナに悪魔について説明をしてもらった。
「悪魔は人の欲望に反応し、姿を現し契約を持ちかけるわ。強い力とは引き換えに、その契約した者の命や大切な物を奪うの」
「……欲望に反応って、それなら俺も悪魔に魅入られていたんじゃないか?」
アレイン達と離れる前のグレンは、自分の手で〝性欲〟が高い状態だった。
「言い方が悪分かったわ、欲望が強い者の心が悪い者に悪魔は反応するのよ。グレンの場合、根は良かったから悪魔に魅入られる事は無かったのよ」
「……確かに、グレン君って何だかんだ人を助けたり、口は悪いけど手を出す事って殆ど無いにゃ」
フレイナの言葉に、キャロルはこれまでのグレンの行動を思いだしながらそう言った。
自分の事を〝良い奴〟と言われたグレンは、少し照れ臭そうに話の続きをフレイナに求めた。
「グレンの元仲間の男の心は、悪魔が付くには十分な程悪かった。それで、悪魔と契約をしていたんじゃないかと、私は考えてるわ」
「……あいつはクズ人間だったし、悪魔に魅入られる条件には合ってると思う」
「あたしの情報でも、そんな感じだったにゃ。それじゃあ、アレイン君は悪魔の力を使って、犯罪者達と一緒に逃げたのかにゃ? でも、それにゃったらエミリーちゃん達も一緒に連れて行かないかにゃ?」
キャロルのその言葉に、グレンも「そう言えば、そうだよな」とフレイナの方を見た。
そんな二人から見られたフレイナは、難しい表情を作った。
「これは私の憶測で、当たっていたら一番嫌な事なんだけど、あの男は依り代にされていたんじゃないかしら」
「依り代? それは、さっきの契約とは違うのか?」
「契約は、悪魔の力を借りるだけよ。だけど、依り代は違うわ、依り代はその悪魔の条件に合う肉体に悪魔自身を入れて、悪魔にこの世界での実体を渡す事よ。それをしていた場合、この世界は相当危険な事になるわ」
フレイナのその話を聞いたグレン達は、深刻そうな顔をするフレイナを見て、これは自分達の手で負えないと確信した。
その後、グレン達は出来るだけフレイナから話を聞き、後日国王に謁見を求めた。
グレン達からの謁見の求めに、国王達は不思議に思い許可を出してグレン達を城に呼んだ。
そうして、王城へと出迎えられたグレン達は、国王に自分達が調べた事を報告した。
犯罪者達の脱出は、悪魔が絡んでいる事、そしてその悪魔がもしかしたら実体を持っている可能性の事をグレン達は国王に伝えた。
「……それは、真か?」
信じられないと言った顔をした国王は、グレンに対してそう言葉を漏らした。
グレンはそんな国王に対して、真剣な表情で「真実です」と告げた。
「……やっと、国が落ち着くと思ったのだがな」
国王はただ悲しそうにそう呟くと、早急に手を打たないとまた国に被害が及ぶと判断して、外で待つ兵士に直ぐに会議をする事を伝えた。
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