第58話 【作戦決行・2】
国王との謁見から数日後、グレンのSランク昇格を祝ってパーティーを国が開催した。
そのパーティーには貴族は勿論の事、有力者や同じくSランクの冒険者などが参加する事になった。
そして主役のグレンも勿論参加する事になっており、現在ベイルーン家でパーティー用の服に身を包み、迎えが来るのを待っていた。
「すみませんベルドさん、ご一緒させてもらって」
「構わないよ。グレン君とは今後、長い付き合いになりそうだしね。今のうちに仲良くなっておきたいという思いがあるんだよ」
「そうですか、でしたら今後ともよろしくお願いしますね」
グレンの中で、ベルドはマリアの父というだけでなく昔自分と遊んでくれたおじさんという認識もあり、笑みを浮かべて返した。
その後、馬車が到着してグレンはベルド達と共にパーティー会場である王城へと向かった。
◇
王城に着いた俺は、会場に入りベルドさん達と別れて一人となった。
既に何人かの貴族が俺の元に挨拶に来て、俺は笑顔で対応した。
(情報通り、貴族は大体参加しているみたいね)
(ああ、流石に全員は参加して無いみたいだが、俺が集めた情報の中に入っている貴族は居るみたいだな)
妖精の力を借りて、会場に居る人間達を鑑定した結果、俺が集めた情報で敵となっている貴族は全員居た。
確認の為、ベルドさん達と離れたけど、意外と集まりが良いな。それだけSランクの昇格ってのが目出度いって事なのか?
「グレンがそんな綺麗な服着てるの、なんか違和感があるな」
そう俺に言いながら、ガリウスは近づいて来た。
そんなガリウスは、いつもと変わらず鉄装備に身に包んでいる。
「ガリウスも上手く警備員として入れたみたいだな」
「ああ、グレンから話を聞いた時は驚いたが、国王様が協力してくれてすんなり配属されたよ。それにしても、今日ここに居る貴族の大半を捕まえないといけないのか……」
「まあ、殆どは俺がやる予定だし、ガリウス達は気を楽にして逃げださないように出入り口を固めておいてくれ」
そう俺が言うと、ガリウスは「分かった。お互いに頑張ろうぜ」と言って離れて行った。
それから、パーティーは順調に進んで行き、終盤を迎えた。
この間、会場を出た者が居ない事は確認していて、更に言えば〝敵〟と認識した相手には全員俺の魔力を微量だが付けている。
その為、もし逃げても逃走場所が分かる様になっている。
◇
「さて、それではそろそろパーティーも終わりの時間だ。最後に本日の主役のグレンから、今後の活躍について話したい事があるそうだ。皆の者、よく聞くように」
王様のその言葉に、楽しんでいた貴族達はパッと王の横に居るグレンに視線を集めた。
そうして、視線が集まったグレンは会場を見渡し、口を開いた。
「本日は私の為に、この様な催し物を開催して頂いた事を感謝します。これから、より冒険者活動に力を入れ、国の発展にも力になれたらなと思います」
グレンはそこで言葉を止めると、チラリと国王に視線を移し、国王からの了解を貰い手を上に掲げた。
「それではまず最初の貢献として、悪しき者達を成敗したいと思います」
そうグレンが宣言すると、グレンが敵だと認識した者達を魔力で出来た紐のようなもので身動きが出来ない状態にした。
行き成りの出来事で敵貴族は勿論の事、会場に居た貴族達は混乱した。
「今、縛られた者共は〝王族暗殺計画〟に関与した者達だ」
「「ッ!」」
その言葉に、貴族達は驚いた顔をした。
そして会場の出入り口を守っていたガリウス達は、国王の近衛兵達と共に会場の中へと入って来て、縛られている貴族達に手錠をかけて連れ去って行った。
「それでは、国王様。俺は次の場所に向かいますので、この場はお任せします」
グレンはそれだけ言うと、転移眼でアレインが教えてくれた〝シャドースネーク〟のアジトへと転移した。
「ッ! 何者だ!」
突然現れたグレンに対して、アジトの中に居た感知能力に長けた者がそう叫んだ。
その言葉にアジト内に居た犯罪者達はグレンを認識して、武器を取ろうとした。
「はい、黙って、そして寝てろ」
グレンはそれだけ言うと、闇の魔法を使い殆どの犯罪者達を気絶させた。
耐性があった者達は気絶する事は無かったが、まともに戦える状態ではなくなっていた。
しかし、グレンの魔法を食らったのにも関わらず平然としている者がいた。
「その見た目、お前アレインが言ってたグレンって奴か……」
「今の魔法に耐えるなんて、流石だなデューク」
「ッ!」
グレンがデュークの名を口にすると、デュークは驚いた顔をした。
「まあ、長話は後でな、俺はこの後も用事あるんで」
そうグレンが言うと、転移眼を使いデュークの懐へと瞬時に移動した。
そしてそのままデュークの腹部へと、身体強化した拳をくらわせ、気絶させた。
「よし、それじゃフレイナ。こいつらをガリウス達の所に運んでくれ」
「ええ、分かったわ……グレン、本当に一人で大丈夫?」
「大丈夫だ。そんなに心配するな、過去と決着をつけてくるだけだ」
そうグレンが言うと、フレイナは何か言いたそうな顔をしたが、グレンの指示通り犯罪者達を縛ってガリウス達の所へと運んで行った。
そして一人となったグレンは、誰もいなくなったアジトからまた別の所へと転移した。
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