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第55話 【一掃作戦・3】


 そうしてリシアナの所へと移動して来たグレンは、隠し通路の扉をノックして中に居たキャロルに開けて貰って中に入った。

 一応、部屋に入るか考えたが突然入ったら失礼だろうと思い、隠し通路に転移して部屋の中に入れて貰うという形を取った。


「どうしたにゃ、グレン君? Sランクになる為に暫くは別行動って言ってなかったにゃ?」


 グレンの登場にキャロルはそう不思議そうに聞き、リシアナも同じような気持ちでグレンの返事を待っていた。


「ああ、そっちに関しては無事にSランクになって来た」


「にゃっ!?」


「えっ!?」


 平然と言ったその報告に、キャロルとリシアナは驚いた声を上げた。

 そんな二人に対して、グレンは「それより重要な報告がある」と言って、驚く二人に先程起こった出来事について報告をした。



 時は少し遡り、女が捕まり身の危険を感じたアレイン達は、一目散に女性と合流した場所、犯罪者たちのアジトへと戻って来た。

 アジトの場所は王都の民家が立ち並ぶ場所にあり、至って普通の建物だ。


「おや、アレイン君。どうしたのですか?」


 女性を紹介した男は、突然戻って来たアレイン達に内心驚きつつも、そう尋ねた。

 アレインはそんな男の言葉に、先程起こった出来事を説明をした。


「成程、確かにあの子は素性が少し割れていましたし、丁度その彼が彼女の顔に見覚えがあったのでしょうね」


「なっ! そんな危ない奴を俺に付けさせたのかよ!」


「いえいえ、彼女が顔が割れていたのはこことは違う国でした。ですので、こちらに情報が来ていないと私等も思っていたのですよ」


 申し訳なさそうに言う男の言葉に、アレインは自分に被害が来たんだぞ! と言わんばかりに威張った様子でその男の言葉に言い返そうとした。

 その時、家の奥から一人の男がアレイン達の所へと出て来た。

 その男の名は、デューク。

 デュレイン国にあるシャドースネークのアジト全ての統括を任されている男で、今日は偶々このアジトに寄っていた。


「デュークさん!」


「あ? お~、誰かと思ったらアレインか。久しぶりだな、エミリー達も久しぶりだな」


 アレイン達を見たデュークは一瞬、アレイン達は絶対に気付かない程度に顔を歪め、直ぐに笑顔を浮かばせそう歓迎した様子で出迎えた。


「それで、慌ただしく入って来てたみたいだが、どうかしたのか?」


 デュークはそう心配してるぞ、と言う風にアレインに聞くと、アレインは先程起こった出来事をデュークに説明をした。

 その説明を聞いたデュークは、アレインの失態で下っ端の一人が捕まった事にアレインの事をぶん殴りたい気持ちになった。

 しかし、その気持ちを抑え込んだデュークは「それは災難だったな」と言い、もっと詳しく聞く為に奥の部屋にアレイン達を連れて行った。


 それからデュークは、アレインからの話を聞き、もしかしたら自分達の事を探っている人物がいるかもしれないという事に気付いた。

 だが、これまで自分達の事を調べられた事が無いという自信から、その可能性をデュークは捨て、偶々捕まっただけだと思う事にした。



 一通り、リシアナ達に報告を終えたグレン。


「グレン君、その本当に凄いわね……」


「まあ、昔頑張っていたおかげですね。それが無かったら、正直まだ掛かっていたと思いますよ」


 平然とそう言うグレンに、リシアナとキャロルはお互いに顔を見合わせて溜息を吐いた。

 グレンの常識がズレている事に薄々気づいて来た二人は、常識外れな事を言うグレンに呆れて何も言い返さなかった。


「まあ、いいわ、これで次の作戦に移れるわね」


「はい、次はパーティーでの一掃ですが、それには少し協力者が必要になってきます。俺の方で、協力者を集めましょうか?」


「グレン君が信用できる相手なら、お願いしたいわね。今の私の状況だと、味方を集める事は不可能に近い状態だし」


「了解しました」


 グレンはそう言って、お祝いパーティーに参加するであろう貴族の知り合い、マリアに協力者となってもらう為に、話し合いを切り上げてマリアの所へと向かった。


「成程ね。分かったわ、グレン君に協力するようにお父様を説得してみるわ」


 家に訪ねて、まだ10分も経って居ないのに、マリアはそうグレンに協力すると申し出た。


「えっ、そんな簡単に決めていいんですか?」


「ええ、だってグレン君の頼みだもの、それなら私が断る理由は無いわ」


 そうマリアが言うと、部屋を出て行き直ぐにマリアの父、ベルド・ベイルーンを連れて戻って来た。


「グレン君、君とこうして会うのは二度目だね。随分と大きくなったようだね」


「お、お久しぶりです。ベルドさん」


「えっ? お父様、グレン君と会った事があるの?」


 優しそうに笑みを浮かべるベルドの言葉に、グレンはそう緊張した様子でそう返事をした。

 グレンは幼き頃、一度だけベルドと会った事がある。

 それはマリアが教会で働き始め、そろそろ慣れ始めた頃、ベルドはマリアが心配で来たら駄目というマリアとの約束を破ってコッソリと教会を見に来た事がある。

 本当は誰にも会う事無く、遠くから一目見るつもりだったが、当時一人で遊んでいたグレンと遭遇してしまった。


 ベルドは仕事上、微量な魔力にも気付く性格をしていて、グレンに付いていたマリアの魔力を感じ取った。

 マリアの魔力をグレンから感じたベルドは、マリアの様子を聞く為にグレンと少しだけ一緒に遊んだことがある。


「うん、ちょっと昔に街に行った際にグレン君と会ったんだよ。それより、今日はどういった用件で来たのかな?」


 自分の失言でマリアから追及されるのを阻止する為、ベルドは直ぐにそう話題を変えた。

 グレンとしてはそちらが本題であった為、グレンは自分が関わっている事件についてベルドとマリアに詳しく説明をした。

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― 新着の感想 ―
[一言] グレンとしてそちらが本題であった為、 →グレンとしても其方が本題であった為、
[一言] 部屋を出て行き直ぐにマリアの父、ベルド・ベイルーンを連れて戻って来た。 →部屋を出て行くと、直ぐにマリアの父ベルド・ベイルーンを連れて戻って来た。
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