第53話 【一掃作戦・1】
ガリウス達におススメの服屋を聞いたグレン、そのグレン達に一人の男が近づいて来た。
その男の身なりは薄汚れていて、若干異臭を放っていた。
近くに居た冒険者達は嫌な顔をして離れ行き、その匂いにグレン達も気づいて一瞬〝ソイツ〟を確認した。
「久しぶりグレン。随分と変わったようで、最初グレンだって気付かなかったよ」
気さくに、友人に話しかけるようにしてその男はグレンに声を掛けた。
そんな男に対して、グレンは一瞥して溜息を吐いた。
「久しぶりだなアレイン、俺も最初お前だって分からなかったよ。随分とみすぼらしくなったな、どうした得意の話術じゃどうしようもなくなったのか?」
「ッ!」
グレンの口から自分に対する嫌味を聞き、アレインはひどく驚いた顔をした。
感情が壊れていたグレンであればアレインと再会した所で、何とも思わないであったグレン。
しかし、ここに居るグレンはフレイナによって完全に元に戻っているグレンである。
自分に対する数々の行いの記憶を取り戻し、更に自分の見てない所でアレインがやっていた事を妖精達に聞いてグレンはアレインの事を嫌いな人物として見ている。
「ど、どうしたんだグレン? 久しぶりの再会なのに、そんな事を言われて僕は悲しいよ」
「ハッ、何が悲しいだよ。どうせ、自分達が惨めな生活をしてるのが嫌で俺を連れ戻そうとか考えてるのか? お前は昔から悪知恵だけは直ぐに思いついてたからな、今回はどんな作戦を立てたんだ?」
そうアレインに対して攻撃的な口調で攻めるグレンは、ここまでアレインに対して嫌悪感を抱いていたのかと、こうして会って初めて感じて自分でも少し驚いていた。
そんなグレンに対して、フレイナはコツンッと頭を叩いた。
(グレン、少しは落ち着きなさい。折角、相手から来たんだから冷静に対処して、もう一つの事件解決の為に動くのよ)
フレイナのその言葉にグレンは、ハッと気づき攻められて言葉を失っているアレインを見て、思考を巡らせた。
そんなグレンの視界に、見覚えのある3人の人影と一緒に怪しげな女性の姿を見つけた。
(こいつが居るって事は、そりゃ近くに居るか……彼奴らも俺の変貌に驚いて居る様だな、一人怪しい奴も居るが今回のアレインの作戦に加担してる奴だろうな)
(そのようね……グレン、まずそこの男に鑑定眼を使って情報を探ったらどうかしら?)
そう言われたグレンは、確かにと思い驚いたままのアレインに対して鑑定眼を使った。
性病や身体的な病気などの病名等、要らない情報も出ていたが欲しかった情報もいくつか手に入れる事が出来た。
「おい、グレン。ここはギルドだ喧嘩はやめておけよ」
「ハハッ、喧嘩なんてしませんよ。それより、アレイン。どうして今更俺の所に来たんだ? 本当にさっき俺が言った通り、また仲間に誘うつもりで来たのか?」
「あっ、いや、それもあったんだが、ここに来る時にグレンに会いたいって人が居てな」
アレインはグレンの変わりように動揺を隠しきれず、そんな風に言って仲間達と共に現れた一人の女性をグレンの前に出した。
アレインやエミリー達とは違い、その女性の身なりはそこまで汚くはなかった。
しかし、グレンはその女性が現れて直ぐに鑑定眼を使っていて、その女性がどういう人物なのか既に知っていた。
「こ、この人です! 私を襲ったのは、この男です!」
突然その女性はグレンを指して、大声で叫んだ。
その様子にギルドに居た冒険者や一緒に居たガリウス達は、驚いた表情をした。
そんな中、ただ一人動揺せずにその女性を見据えていたグレンは、直ぐに行動に移した。
ルドガーと一瞬目を合わせて、アイコンタクトを送りグレンはその女性に近づいた。
「きゃっ!」
「ッ! 何をやってるんだグレン!?」
女性に近づいたグレンは、足払いをして女性を倒れさせ起き上がらない様に腕を背中にやり、強く床に押し付けた。
その様子に一瞬出遅れて、アレインがそう叫び、元仲間達であるエミリー達も非難の声を上げた。
「いや、まさかまさかこんな所で〝シャドースネーク〟の仲間と出会えるなんて思いもしなかったよ」
「ッ!」
グレンは床に押し付けている女性に対して、小声でそう言うと明らかに動揺した様子の反応を示した。
グレンのアイコンタクトを受け取っていたルドガーは、ギルドの奥から複数の職員を連れて戻って来てグレンと代わる様にその女性の身柄を確保した。
ギルドに居た冒険者達は、何故女性が捕まるんだ? と驚いたが、職員の一人が身分を隠して紛れ込んだ盗賊という説明をした。
説明不足ではあるが急を要するから、という理由で職員達はルドガーに先導されるように身柄を確保した女性をギルドの外に連れて行った。
「いや~驚いたよアレイン、まさかお前が犯罪者を連れてくるなんてな、災難だったな? んっ、どうした青ざめた顔をして、もしかして知ってて連れて来たなんて言わないよな?」
そうグレンが言うと、アレインは「ち、ちが! 俺は何も知らない!」と動揺を隠さず、そう叫び逃げるように仲間達とギルドを出て行った。
出て行くアレイン達を冒険者達は疑いの眼で見つめ、グレンは妖精達にアレイン達を尾行するように命じた。
「グレン、動くなら俺にも少しは指示を出せよ。急に動いて、驚いたぞ」
「そこは感じ取れよ。ランクは同じになっても経歴はガリウスのが上なんだからよ」
そう言ったグレンは、ルドガー達によって身柄を確保された犯罪者が連れていかれた場所へと向かった。
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