第52話 【Sランク・3】
そうしてギルドに帰って来た俺達は、ルドガーの居る受付へとそのまま向かい報告を行った。
「マジで全部終わらせたのか……一応聞くが、ガリウスは手伝ったのか?」
「付いて行くのでやっとだったよ……俺、こいつよりランク上なのに……」
「そうか、まあお疲れさん」
そう労いの言葉を掛けられたガリウス、それからルドガーと一緒に地下の倉庫へと移動して討伐部位の提出をした。
依頼と同じ数、10体分の討伐部位と素材を置いた。
今回はそれ以上の物は出さなかったので、20分程で鑑定は終わった。
「流石、グレンだな。どの魔物の死体も良い状態のままだ」
「倒して直ぐに異空間に入れてるし、倒す時も少しでも金になるように倒してるからな」
その後、依頼の報酬を受け取った俺達は受付の所まで戻って来た。
「それでルドガー、俺は後どれくらい依頼をこなしたらSランクになれそうだ?」
「……んっ? グレン、お前昇格したいのか?」
「ああ、そうだけど何でそんなに驚いてるんだ?」
「いや、お前昔言ってたじゃないか、ただでさえAランクでも目立つからSランクにはなりたくないって」
そう言えば、前にそんな事を言ってた記憶があるな……
昔の事で覚えてなかった俺は、そう心の中で思っているとガリウスが「えっ、じゃあ何かこいつもうSランクになれるのか?」と聞いた。
「実績も実力もあるし、普通に昇格テストを受けたらなれると思うぞ?」
「おい、グレン。ルドガーにちゃんと言ってなかったのか?」
「……アレは、お前にしか話してないよ。ルドガー達に話しても、迷惑だろ?」
ルドガーの言葉に対して、俺とガリウスは小声でそんなやり取りをした。
「取り敢えず、ルドガー。俺って、Sランクになろうと思ったらなれるのか?」
「俺の考えではなれると思うが、一応マスターに聞いてくる。ちょっと待っててくれ」
ルドガーはそう言うと、慌てて受付から出て行き階段を上って行った。
◇
その後、暫くしてルドガーは戻って来た。
戻って来たルドガーは、グレンにマスターが呼んでるから行ってこいと言い、グレンは一人でマスター室へと向かった。
「久しぶりだな、グレン」
「お久しぶりですね。ヴォルグさん」
デュレイン国王都支部冒険者ギルド長の名は、ヴォルグ・バルムンク。
元Sランク冒険者で〝鬼神のヴォルグ〟とも呼ばれていた男であり、今なお王都の冒険者ギルドで最強と呼ばれている男だ。
ちなみに年齢は40代前半であるが、その肉体は老いておらず年月が経つ事に強くなっているという噂もある。
そして何よりこの人は、グレンにとって尊敬する人だ。
「ほう。グレン、お前妖精と契約してるな?」
ヴォルグの言葉に内心ドキッとしたグレンは、後ろに立つフレイナを見上げた。
(そこの人、グレンには到底及ばないけど複数の妖精と契約してるみたいよ。だから、その契約してる妖精がグレンの事を教えたみたいね)
(成程、まあヴォルグさんなら妖精の一人や二人契約しててもおかしくないか……)
そう納得したグレンは、ヴォルグに対して「ええ、ちょっと縁が有りまして契約をしています」と答えた。
「……随分と雰囲気が変わったな、以前のお前とは全く別人じゃないか」
「色々とありましてね。ルドガー達からも、別人だって言われました。それより、Sランクの昇格についてですけど」
「ああ、そっちは大丈夫だ。今こうして話している間に、ルドガーにお前の新しい冒険者カードを作らせてるからな」
「はっ? 昇格テストは無いんですか?」
「お前にした所で時間の無駄だ。実績も実力もSランクの評価以上持ってるのに、今更昇格テストなんてしても意味無いからな」
ヴォルグはそう言うと、グレンは困惑した。
そんなグレンにヴォルグは、そんなグレンの顔の変化を始めて見て「本当にお前変わったな」と笑いながら言った。
それから少しグレン達は話をして、ヴォルグの気が済んだのか「次は酒でも飲みながら話そうぜ」とヴォルグは言い、グレンは部屋を出て行った。
「随分と時間掛かってたみたいだな、何話してたんだ?」
下に戻ってくると、食堂の方で待っていたガリウスからそう声を掛けられた。
「俺の雰囲気が変わったのとか、後は何か元々実績があるからSランクにもうなれるって話もしてきた」
「そうか、Sランクになれるのか、良かったなおめでとう」
Sランクを目指した初日にSランクになったグレンをガリウスは驚く事無く、ただそう祝いの言葉掛けた。
そうしてガリウスと合流したグレンは、ルドガーの受付に行きカードの受け取りをした。
ランク毎にカードは分けられていて、最高ランクであるSランクはカード自体が豪華な素材で作られている。
「ガリウスのを見て知ってたが、本当にカードが〝オリハルコン〟で出来てるんだな……マジで無駄遣いだよな」
「Sランクになれるのは限られた人間だからな、それ位貴重な物で作った方が目標にもしやすいって考えみたいだぞ」
「だとしてもだろ、普通に今まで通り魔鉄とかでも良い気がするけどな……」
カードに使われている素材に、そう文句を言うグレン。
そんなグレンだが、内心では貴重な素材で作られたカードに少し興奮をしていた。
「まあ、これで取り敢えず目的だったSランクにはなれたな……なあ、ルドガーいつ国王と会う事が出来るんだ?」
「そうだな、ガリウスの時は昇格してから直ぐに王城から招待状が届いたし、報告が行ったら多分直ぐに来るんじゃないか?」
「俺の時は、貰った二日後に招待状が届いてその三日後くらいにパーティーが開かれたぞ」
グレンの質問に対して、ルドガーとガリウスはそう答えた。
「成程な、なら俺は待ってるだけで良いな」
「ああ、だがグレン。お前、パーティー用の洒落た服なんて持ってるのか? 持ってないなら、用意しておいた方が良いんじゃないか?」
待つだけと言ったグレンに、経験者であるガリウスはそう言った。
それを言われたグレンは、確かに持っていないと思い、ガリウス達におススメの服屋を聞く事にした。
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