第46話 【作戦会議・3】
フレイナ達の紹介を終えたグレンは、今後の作戦にフレイナ達に手伝ってもらう事を提案した。
リシアナは流石に妖精の長にそんな事を手伝わせるのは、と断ろうとしたがフレイナが押し切って無理矢理手伝う流れになった。
その間、キャロルはフレイナと妖精達の事で頭がパンクしてリシアナの膝に頭を乗せて放心していた。
「さてと、それじゃあ今日の所は一度解散しますか? もう大分、陽も落ちかけて来ていますし」
「ええ、そうね。もう少ししたら使用人が食事を運んでくる時間だし、今日はここまでにしておきましょうか」
「念の為、俺と契約している妖精を護衛として置いて行きます。何かあったら、直ぐに飛んできますので安心してお過ごしください」
「あら、それは頼もしいわね。あっ、でもキャロルちゃんはどうする? まだ起きてないようだけど……」
膝の上で放心状態のキャロルをリシアナは、心配そうに見つめながらそう言った。
「ああ、大丈夫ですよ。俺が送り届けますから、問題としてはそっちの男なんですよね」
グレンはキャロルでは無く、部屋の隅に黙って座っている男に目をやった。
グレンの手によってグレンの言いなりのような状態の為、これまでの会話の記憶も全く無い様ではあるがこの後、どうすればよいのかグレンも考えていなかった。
「大丈夫よ。元居た場所に放置してれば、仲間が引き取りに来るでしょうし、様子の変化を私に聞くなんてことはしないでしょう」
「まあ、そうですね。それじゃ、破壊した床も直しておきますね」
そう言ってグレンは、床の中に男を入れ会話が出来るように指示を出してから床を直した。
そして未だ放心しているキャロルを担ぎ、妖精達に王妃を守るんだぞと言って転移魔法でその場から消えた。
◇
「……転移。最後の最後まで、本当に凄い人だったわね」
私は今日一日で起きた事を頭で整理しながら、そう呟いた。
正直、キャロルちゃん以上の協力者は無理だろうと諦めていた。
だけどキャロルちゃんが連れて来たグレン君と会い、諦めていた気持ちは一瞬にして消し飛ばされてしまった。
「あれ程のオーラを持ってる人、私はこれまでの人生で見た事が無いわ……」
Sランク冒険者やそれに匹敵する人と会った事はあるけど、グレン君の強さはその者達との格が全く違う。
あれは敵に回したら駄目な存在、国が相手だとしてもグレン君が苦戦する姿を想像する事が出来ない。
グレン君に宿る強さに加え、妖精族との信頼の強さや敵に対しての容赦のない行動力。
正直、キャロルちゃんに耳を塞いでもらって無かったら、私もキャロルちゃんと同じように放心していたと思う。
「でも、これで私の身の潔白を証明する事が出来るわ。見てなさい、私を陥れようとした愚かな者達……」
私は静かに怒りを込めてそう呟くと、部屋をノックする音が聞こえ怒りを鎮め部屋に入って来る使用人達の対応をした。
◇
リシアナが食事を始めた頃、グレンとキャロルはギルドの地下室に居た。
転移で移動したグレンは、キャロルの拠点の場所を知らない為、ギルドの地下室に転移してルドガーに地下室の使用許可を取り、キャロルが目覚めるのを待っていた。
「う~……寒いにゃ~……」
プルプルと震えたキャロルにグレンは、黙ったまま火の魔法を発動させてキャロルの顔の前にやった。
徐々に顔が熱くなっていくキャロルは、数秒後熱さに耐えられなくなり「酷いにゃ!」と叫び飛び起きた。
「寝たふりをしてるからだろ?」
「寒くて目覚めたのは本当にゃ! それなのに、行き成り目の前に火を持ってくるなんて酷いにゃ! イジメにゃ!」
「煩いクソ猫だ。あまり騒ぐなよ。それより、お前はこれからどう動くんだ?」
「そうにゃね……グレン君が嫌じゃないなら、暫く一緒に行動させて欲しいにゃ。相手が相手なだけに、あたし一人じゃ情報収集も無理そうだにゃ。それなら、グレン君と行動してた方が有益だと思うにゃ」
キャロルのその提案にグレンは嫌な顔をするが、それが一番いい動きだとグレンも考えキャロルと行動を共にする事に決めた。
「取り敢えず、ガリウスには話を通しておかないとな、暫くクソ猫が厄介になるって」
「そうにゃね。ガリウス君とは元々顔見知りだけど、厄介ににゃる事だしちゃんと挨拶しておかないとにゃ」
そうしてグレンとキャロルは、王族に仇成す悪者達を退治する為に一時的に行動を共にする事になった。
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