第43話 【王妃と話し合い・3】
「それでリシアナ様、今のこちらの勢力はどれ程なんですか?」
「……」
グレンのその言葉に、リシアナはチラリとキャロルを見て、そしてグレンに視線を戻した。
「……もしかして、俺とキャロルだけですか?」
「ほ、他にも信用してる人は居るわよ? で、でも今のこの事態に巻き込めないというか……」
「まあ、確かにそうですけど……キャロルは俺が居なかったら、どうするつもりだったんだ?」
「そうにゃね。取り敢えずは、今まで王妃様側に付いてた人の所を回る予定だったにゃ。でも、戦力として見るには心もとない人達だから、グレン君が居て本当に良かったにゃ」
キャロルはグレンがタイミングよく戻って来てくれて、神は自分達を見捨ててないと感じたと続けて言った。
なんだかんだ壊れた人間だったグレンだが、グレンの力を良く知る者は個人の能力としてグレンを高く見ており、キャロルもまたその内の一人だ。
「……まあ、でもキャロルが居るなら情報はこいつに任せた方が良いですね。俺は、王妃様の護衛を務めますよ」
「ありがとうグレン君。キャロルちゃんも改めて、よろしくね」
「はいにゃ!」
リシアナの言葉に、キャロルが元気よく返事をするのを見ていたグレンは、二人に気付かれない様に〝眼〟の力を使い周囲を確認した。
「……リシアナ様。少し失礼しますね」
「えっ?」
グレンはそう言うと、リシアナの手をとり立たせて、自分の座っていた場所と入れ替わった。
そして、グレンは真下に向かって〝土の槍〟を土魔法で生成して、行き成り突き刺した。
「グッ!」
リシアナが座っていたソファーの真下に土の槍が刺さると、その下から男の声が聞こえた。
グレンは槍で開いた穴に手を突っ込み、床に隠れていた男を引っ張り出した。
「リシアナ様、こいつが誰か知ってますか?」
「えっ?」
行き成りの出来事で思考が追い付いていないリシアナは、グレンの質問に直ぐに答える事が出来なかった。
しかし、よくその男を観察すると見覚えのある人間だと感じ、記憶の中から男の名前を思いだそうとした。
「ちょっと、待ってね。ここまで来てるの……」
リシアナはもう少しで、男の名前が出てきそうだと言って、ウンウンと考え込んだ。
そんな様子を見ていたグレンは、次のフレイナの助言に「あっ」と言葉が出てしまった。
(グレン。さっき、感知眼使ったのに鑑定眼は使わないの?)
その助言を聞いたグレンは、直ぐに男に対して鑑定眼を使用した。
「リシアナ様、この男の名前ですが〝デルム・ルベスター〟という名前ですけど、知っていますか?」
「あっ! そうそう。そんな名前だったわ!」
鑑定眼で得た男の名前を言うと、リシアナはスッキリした様子でそう言葉を返した。
そしてこの男の正体だが、グレンは鑑定眼で確認していて既に知っているが、そのことは言わずにリシアナの言葉を待った。
「確か王国騎士団第一団長ドルム・ルべスターの長男だったかしら? あまり騎士団とは接点が無かったから、よく覚えてないけどパーティーの際に見た事があるわ」
リシアナは自分の記憶に残っているルベスター家の面子の事を、思い出しながらそう言った。
「でも、何でそのルベスター家の長男が床下に居たのにゃ?」
「ぐっ、怪しい奴等め!」
「いや、怪しい奴等ってお前の方がどうみても怪しいだろ、そんな恰好して床下に隠れてる何て、不審者も驚く程だぞ?」
デルムの格好は、闇に隠れる為か全身を黒のタイツの様な物を着ていて、更に顔も黒く塗っていた。
この状況下でどちらが怪しい奴かと言えば、誰がどう見てもデルムである。
「くっ! そもそも王妃様、何故この部屋にこんな奴等が居るんですか!」
そのデルムの言葉に、リシアナはグレン達と話していた優しい表情を消し、冷めた表情でデルムへと視線を向けた。
「私の身の潔白を晴らす為に、仲間集めをしてるだけよ? それに、貴方はどういう立場でそんな言葉遣いをしてるのかしら? ここに居る方達は、私の信頼のおける方達だから言葉に関して指摘はしてないけど、貴方に対して私は発言の許可すら出してないわよ?」
先程までの優しい女性という印象をガラリと変えたリシアナのその姿は、美しさは残るが冷たさも感じる王妃の姿だ。
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