第42話 【王妃と話し合い・2】
「リシアナ様がこんなに笑うの、初めて見たにゃ。流石、グレン君だにゃ」
「……俺は何もやってないぞ?」
ただクソ猫と会話していただけだと、付け加えて言った。
「またそう言う事言うにゃ。グレン君、そんなんだから友達が少ないにゃ」
「ウルセェ……って、俺達がこんな会話するからリシアナ様があんな苦しそうに笑うんじゃないのか?」
二度目の言い合いをしていると、再度リシアナが苦しそうに笑っている姿を横目で見たグレンはそう言った。
リシアナにとって、キャロルとグレンの言い合いは笑いのツボだとグレン達は理解した。
「このままだと、話し合いに来たのに本題を話さずに終わりそうだな。一旦、お前との言い合いはやめておくか」
「そうにゃね。それがいいにゃ」
キャロルも折角連れて来たのに、話し合いを出来ないのはいけないと理解して、グレンの言葉に従い互いに休戦を結んだ。
それから、リシアナが落ち着くのを待ち、ようやく今回グレンをこの場に呼んだ理由をリシアナが話し始めた。
「グレン君は、キャロルちゃんから殆ど聞かされてないと思うんだけど、今の私の立場はかなり危ない場所にあるのよね」
「……キャロルに兵士に頼めと言った時にそう言われましたけど、それは何故なんですか?」
「まだ公にはされてないのだけど、国王の食べたお菓子に毒が含まれていたのよ」
「? えっ、それで何で王妃様が危ない状況になるんですか?」
そうグレンが聞くと、そのお菓子はリシアナの手作りだと言われて、疑問が更に増した。
「先に言っておくと、私は絶対に毒なんて入れてないわ。材料も自分で用意して、味見までちゃんとしたもの、でも毒が入っていて今の私は軟禁に近い状態に居るの」
「……」
リシアナの話を聞いたグレンは、念話で後ろに立っているフレイナにこの話について意見を求めた。
(私が見る限り王妃様は嘘は言ってないわね。まあ、考えられるのは王城に出入りできる人間の仕業かしらね)
(俺も同じ事を考えてた。でも、それって可能なのか? 人が作った物に、後から毒を誰にもバレずに入れるって?)
(やろうと思えば手段はいくらでもあると思うわよ?)
フレイナはそう言うと、グレンの持つ能力〝転移〟を使えば、それこそ簡単に入れ込むことが可能だと説明した。
「リシアナ様の見解だと、王城に出入りしている人間の誰かが仕組んだ事だといった感じですか?」
「ええ、それと狙いは国王以外の王族も含まれているとみているわ」
「成程……キャロルは、この話を聞いてどれだけの情報を集めたんだ?」
「全然にゃ。相手が上手く隠していて、全く情報が集まらないにゃ……」
グレンに尋ねられたキャロルは、悔しそうにそう言った。
リシアナ、キャロルの話を聞いたグレンは、少しの間考え込んだ。
そして、目の前で心配そうに見てくるリシアナに「分かりました。俺は王妃様に付きます」と言った。
「いいの? 自分で言うのもなんだけど、私の今の状況って最悪な状況よ?」
「ええ、それは勿論分かってますよ」
「それじゃ、何で私の味方になってくれるの? キャロルちゃんが付いてるからって、訳じゃないでしょ?」
「キャロルが居るから仲間になるなんて事は、俺の理由に掠りすらしてませんよ。ただ俺は、この国が結構好きなんですよ。そんな国の王妃様が困ってるから、助けたいと思ったんです」
前半の言葉に反応しそうになったキャロルだったが、続けて言った言葉に流石に今は駄目だと認識して止まった。
そんなキャロルの反応とは違い、リシアナはグレンの言葉に驚き、そして嬉しく思い、その感情が溢れて涙を流してしまった。
「ッ! だ、大丈夫ですか? 俺、変な事言いました!?」
「いえ、だ、大丈夫よ。ちょっと、嬉しくて感情が溢れちゃったわ」
リシアナは涙を流しながら、グレンに大丈夫だと言いハンカチで涙を拭いた。
そして綺麗に涙を拭いたリシアナは、グレンに視線を戻して笑みを浮かべた。
「こんな危ない女の味方になってくれて、本当にありがとうね」
嬉しさのあまり、普段笑う時よりも感情をあらわにしたその表情に、グレンは「ぐっ」とうめき声をあげて、左胸に手を当てた。
その隣に座るキャロルも同姓でありながら、リシアナのその表情にグレン同様に「はぅ」と声を出して、天井を見上げた。
そんな二人の様子にリシアナは、「ど、どうしたの?」と心配気にグレン達に声を掛けた。
しかし、それすらもグレン達には強烈で再び同じような声を上げ、先程までの悲しい雰囲気は掻き消えてしまった。
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