第41話 【王妃と話し合い・1】
そして翌日、グレンはキャロルと共に王城を目指し、王都の街中を歩いていた。
「普通に街中歩いてるが、まっすぐ城に入るのか?」
「そんな訳無いにゃ、王妃様が用意してくれてる秘密通路を通るにゃ」
「その割には、王都のど真ん中を歩いてる気がするんだが?」
実際、グレン達が歩いている場所は王都でも一番栄えているメインストリートで今も沢山の人が行き来をしている。
そんな場所を歩いているのに、そんな秘密通路に辿り着けるのか? とグレンは疑問に思った。
「隠すなら、目立つ場所のがいいにゃ。明らかにそう言う風な場所だと、直ぐにバレるにゃ」
「そう言うもんなのか? 俺は全く、そういうのに詳しく無いからな……」
その後、グレンはキャロルについて行く形で王都の街中を歩き、とある何も変わった所が無い普通の建物の中に入った。
その建物の奥へ進んで行き、沢山の絵画が飾られている廊下に辿り着いた。
キャロルはその廊下の手前から3個目の絵画に近づき、裏に手をやると「カチッ」と変な音が鳴った。
「ここにゃ」
キャロルはそう言うと、反対の絵画を横に動かすと滑る様に絵画が動き、奥に続く道が現れた。
「……いやもう、言葉が出ないな。よく、こんな街中にこんな隠し通路を作ったな」
「王妃様は凄い方にゃ。グレン行くにゃ」
驚くグレンをキャロルは手を引っ張り、絵画の裏の通路に入った。
それから、グレン達は明かり用の魔法を使って通路を進んで行った。
そして通路の突き当りに辿り着くと、キャロルは壁に手をやり壁の一部が凹み「カチッ」とまた音が鳴った。
壁だった場所が横に移動すると、豪華な客室の様な場所にグレン達は出た。
「あら、キャロルちゃん。予定の時間より、ちょっと早かったわね?」
「今日は人混みがそこまで無かったから、直ぐにこれたにゃ」
「そうだったのね~」
部屋の中には、フレイナに並ぶ程の美しさのある女性が居た。
グレンはその女性の美しさに、キャロルとその女性との会話に一切入る事が出来なかった。
「それで、その方がグレン君かしら?」
「そうにゃ。ほら、グレン君。この方がこの国の王妃様、リシアナ・フォン・デュレイン様にゃ」
キャロルにそう紹介されたリシアナは、「初めまして、グレン君」と笑みを浮かべてそう言った。
「あっ、はい。初めまして、グレンです……」
「にゃっにゃっ? グレン君、緊張してるのかにゃ~?」
グレンの緊張した様子にキャロルは、ニヤニヤと笑いながらそう言った。
するとリシアナがキャロルに対して、「こら、キャロルちゃん。虐めちゃ駄目よ」と怒られてしまった。
そんな二人のやり取りに疑問に感じたグレンは、キャロルに小声で尋ねた。
「……その、二人は結構仲が良いのか?」
「仲が良い方にゃと思うにゃ。あたしは、リシアナ様の信頼できる仲間の一人だからにゃ。にゃ~、リシアナ様」
「ええ、そうね。キャロルちゃんとは仲が良いわよ? 今日でグレン君とも仲が良くなりたいわね」
ニコニコと笑みを浮かべながらそう言うリシアナに、グレンはかなり緊張した。
それから落ち着いて話す為、リシアナの座っているソファの対面にあるソファにグレンとキャロルは座った。
「まず最初に、グレン君の事はキャロルちゃんの情報からある程度知っているわ」
「まあ、そうだろうなとは思ってましたよ。それじゃなきゃ、俺と初めてあった女性があんな態度は取りませんからね」
「ふふっ、確かにそうね。グレン君の嘘の噂、女性だったら敵対したくなるものね」
可愛らしく笑いながらリシアナがそう言うと、グレンは「噂を知っていて、あんな接し方をされたのは初めてですね」と言葉を返した。
「信用の出来ない噂と、信用しているキャロルちゃんの情報。どっちを信じるかだったら迷う事無く、キャロルちゃんを選ぶわ」
「……」
「グレン君、なんにゃその目は?」
リシアナの言葉に驚いたグレンは、「ええ……」といった感情を込めた目でキャロルを見た。
そんな目で見られたキャロルは不満そうな声音でそう言うと、リシアナは二人のやり取りに「仲が良いわね~」とニコニコと笑みを浮かべながら言った。
「別に仲は良くありませんよ」
リシアナの言葉にグレンは、すぐさま視線をリシアナに向けてそう言った。
それに対して、キャロルは「え~、仲が良いにゃ!」と反論した。
「今日だって一緒に王都をデートしたにゃ」
「それは、ここに来る為だろ」
「昨日一緒に食事もとったにゃ」
「お前が話したい事があるからだろ」
キャロルの言葉にグレンがそう訂正していくと、リシアナはとうとう笑い始めてしまった。
リシアナの笑い声にキャロルとの言い合いを止めたグレンは、笑い過ぎて苦しそうなリシアナに「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「ふふっ……ええ、大丈夫よ」
そう言いながらも、笑い続けるリシアナ。
やっと落ち着いて、カップに注いでいた紅茶を飲むと「久しぶりにこんなに笑ったわ」と満足した様子でそう言った。
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