第04話 【妖精族・2】
「んっ、ここは何処だ……」
久しぶりに熟睡、それもなんだか気持ちのいい夢を見ていた気がする。
そんな事を考えながら俺は、体を起こすと自分の周りに小さな生物が集まっているのに気が付いた。
「えっと、妖精か? 初めて……いや、昔も見た事あるな」
確か俺が小さかった頃、花畑で花を見ていた時に妖精と会った記憶がある。
って、待ておかしいぞ!? あの頃の記憶は、殆ど消したはずだ!
何故、その頃の記憶を覚えているんだ!?
「起きて早々、慌てるのは分かるけど、少しは周りを見ないのかしら、グレン?」
「ッ!?」
突然、横から女性の声が聞こえ驚き、そちらを振り向いた。
すると、そこに美しいサラサラとした緑髪に緑眼とエルフ族に似ているが、その背中には綺麗な羽を生やした美しい女性が、同じベッドに一緒に横になっていた。
「あー、グレン起きた~!」
「起きた起きた~!」
「ふぁっ!」
女性に驚く俺の近くで、ワラワラと妖精達が集まって来た。
何でこんなに妖精が居るんだ!? 妖精って普通、人前には殆ど出ないって本で読んだぞ!?
「ほら、皆。グレンが混乱してるでしょ? 取り敢えず、私が説明するまで大人しくしてるのよ」
「「は~い」」
女性のその言葉に飛び回っていた妖精達は、素直に返事をして部屋から出て行った。
一体、何なんだ? 確か俺は最後は、森の奥で倒れたのにこんなフカフカのベッドに寝かされて、横には綺麗な女性が……
「ハッ! まさか、気絶したまま娼館に……」
「そんな訳無いでしょ? そもそも、こんな羽を生やした人間は居ないでしょ?」
「あっ、そうか……って、やっぱり人間じゃないんだな……」
「ええ、見ての通り私は妖精よ。私は妖精族の長をしてるフレイナ。私とグレンの仲だから、フレイナって気軽に呼んでいいわよ。敬語も当然、無しよ。改めて、よろしくねグレン」
体を起こしベッドから出た女性は、俺に向かって微笑みながらそう言った。
「俺はグレン……って、そっちはさっきから俺の名前を言ってたし、俺の事は知ってると思っていいのか?」
「ええ、知っているわよ。もうずっと昔からね。ほら、この姿なら記憶にあるでしょ?」
フレイナはクルッと回ると、その姿を一瞬にして変え先程まで部屋に居た妖精達と同じサイズになった。
その姿は、俺の元に戻った記憶に確かにあった。
「もしかして、俺が初めて妖精と会った……あの、花畑で会った妖精なのか?」
「ええ、そうよ。初めて会った日にグレンに一目惚れしちゃってね。勝手に契約を結んで、ずっと見てたのよ」
「だから偶に誰かに見られている感覚がしてたのか……怖くなって、治療で消したけど……」
と、そこで俺はいつまでもベッドに横になって話すのも感じが悪いと思い、取り敢えずベッドから出る事にした。
その後、フレイナは先程までとおなじ人間形態へと変身して、話し合いをする為に部屋を移動した。
「それで、まずここが何処か聞きたいんだが……」
「察しの通り、ここは妖精界よ。人類でこの地を訪れたのは、グレンがはじめてよ」
「やっぱりか……まさか、御伽話とかで書いてた世界に自分が来るなんてな……」
本の中だけの話と思ってたが、こんな事が現実で起こるなんてな。
ほんと、人生って何が起こるかマジで分からんな……
「そんなにこの世界に来る事って、難しい事じゃないのよ? 私が入れても良いって思ったら、入れるって仕組みよ」
「そ、そんな簡単なのか……えっ、じゃあ今まで誰か一人は居たんじゃないのか?」
「それが全く、無かったのよね……この数千年間、偶に世界を見て回ってて出会えたのがグレンだったのよ。ああ、今でも覚えているわ! あの愛くるしいグレンの顔に、不思議な物を見つめるトロンッとした眼……」
「な、成程……」
急に体をクネクネしだしたフレイナに俺は困惑して、そんな返ししか出来なかった。
というか、これまでの人生でここまで人? に求められた事が無かったせいで、さっきから体がめちゃくちゃ熱い。
こんな状態の俺を放って、フレイナは出会った時から今までの俺の可愛かったエピソードを話し始めていた。
「フ、フレイナ。取り敢えず、話を戻そう!」
「ふふ、分かったわ。グレンとの思い出話は、また今度にするわ」
「そ、そうしてくれると助かるよ……」
フレイナの目が本気な目をしている事は、この少しの間で感じ取れた。
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