第38話 【キャロル・1】
2020/12/08:猫人族に関しまして、後の話で変更点がありましたので多少変更しております。※35話
「……まだそんな露出の多い服着てるのか。胸ない癖に」
そのグレンの言葉に、猫人族の女性は一瞬でグレンの背後に回り込み、足蹴りをグレンに放った。
しかし、その程度の速さなら見切ってしまうグレンは、ヒョイッと猫人族の足を掴み、そのまま持ちあげた。
「久しぶりにゃ、グレン君」
「久しぶりだな、クソ猫」
「にゃは~、クソ猫って私には可愛い可愛いキャロルって名前があるにゃ~、何度も教えたのにグレン君忘れちゃったのかにゃ?」
「お前にはクソ猫で十分だよ」
ニコニコと笑顔で言い合うグレンとキャロル。
グレンは掴まえていたキャロルの足を離すと、キャロルは綺麗に地面に着地をした。
「一年振りだが相変わらず、小さいな」
「それは背の事かにゃ?」
「どっちもだ」
キャロルは猫人族という体格が小さい種族である為、身長は140㎝程しかなく、また種族の血は関係ないが胸が小さい。
その為、キャロルを初見で見た者は少女と間違えるが、これでも二十歳は超えている女性だ。
「相変わらず、グレン君は言葉が悪いにゃ! あたしのがお姉さんなんだから、敬語を使うにゃ!」
「俺の情報を嗅ぎまわってる奴に、敬語なんて使うかよ」
「にゃはは」
そうグレンが煽る様に言うと、キャロルは突然笑い始めた。
「何だよ。行き成り笑い始めて、気持ち悪いな」
「本当にグレン君だにゃって思っただけにゃ、こんな風にあたしと言い合うのはグレン君しかしなかったからにゃ~」
キャロルはそう言うと、グレンに向かって「おかえりにゃ!」と笑顔で言った。
「……」
「にゃっ!? そこは「ただいま」くらい言ってくれてもいいにゃ!」
「何か言ったら、負けだと思ってな」
「にゃ! だから、グレン君は友達が居ないにゃ!」
グレンの対応の悪さに、キャロルは声を荒げてそう言った。
「それで、ここ数日ずっと付けてたみたいだが誰かからの依頼か?」
「違うにゃ、前のグレン君と今のグレン君じゃ情報が全く違うから、集めなおしてたにゃ」
「……ただストーカーしてたって事かよ。気持ち悪いな」
「にゃっ! あたしは情報屋にゃ! ストーカーじゃないにゃ!」
「殆ど一緒だろ」
そのグレンの言葉に再びキャロルは暴れるが、グレンは軽く避けてキャロルが諦めるのを待った。
それから、キャロルとグレンは話をしながら王都へと戻る事にした。
「彼奴らにバレない様に配慮したんだから、お前が持つ王都の情報を寄越せ」
「にゃ!? 横暴にゃ!」
「ほう。そんな口をきいても良いのか? お前がクランハウスに、忍び込んでたのこっちは気づいてるんだぞ?」
「ッ!? ぐ、グレン君!? そ、そんな事しないよね? ねっ?」
グレンの脅し文句に、泣きそうになるキャロル。
無断で他人の敷地内に入った場合、いくら情報屋といっても兵士に突き出せばそれなりに罰を食らってしまう。
依頼で動いていた場合は、それなりに対応が違うが今回の場合はキャロルの独断での犯行。
その場合だと、キャロルは兵士にバレた場合、罰金や諸々の罰を食らってしまう事になる。
「ふっ、本当にする訳ないだろ? それに語尾が消えてるぞ」
「ひ、酷い! 頑張って猫人族っぽい喋り方してたのに!」
「一年前、普通に会話してた癖に今更語尾に〝にゃ〟なんて何で付けてたんだ?」
「……少し前に潜入捜査があったのよ。それで役作りで語尾なんかも変えたら、ちょっと面白くなっちゃって続けてたのよ」
落ち込みながら、キャロルはそう語尾を変えていた経緯を話した。
その話を聞いたグレンは「お前が潜入って、珍しいな」と少し驚いた顔をして、言葉を返した。
「ええ、あたしのお得意様の中でも一番偉い人よ」
「……って事は、リシアナ王妃様か」
キャロルは王都で活動する情報屋として、ギルドや貴族から依頼を受けるほどの実力がある。
そしてそんなキャロルの一番のお得意様であり、一番偉い相手はこの国の王妃様であるリシアナ王妃様だ。
「そうよ。王妃様、お金は弾んでくれるんだけど中々厳しい依頼ばかり持ってくるから、あたしも大変なのよね……」
キャロルは溜息を吐きつつ、そう言うとチラッとグレンの方を見た。
「グレン君。今からでも遅くないにゃ! あたしの助手にならないかにゃ?」
「すまんな、クランに仮とは言え入った身だから勝手にそんな事は出来ないんだ」
そうグレンが言うと、丁度良く王都まで戻って来たので一旦、話を止めた。
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