第37話 【グレンの力・3】
◇
一通り魔法を撃ち終わったグレンは、ガリウス達の元へと近寄って行った。
「まあ、今見せられるのはアレ位だな。こっちも手の内を全部見せるのは、流石に無理だからな」
「……それは理解しているが、見せて良いレベルがアレって事はお前の本当の実力はもっと上なんだな」
「まあな、でも魔法に関してはアレが本気だから、戦力としては今のを基準に考えてくれたらいいぞ」
「そうか……」
ガリウスはグレンの言葉に、そう言葉を零すと周りに居るメンバー達に視線をやった。
そして、ガリウスは「何かグレンに質問したい奴は居るか?」と尋ねた。
「あっ、じゃあ一つ良いですか?」
すると一人のメンバー、まだ冒険者になって日が浅い男の子が手を挙げた。
「んっ、リックか。何が聞きたいんだ?」
その少年の名前は、リック。
犬人族の獣人族で、冒険者になってまだ半年程の冒険者だ。
「あの、一つ気になってた事がありまして迷宮の時にグレンさんが剣で戦ってる際に、身体強化の魔法を使ってましたよね?」
「ああ、使っていたな。基本的に体を動かす時は大体使ってるしな」
「はい、僕も魔物と戦闘する時とかよく使うんですけど、グレンさんの強化魔法の掛け方って僕達と違いますよね? その、余り上手く言えないんですけど、僕の場合はこう体を覆うように使ってる感覚なんです。けど、グレンさんは何か違うやり方に見えたんですよね」
そのリックの言葉に、他の冒険者は余りピンと来てない様子だったが、ガリウスがその話を聞いて「ああ、それ俺も昔聞いたな」と言った。
「まあでもその時、結局教えてくれなかったけど」
「あ~、その時は周りの奴等に話しかけられる事自体嫌っていたから、ガリウスの事も無視していたな。基本的に俺が話してたのは、ルドガーとフローラだったし」
グレンもまた当時の事を思い出して、そう言葉にした。
「まあ、そうだな。リックと言ったか? お前の言う通り、俺の強化魔法の掛け方はお前達が使ってるやり方と少し違う。ガリウス、ちょっと強化魔法を自分に掛けてみてくれないか?」
そうグレンが言うと、ガリウスは指示通りに自分に対して強化魔法を掛けた。
「ガリウスやお前達が強化魔法を掛けた場合、こんな感じに魔力が少し漏れてるだろ? それは、強化魔法を体の外から掛けてるからこうなってる訳で」
そこで言葉を止めたグレンは、強化魔法を発動させた。
「俺の場合は、その強化魔法を体の内から使ってるやり方になる」
「「お~」」
ガリウスとグレン、二人の強化魔法の違いにクランメンバー達は驚きの声を上げた。
隣にいるガリウスもまた「体の内か……」と呟き、グレンの言葉通りに体の中から強化魔法をやろうとした。
しかし、イメージ通りにはいかずさっきと同じように魔力が漏れてしまった。
「見よう見真似でやろうとしても、多分無理だぞ? 俺の場合、特殊なやり方だったが人間の構造を理解したから出来る芸当だ。やるのであれば、人間の構造について文献なんか読んでちゃんと理解しないと使えないぞ」
「べ、勉強が必要なのか……」
勉強が必要だと知ったガリウスは、眼に見えて落ち込むが他の冒険者はグレンの言葉を聞いて、帰ったら調べてみようと意気込んでいた。
そうして最初の質問者に対して、答えたグレンに他の冒険者達も色々と話を聞いた。
昔の性格であれば断っていたグレンだが、現在のグレンはその質問者達に対して自分の経験から得た知識を与えてやった。
「さてと、そろそろ帰るとするか。グレンについてはお前達も少しは理解出来ただろ? これでまだクランに居る事を悪く思うなら、直接俺の所に来いよ」
そのガリウスの言葉にメンバー達は「嫌なわけありません!」と、当初グレンの事を嫌っていたメンバーも同じように言った。
そうしてクランメンバーから晴れて認められたグレンは、自分が魔法で荒らした平原を整地してから帰るとガリウスに言い、平原に一人残った。
「……出て来いよ。クソ猫」
そう口にすると、少し離れた草が揺れた。
「にゃはは~、グレン君。感知能力高すぎにゃ~、昔から高かったけど更に磨きがかかったにゃ~」
そう口にしながら揺れた草辺りから出て来たのは、露出が高めの服を着た猫人族の女性だった。
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