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第32話 【再会・2】


「昨日、俺のクランの奴が慌てて俺の所に来て「グレンが帰ってきました」って報告をくれたんだよ」


 椅子に座ったガリウスは、食事の手を止めないグレンに対して、そう話を切り出した。


「ふむ」


「それでな、慌ててギルドに行ったら既に閉まってて、今朝もう一度来たんだ。そこで会えると思ったが、既に迷宮に行ってるとルドガーから聞いて、戻って来るのを待っていたんだ」


 ガリウスの話を聞いている間、グレンは一度として手を止めずにステーキを食い続けていた。

 そんなグレンに対して、ワナワナと怒りを溜めていたガリウスは「バンッ」と机を叩きつけた。


「人が心配してたって言ってるのに、呑気に食べ続けんじゃねえよ!」


「いや、別にガリウスに心配される事は無いだろ? そこまで、俺達接点無かったし」


 グレンの本音として、ガリウスは何度か共闘した事が有る知り合いというくらいの認識だ。

 しかし、ガリウスはグレンに対して特別な思いがあった。

 それはかつて共闘した際、グレンの動きを見て〝ただ者では無い〟と感じ取ったからだ。

 それからガリウスは、仲間にと何度も勧誘する程、グレンの強さにほれ込んでいる。


「接点無いって、それはお前が俺の事を避けてたからだろ? 何度も勧誘した俺も悪いけどさ……」


「分かってたんなら、止めてくれよな……」


 目の前で反省するガリウスに、呆れた口調でグレンは言葉を返した。

 そんなガリウスはふと目線を斜め上、フレイナが居る場所を見つめた。

 そしてそれまでの声量から低く、グレンに小声で話しかけた。


「なあ、さっきから俺と契約してる妖精がうるさいんだが。グレンと契約してる妖精ってヤバい奴なのか?」


「んっ? ああ、お前も妖精と契約していたな。そうだな、まあ妖精にとっちゃあヤバイ相手だから、ちょっと騒いでるんだろうよ」


「そうなのか、いやまあ確かに魔力の質も普通の妖精と違うみたいだな……」


 ガリウスはそう言うと、視線をグレンに戻した。


「……ちょっと会話しただけだが、以前のお前と全く違うな」


「まあ、それは色々と事情があってな」


「そうか。まあ、知り合い程度の俺には話せないだろうが、お前が戻って来たというだけで俺は嬉しいよ」


 ニカッと笑いガリウスはそう言うと、懐から一枚の紙を取り出した。

 それはガリウスがリーダーを務めるクラン。

 〝シルバーナイツ〟への加入申請書であった。


 冒険者として活動する中で、二つの組織が存在する。

 一つ目は主に戦闘職の冒険者を集め、二桁に満たない人数での活動をメインとするパーティー。

 二つ目は戦闘職以外に生産職の兼業冒険者や、商人と契約したりといった集団での活動をメインとするクランだ。


「……まだ諦めてなかったのかよ」


「当たり前だろ、俺はお前の力に惚れてるんだからな」


「男に惚れてるって言われても、全く嬉しくないんだが……」


 そうグレンは思いながら、フレイナの方をチラッと見た。


(どうしたの?)


(いや、フレイナ達の意見も聞いておこうかなと思ってな)


(あら、私達も意見言っていいのかしら? グレンが決める事じゃないの?)


 フレイナは少し驚きながらそう言葉を返した。

 グレンとしてもフレイナと行動を共にしている以上、自分だけで物事を決めるよりフレイナ達と考えた方が良いと考えての事だった。


(そうね……この人に付いてる妖精の子が言うには、クラン内での人間関係も良いみたいね。グレンにとって色々と良い経験にもなるから、試しに入ってみるのも良いかもね)


(成程、お試しか……)


 グレンはフレイナとやり取りを短時間で行い、ガリウスの方へと視線を戻した。


「おっ、話し合いは終わったのか?」


「ああ、待たせて悪かったな。それでだけど、お試しで入る事って出来るか?」


「お試しか……まあ、確かにそれで一度俺のクランの良さを知って貰って、そのまま居ついてもらうのが良いか」


 笑みを浮かべたガリウスは、グレンの横に移動して肩を組んだ。

 嬉しそうなガリウスに対して、グレンは迷惑そうな顔をしながらガリウスを引きはがした。


「居つくかどうかは分からんけどな、取り敢えず詳しい話を後で聞かせてくれるか?」


「おう。って、まだ食うのか?」


 話をしながらも食事を進めていたグレンは、既に注文していたステーキ肉を完食していた。

 それなのに、まだ食べるのか? とガリウスは驚きながらグレンにそう聞き返した。


「いや、そろそろルドガー達の鑑定が終わるころだから、受け取りをしないといけないんだよ」


「そうだったのか? 俺が来た時には食事をしてたから、普通に昼飯を食ってるとばかり思ってたぜ……えっ、いやそうだったら大分時間経ってないか?」


「まあ、ちょっと張り切りすぎてな。ルドガーが数人の職員を連れて今頑張ってるんだよ」


 グレンの言葉にガリウスは「マジかよ……」と呟くと、疲れ果てたルドガーと職員達が地下から戻って来た。

 ルドガー達の姿を確認したグレンは席を立ち、ガリウスに「また後で」と言い受付の方へと向かった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 断られ続けた相手がお試しでも加入すると言ってくれたのは嬉しかっただろうなー。
[一言] 幼馴染らへのざまぁを期待してる分、ちょいとテンポが悪く感じるようになってきたのが残念。
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