第296話 【家族・3】
それから約三カ月後、グラムの結婚式が行われた。
参列者にはブラッド家は勿論の事、多くの国の貴族が集まった。
中には、悪魔との戦いで一緒に戦った者達も集まっていて、グレンとほぼ同じ規模の大きな結婚式が行われた。
「グラムさん、凄く喜んでたね」
「ああ、あんな嬉しそうなグラム兄さんの顔が見れたのは初めてだよ。式場を貸せて、本当に良かった」
グラムの結婚式が無事に終わると、グレンは約束通りグラム達の新婚旅行の手伝いとして数日同行する事になった。
勿論、その際はニアも一緒に付いてきており、旅行先ではグラム達とは別れてグレン達も旅行を楽しんだ。
「グレン、最近は仕事も落ち着いて来たわね」
「人の行き来が大分落ち着いて来たってのもあるけど、俺達が忙しいのに慣れたってのもありそうだけどな……」
「それは確かにあるわね。グレンとグラム、ほぼ同時期に結婚式を挙げて人が更に増えたものね……あの結婚式場の予約、もう2年先まで埋まってるのよ」
グレン達が作った結婚式場の噂は大陸中に広がっており、そこで結婚式を挙げれば幸せになれるという変な噂も流れている。
「誰が流したのかいまだに分からないだよな、その幸せになれるっての」
「まあ、でもあながち間違いでも無いわよ? グレンもそうだけど、既にあそこで結婚式を挙げた新婚は皆、幸せな生活を送ってますって手紙が来てるわ」
フローラの言葉にグレンは「本当にそんな効果かあるのか?」と、少し疑問に思いながら仕事を進めた。
その日は特に急ぎの仕事も無く、いつもより早めに仕事を切り上げたグレンは家に戻ると、ニアが玄関まで迎えに来た。
「おかえり、グレン」
「ただいま、ニア」
出迎えに来たニアにグレンはそう言って、一緒にリビングへと移動した。
「大分、大きくなって来たなお腹」
「うん。お医者さんも順調だって言ってたよ」
「そうか、早く生まれてきて顔がみたいな……」
結婚式から数ヵ月が経ち、ニアのお腹には新しい生命が宿っていた。
「私も早くグレン達の子供と会いたいわ。どっちに似るのか楽しみだわ」
フレイナはグレン達に子供が出来たと聞いた時、自分の事の様にはしゃいで日中はずっとニアの近くに居て、安静に過ごせる様に見守っている。
フレイナが居るからグレンも仕事に集中が出来ており、ニアも近くにフレイナが居るから安心して過ごせている。
「俺としてはニアに似て欲しい思いはあるな……自分で言うのもおかしいけど、子供の頃は本当に泣き虫だったからな、ニアはその辺強そうだし」
「孤児だったから、強いか弱いかで言ったら強い方だったけど、私みたいにあまり感情表現が苦手には育ってほしくないかな、その辺はグレンの方がまだマシだし」
そうニアが言うと、グレンは「別に俺も子供の頃は苦手だったぞ?」と言った。
「確かに、グレンが今みたいに感情表現がちゃんと出来る様になったのはニアと一緒になってからだものね」
「そう言えば、そうだったね。でも、可能性としてはグレンの方が感情表現が出来るから似るならグレンに似て欲しいかな」
「……まあ、どっちに似ても俺達の子供だから大切に育てるけどな」
グレンはそう言いながら、ニアのお腹を優しくなでると、ニアは「勿論、どんな子でも大切に育てる」と言って一緒にお腹を撫でた。
それから月日は流れ、ニアの出産の日となった。
グレンは女性の出産に関して知らない事が多かったが、本を見たり母親に話を聞いたりして、出産が無事に進むようにと準備をしてきた。
「ニア、頑張れ」
出産部屋には男が入れない為、グレンは部屋の外で無事に生まれてきてほしいと強く願っていた。
そしてそれから数時間後、部屋の中から赤ん坊の泣く声が聞こえると、扉が空き「無事に生まれました」と伝えられた。
そして出産が終わり部屋に入れるようになったグレンは、部屋の中に入りニアとニアが生んだ赤ん坊を目にした。
「グレン、無事に生まれたよ」
「ああ、お疲れ様ニア。これが俺達の子供……可愛い男の子だ」
グレンとニアの子供の性別は男で、今は可愛い寝顔で寝ていた。
そんな赤ん坊をグレンは微笑みながら見つめ、そして出産を頑張ったニアに「ありがとう」とお礼を言った。
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