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第295話 【家族・2】


 それから数日後、グレンの家に珍しい客がやって来た。


「……皇帝が他国の貴族の家に来ても良いのかよ」


「僕とグレンの仲でしょ? それにほら、ちゃんとグラムも一緒だからね」


「ふふっ、久しぶりだね。グレン」


 グレンの家にやって来たのは、帝国の皇帝として即位したウィルドと側近として一緒にやってきたグラムだった。

 グレンはそんな二人を家の中に案内して、客間に二人を通した。

 この数ヵ月ですっかり幼い感じが抜けてきたウィルドは、立派な皇帝の姿となって来ていた。

 そんなウィルドの変化にグレンは気づきながら、二人が何故家に来たのか尋ねた。


「それで、今日はどんな用事で来たんだ? 前もって手紙も寄こしてたけど、内容は相談があるって書いてあっただけだったけど」


「うん。実を言うと、今日来たのはグレンに頼みがあってきたんだよ」


「俺に?」


 ウィルドの言葉にグレンは首を傾げると、ウィルドの隣に座ってるグラムが「手伝ってほしい事があるんだ」とグレンに言った。


「……態々、皇帝と一緒に来るって兄さんどんな頼みをするつもりなんだ?」


「ああ、僕はただの付き添いだよ。面白そうだと思って、偶には息抜きも必要でしょ? 皇帝になって毎日忙しくて、流石に息抜きしたいなって思ってた所にグラムから話があって、それに付き合う事にしたんだ」


 そうウィルドが言うと、グレンは溜息を吐くとグラムの顔を見て「それで、どんな要件なの?」と聞いた。


「以前から父さん達に、いつ結婚するんだ? って聞かれてるのは、グレンも知ってるだろ?」


「ああ、帰省する度に聞いてるよ。俺が結婚したのもあって、父さん達も兄さんの結婚を楽しみにしてるんだろ……もしかして、俺に兄さんの結婚相手を探すのを?」


「そこは流石に頼まないよ。僕だって立派な大人だからね」


「それじゃ、俺に何を頼むつもりなんだ?」


 そうグレンが聞くと、グラムはグレンに頼みの内容を伝えた。

 その内容とは、グレンの持つ転移の力を貸してもらい、想い人との旅行に力を貸して欲しいという内容だった。


「えっ、兄さんって好きな人出来たの!?」


「ふふっ、そこ驚くよね。僕もグラムから聞いた時は驚いたよ。あのグラムに想い人が出来たなんてって」


 驚くグレンに対して、ウィルドは笑いながらそう言った。

 そんな二人に対して、グラムはムスッとした表情で「一応、僕だって人間だから好きな人位は出来る」と言った。


「いや、前までそんな乗り気じゃなかったでしょ? 何処で出会ったの?」


「ここ数ヵ月はウィルドに付いて、色んな人と会っててその中に相性が良い人が居てね。手紙のやり取りから初めて、何度かデートもしてるんだ」


「まあ、普通の出会い方をしたって事か……でも、グラム兄さんに相手が見つかったのは俺も嬉しいよ。正直、グラム兄さんの性格を考えたら独身のままでいそうだなって心配に思ってたから」


 グレンは心配に思っていた事をそう告げると、ウィルドも「僕も心配してたから、相手が見つかったって聞いて安心したよ」と言った。


「それに関しては僕自身思ってたからね。本当に出会いは突然って聞くけど、本当に突然だったよ」


「……幸せそうでよかったよ。何度もデートしたって事は、ある程度お互いに結婚しようみたいな雰囲気は出てる感じなの?」


「うん。相手の両親とも話して、結婚は決まってるよ。それでさっき言った旅行に関しても、新婚旅行でグレンの力を貸して欲しいと思って色々と報告に来たんだ」


「結婚まで決まってるのかよ!」


 そうグラムから言われたグレンは、既に結婚も決まってるという事に驚いていた。

 その後、落ち着いたグレンはグラムからのお願いに承諾して、力を貸すと約束をした。


「結婚式だけど、式場とか決まってるの? 決まってないなら、俺が結婚式を挙げた場所でやるのはどう?」


「えっ、良いの? あそこって、かなり人気で日程がかなり埋まってるんじゃないの?」


「責任者は俺だよ? 元々、知り合いが使っても大丈夫なようにある程度の日程は確保してある。グラム兄さん達が良いなら、そっちに管理してる人を送るけど」


「頼むよ! 彼女もあそこで挙げたいって言ってたから、出来るなら使わせてもらいたいと思ってたんだよ」


 そうグラムから言われたグレンは、後でフローラの所に言って色々と話くると伝えた。


「いや~、まさかあの式場も使わせてもらえるなんてな~」


「ここにくるまではグレンに頼っていいのかな、とか言ってたのにね。グレンに頼むように言ったのも、僕なんだよ?」


「まあ、グラム兄さんはなんだかんだ長男として俺に頼り切れない部分はあるからな……まだ一年も一緒に居ないけど、頼りにしてくれてもいいんだよ?」


「いや、まあ分かってはいるんだけどな……やっぱり、どうしてもグレんにこれ以上の負担はかけたくないって思いがな……まあ、でもそれもグレンからしたら要らない感情だろうけど」


 グレンの言葉に対して、グラムは苦笑いを浮かべながらそう言った。


「これからは頼れる時は頼る事にするよ。家族だしね」


「ああ、グラム兄さんは俺の兄さんだから、困ったらいつでも頼ってくれていいよ。俺だって、基本的に面倒事は嫌だけど家族の頼みは断らないから」


 その言葉にグラムは感動したのか、涙を少し浮かべて「グレン~」と立ち上がり、グレンに抱き着こうとした。

 しかし、抱き着かれる寸前にグレンは転移で避けた。


「頼みは聞くけど、そういうのは勘弁」


「ふふっ、やっぱりこの兄弟は見てて面白いね~。息抜きでついてきて正解だったよ」


 グレン達のやり取りを見ていたウィルドは笑みを浮かべてそう言い、半泣きのグラムは「何で避けるんだよ~」とグレンに抗議をしていた。

 その後、グラム達はグレンの家に一泊して行く事になり、久しぶりにグレンはグラム達と共に夜遅くまで一緒に酒を飲み楽しい時間を過ごした。


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