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第291話 【新婚旅行・1】


 結婚式から数日後、グレンの街は更に人の数が増えていた。

 増加の理由は、色々とあるが一番の理由はグレン達が結婚式を挙げた式場を一目見る為だろう。

 自分達には使えないが、外見だけでもと思う者達が沢山居り、移住者の次に旅行者が増えていた。


「まだ移住者じゃない分マシだけど、旅行者の対応だけでもここまで疲れるのか……」


「グレンさんの領地は、今じゃ世界で一番注目されてる場所ですからね。領主が世界で一番の強者であるから、安全な上に領地経営にも多くの人達が協力していて他の地域よりも栄えていますからね」


 グレンの愚痴に対して、グレンの部下となって生活しているカグラはそう言いながら、自分の持ってきた報告資料を渡した。


「そう言えば、グレンさんとニアさんは新婚旅行にはいかないんですか?」


「んっ? 行くよ。ただちょっと、流石にこんなに忙しいのに放置してはいけないだろ? ニアと落ち着いたら行こうって話して、今は仕事に集中してるんだよ」


 カグラの質問に対して、グレンはそう答えると部屋に新たな人物が入って来た。

 入って来たのはカグラと同じく、グレンの下についたクリスだった。


「グレン、入るぞ~」


「クリス。入ってから、入るぞはおかしいだろ……それで、何の用だ?」


「何の用って、頼まれてた新しく街に来た奴らの集めた情報だよ。流石に一人じゃきつかったから、丁度こっちに王妃様と遊びに来てたキャロルに手伝ってもらったから早く集められたんだよ」


「……王妃様はまた遊びに来てるのか」


 グレンの街はフローラの商会を筆頭に、多くの商会が店を構えている。

 その商会の中には劇団を持ってる商会や、賭博場関係者もおり、グレンの街は遊びもかなり発展している。

 王妃はその中でも、特に買い物と劇団の劇を見るのにハマっていて、月に何度も遊びに来ている。


「王様も俺の所なら安心だからって、王妃様を自由にさせすぎだろ……」


「まあ、そこはな……一応、王妃が来てるって知ったからガリウスの所には報告しておいたよ」


「助かるよ。無駄な報告が済んだな」


 クリスの働きにグレンはそう感謝して、クリスから受け取った報告書に目を通した。

 その後、一日の仕事を終えたグレンは先に風呂に入り、ニアと一緒に夕食を食べる事にした。


「グレン、今日も一日大変そうだったね」


「ああ……人がまた増えて、その対応に追われてるみたいだ。フローラが居なかったら、今頃何度か過労で倒れてたな」


「フローラさんは本当に優秀な人だよね。人を使う事も長けてて、本当に協力者に居て良かったよね」


「本当にな、いつかフローラには恩返ししないといけないな」


 そうして夕食を食べ終わった後、ニアはお風呂に入りに行き、グレンは先に寝室へと移動して先にベッドに横になっていた。


「ねえ、グレン。新婚旅行の話してたけど、行く場所はもう決めたの?」


「ん~、獣人国に行こうかなって考えてる」


「獣人国……確かに、あそこなら海も近いし旅、行の場所としても良さそうね」


 フレイナは獣人国と聞いて、名案だとグレンに言った。

 そしてフレイナは、続けてグレンに「ニアの水着姿見たいの?」と聞いた。


「見たいに決まってるだろ。見たくないと言ったら嘘になるからな、ただそれが目当てって訳では無いぞ? ニアは獣人国に行った事が無いし、あっちの食べ物も美味しいからニアに食べさせてやりたいと思ったんだよ」


「確かに獣人国ならではの料理も沢山あるし、あそこは海で獲れる海鮮系の料理が凄く多いわよね」


「ああ、だから色々と食べさせてやりたいと思ってるんだよ」


 その後、ニアが風呂から上がってくるまでフレイナと獣人国での旅行についての話をした。

 そしてニアが風呂から上がって寝室に来ると、グレンは自分の横にニアを寝かせた。


「最初の頃はあんなら緊張してたのに、もう普通になってきてるわね」


 フレイナはそんなグレン達を笑みを浮かべてそう言うと、グレンは「大分、慣れたみたいだな」とニアに言った。


「うん。もう恥ずかしくはないよ。だって、グレンのお嫁さんだしね」


「確かにな、ニアはもう俺の嫁だからな」


 ニアはギュッとグレンに抱き着くと、グレンもニアの体を片腕で抱きしめた。

 そんな二人を見てフレイナは笑みを浮かべ、姿を消してグレン達はそのまま一緒に寝る事にした。

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