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第29話 【アレイン・1】


「はぁ、今日も小遣い程度しか稼ぎが無いか……」


 俺の名前は、アレイン。 

 幼馴染の3人の女の子と冒険者パーティーを組んでいる。


「そうだね……最近、なんだか調子が悪いよね」


「うん、やっぱり新しい人入れた方が良いのかな? 前衛がアレイン君一人だと、辛いでしょ?」


「一応、募集の紙や勧誘はしてるんだけどね。中々、人が来てくれないんだよね」


「やっぱり、あの人が変な噂流してるんじゃないの? ほら、少し前にグレン君と入れ替わりで入れた剣士が」


 エレナがそう言うと、エミリーとユリも「そうに違いないよ!」と言った。


「折角、ソロでアレイン君が誘ってくれたのに一ヵ月で抜けるなんて失礼だよね!」


 エミリーが怒った顔でそう言った。


「エミリー。そんな怖い顔したら、折角可愛い顔が勿体ないよ」


「あっ、うん。ごめんねアレイン君……」


 俺の言葉にエミリーは顔を赤く染めて、身を俺の方へと寄せて来た。


「それにグレンも折角戻してあげようと思ったのに、姿消すなんて惨めな男だったね」


 ユリのそんな言葉に、エレナやエミリーは「そうだよね」と同じ意見の様子だった。


「はは、仕方ないよ。俺達に見限られて、居場所がなくなったんだから自分の事を知らない所にでも逃げたんだよ」


「「アレイン君。優し~」」


 そうエミリー達が俺に目をキラキラとさせ、上目遣いで見て来た。

 そんなエミリー達を俺は、抱き寄せて優しく頭を撫でてあげた。


(ふふっ、最初はどうやってエミリーを手にするか考えてたけど、結構簡単だったな。グレンの奴が消極的な奴で本当に助かったよ。ありがとな、グレン)


 心の中でそう居なくなったグレンに対して、感謝の言葉を送った俺は今日もエミリー達と一緒の部屋で夜遅くまで楽しむことにした。



 グレンとアレインの出会いは、エミリー達よりも少し早い時期だった。

 赤ん坊の頃から教会で暮らしていたグレンとは違い、アレインは親が居なくなり教会に引き取られた子供だった。

 それはグレンとアレイン、どちらも4歳の時の事だ。


「よろしく、僕はアレイン。君は?」


「……グレン」


 その時、既に教会に暮らす子供達の間で虐められていたグレンは、新しく来たアレインに対しても警戒心を向けていた。

 そんな事を知らないアレインは、最初グレンの事を変な奴だと認識した。


「エミリーちゃん、何でグレンに構ってるの?」


 教会での暮らしに慣れた頃、アレインは一人の女の子が気になっていた。

 その女の子の名前は、エミリー。

 アレインにとって初恋の相手であり、初めて失恋した相手でもある。


「ん~、グレン君が好きだから~、いつか結婚するんだ~」


 子供の言葉、叶うかどうかも分からないそんな言葉に当時のアレインは心をズタズタにされた気分だった。

 それからアレインは、積極的にグレンを影で虐め始めた。

 想い人でもあるエミリーにはバレない様に、そしてグレンに対しても自分が犯人だとバレない様に影でコソコソと動いた。

 実行犯は今まで虐めていた者達、その虐め犯にアレインは「こんなのは~」と助言をしていた。


 結果的に、いつの日からかグレンはそれまでとは変わった雰囲気を纏うようになった。

 泣き虫で気弱だったグレンが、泣かなくなり逆に鋭い目で睨み返し、イジメの実行犯達はそんなグレンに近づかなくなった。

 その後、アレインも実行犯が居なくなり、グレンを虐める事は出来なくなった。


 それから時が流れ、全員が教会を出る年齢となった。

 実行犯が居なくなった後、アレインは積極的にグレンとエミリーと仲良くなり、教会を出た後は一緒に冒険者になろうと誘っていた。

 他の仲間には同じく、教会出身で魔法が使えるエレナとすばしっこいユリを誘い5人でパーティーを組み冒険者となった。


 その時、アレインはとある計画を立てていた。

 それはグレンを排除して、エミリーを自分の物にするという計画を立てていた。

 手始めにやったのは、エミリーとグレンの仲を悪くする所から始めた。


「エミリー、ちょっと良いかな?」


「何?」


 元々アレインは口が上手く、騙すのが得意だった。

 純粋な心を持つエミリーを騙すなんて、アレインにとって簡単な事だ。

 今まで出来なかったのは、教会という大人の目や周りに人が多すぎて出来なかった。

 そしてアレインの言葉に上手く騙されたエミリーは、それから暫くしてグレンとの関係が少しずつ悪くなっていた。

 その間、アレインは他二人の仲間にも同じように、言葉を上手く使い自分の味方へとなるように誘導していった。


「グレン。君、最近悪い噂が流れてるよね」


「そうみたいだな」


 既にその時にはグレンの感情は、殆ど〝治療〟によって消えていてアレインの行動に気付く事は無かった。

 グレンの悪い噂、その殆どは味方でありリーダーであるアレインが流していた。


「少しは迷惑だと感じないのかい?」


「ああ、すまない」


 仲間の前で、パーティーの事を想いグレンに対して注意をするアレイン。

 片や自分は本当に何もしていないから、反省の色を出さないグレン。

 その二人の姿を見た仲間達は、徐々にグレンへと辛く当たる様になっていった。

 そして冒険者となり二年が過ぎた頃、パーティーの女の子は全員アレインの女となっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ〜やっぱり元はいい子たちだったけど洗脳されたか〜
[一言] アレインのした事、グレンが何も悪くなかった事が3人の女に解ってから沈んで行ってほしいかな
[気になる点] 「はは、仕方ないよ。俺達に見限られて、居場所がなくなったんだから自分の事を知らない所にでも逃げたんだよ」 「「アレイン君。優し~」」 優しさどこ?
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