第289話 【結婚式・2】
その後、夕食の席でニアから「私にも式場の事、教えてよ」とムッとした表情で訴えかけられたグレンは明日連れて行くと約束した。
グレンのその言葉を聞いたニアは、「約束だからね?」と念を押した。
そして翌日、朝食を食べ終わったグレンはニアを連れて式場へと向かった。
「……えっ、これが式場なの!?」
「外見から、もう普通の場所との違いを見せつけられてる気分になるだろ?」
「うん。色んな所の式場を見たけど、グレン達が「凄い」って言ってた意味が少しわかった気がする」
「ふふっ、外見だけどそう思ったなら、中に入ったらニアは叫ぶかも知れないぞ?」
グレンは外見だけでも、満足してる様子のニアに対して、フローラから預かっている式場の鍵を使い、建物の中に入った。
そしてグレンに連れられる形で中に入ったニアは、内装の凄さは言葉を失っていた。
「ニア? お~い、ニア?」
「……ッ! ご、ごめん。あまりにも内装が凄すぎて、頭の処理が追い付かなかった。それにしても、外見だけでも凄いと思ったけど、内装も凄いね……」
「フローラが俺とニアの為にって、張り切って職人から選び、使う材料等も決めたらしいからな、本当にフローラには感謝しないとな」
「うん。ここまで凄い式場を用意してくれて、フローラさんは本当に凄い人だよね」
その後、グレンとニアは軽く式場を見て回って、家に帰宅する事にした。
帰宅後、グレンは休んでいた間、領主であるグレン以外が出来ない仕事が溜まっていたのでそれの消化をする事にした。
仕事が残ってる状態で、結婚式なんてあげられないと強く思ったグレンは、以前よりも集中して仕事に没頭するのだった。
それから二日程、グレンはフローラと打ち合わせを行い。
結婚式の日程等を決めて、誰を呼ぶのか話し合った。
「絶対に呼ぶべき人物だけでも、これだけの人数か……昔の俺からしたら、本当に変わったな」
「確かにそうね。まあ、昔のグレンならそもそも結婚なんてしなかっただろうと思うけどね」
「まあ、確かにな。あれから、本当に俺は変わったよ」
そう言いながら、俺はふとフローラの方を見ると、何故か目に涙を浮かべていた。
「フローラ。どうしたんだ?」
「あっ……ごめん。我慢しておこうと思ったんだけど、やっぱり嬉しさがこみ上げてきちゃったみたい。人から嫌われていたグレンが、まさかこんなに沢山の人を呼べる人になって、結婚式をするなんてなんだか嬉しく思っちゃって」
フローラはそう言いながら、涙を流すとグレンは「母親みたいだな」とフローラに言った。
「気持ち的には、それに近いかも知れないわね。街の嫌われ者だったグレンが、人々から好かれる貴族になるなんてあの頃から考えたら、本当に凄い事だわ」
「貴族になったのは成り行きだけどな……まあ、フローラやルドガーにはずっと心配かけてたからな、そう思われても仕方ないだろう。お前等には、本当に感謝してるよ」
「……もう! 今それを言ったら、私がまたなくって分かって言ったでしょ!」
フローラはグレンの追撃により、更に涙を流して、そんなフローラの言葉に「今日はそろそろやめるか」と言って、話し合いは終わらせた。
「なあ、フローラ。結婚式を上げたら、また忙しくなるだろうし、その前にルドガーも誘って三人で飯にでもいかないか?」
「いいの? ニアちゃんが悲しむんじゃないの?」
「そのニアからの提案だよ。結婚式が終わったら、まあ俺が忙しくなるだろうから、お世話になった人と今のうちに食事に行ったらどうかって、俺もその言葉に確かになと思って、一番初めはフローラとルドガーと行くのが筋だろうと思ったんだよ」
そうグレンが言うと、フローラは嬉しそうに「それなら、行きましょうか」と誘いに乗った。
それからグレンは、ルドガーの元へと行き同じように食事に誘うと、ルドガーも嬉しそうに「その食事会には絶対に行く」と言った。
それから数日間、グレンは世話になった相手と食事をしたり、食事に行けない人とは軽く昔話をしたりした。
そして挨拶周りを終え、グレンとニアの結婚式当日となった。
「改めて直に見ると凄い数だな、これだけ俺の結婚式に来てくれたのか」
結婚式当日、グレンは待機室の窓から外を見て、その集まった人の数に笑みを浮かべながらそう言った。
そんなグレンの言葉に対して、フレイナも「ええ、確か凄い数ね」と外を見ながらグレンの言葉に同意した。
それからグレンは窓の外を見ながら、部屋で待っていると式場のスタッフがグレンを呼びに来た。
「さてと、ニアに恥をかかせない事だけを考えていくか」
「頑張ってね。グレン」
意気込むグレンに対して、フレイナはそう声を掛けて先に会場の方へと行き、グレンは会場となる部屋の扉の前で待機した。
そして中から扉をあけられたグレンは、落ち着いた表情で部屋の中へと入っていった。
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