第286話 【休養・2】
翌日、グレンとニアは朝食の席でお互いに顔が見れない状態となっていた。
「ったく、こうなるって分かってただろ……」
「あら? グレンなら、今まで沢山の女性と経験があるからそんなに恥ずかしがらないと思ってたけど、意中の相手だと緊張しちゃうのね。なんだか可愛い一面を見れたわ」
フレイナはこの状況を一番楽しんでいた。
そしてグレンは、そんなフレイナに対して睨むがフレイナは一切気にしていなかった。
妖精達も普段のグレンとは違うグレンが見れて、楽しそうに「グレンの顔赤い~」と楽しんでいた。
「ったく……」
グレンは少しイライラしながら食事を終わらせると、一人で訓練場の方へと移動した。
ここ数日間、仕事もあって忙しくグレンは訓練を疎かにしていた。
お互いの気持ちの整理もしないといけないとニアに言って、今日は別行動をする事にした。
「ふ~……運動すると、やっぱり気持ちの整理がしやすいな」
朝食を食べて二時間程、グレンは一人で黙々と訓練を続けていた。
その中でグレンは昨日の出来事を思い出し、色々と自分の中で気持ちの整理をしていた。
「娼館通いしてた俺が、ニアの体を見てドキドキしたのは、ニアが好きな相手だからなんだろうな……」
グレンは今まで娼館の女とは、した事があるが好きな相手とは裸すら見せあった事が無かった。
その為、昨夜の緊張はそれが原因だと、グレンは自分の気持ちを整理して気づいた。
そして好きな相手になると経験豊富なグレンは居なくなり、ただの恋愛初心者になってしまうと、グレンは気づいた。
「俺ってこんなに、初心な心の持ち主だったなんて自分でも驚くな……」
「ふふっ、グレンは昔から可愛い所があると私は思ってるわよ?」
「……盗み聞きは趣味が悪いぞ、フレイナ」
「あら? 偶々来たら、グレンの独り言が聞こえただけよ」
ニコニコと笑みを浮かべるフレイナに対して、グレンは溜息を吐いた。
「それで、ニアはどうしてるんだ?」
「あの子達と一緒に今は、昼食の準備をしているわよ。ニアが一番落ち着くのは、料理してる時だからって言って朝食を食べた後からずっと作ってて、かなりの量が作られてるわね」
「昼間から大食いか……まあ、丁度いいか運動して腹も減ってたしな」
グレンがそう言うと、フレイナと一緒にニアの所へと向かった。
丁度、料理を終えていて休憩していた所にグレン達は戻って来た。
「ニア。料理は終わったのか?」
「う、うん。終わってるよ。少し早いけど、お昼にする?」
「いや、その前にちょっとニアと話がしたい。フレイナ達は別の所に行っててくれないか?」
「ええ、いいわよ」
フレイナはそう言うと、妖精達を連れて部屋から出て行った。
二人きりとなると、ニアは途端に緊張しだして「な、何か話があるの?」とグレンに聞いた。
「昨日の事だが、ニアの気持ちは本当にうれしかった。好きな相手だからこそ、本当に嬉しかった」
「ふぇっ!? そ、そんな改めて言わないでよ」
「正直、俺は好きな相手とああいう関係になるのを心のどこかで怖がって居たのかも知れない。だから、今もニアと別々の部屋で寝たり、お風呂だって今まで一緒に入った事が無かった」
「……うん。気づいてたよ。結婚するってなってから、ちょっとだけ私と距離を少しだけ開けてたもんね」
ニアはグレンのちょっとした変化に、ずっと前から気づいていたと言った。
「自分では気づいてなかったんだ。心の問題で、今日一人になってようやく気付けた。もしも、それでニアを傷つけていたら本当に申し訳ない事をしてた。すまない」
「ちょっとだけ寂しいとは思ってたけど、フレイナさんが相談に乗ってくれてたから、そんなに落ち込みはしなかったよ。いつかグレンが自分で気づいてほしいとは思ってたから、ちゃんと気付いてくれて私も嬉しいよ」
「……もしかしてだが、昨日の風呂場への侵入も俺に気付かせるためにやったのか?」
「それもあったけど、グレンの裸を見ておきたいって気持ちも本当かな? 私、グレンとは違って経験ないから……」
ニアのその言葉にグレンは、ドキッと心臓が跳ねて少しだけ気持ちが高揚した。
そんなグレンを見て、ニアは笑みを浮かべて「グレンって、結構変態さんだね」と言った。
ニアからそう言われたグレンは、悔しそうな顔をしながらも本当の事なので言い返す事が出来なかった。
「その、これからは自分の気持ちに素直になろうと思う。だけど、出来なかったらそのニアから来て欲しい……」
「私も初心者だから、そこはお互い頑張ろうね」
ニアの言葉にグレンは、「そうだな」と笑みを浮かべて返事をした。
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