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第285話 【休養・1】


 妖精界へとグレン達がやって来て二日目。

 グレンはいつもより遅い時間まで寝て、お昼近くになってニアが起こしに来るまでぐっすりと寝ていた。


「やっぱり疲れが溜まっていたみたいだね。こんなにぐっすり寝てるのはじめて見たよ」


「ん~、まあ自分ではそこまで無理はしてなかったと思ってたけど、体は正直だからな……これからは少し労わってやるか」


 そんな事を言いながら、ニアと妖精達が準備してくれた朝食兼昼食を食べたグレンは「美味いな、これ」と料理を口に入れて驚いていた。


「妖精界の野菜って凄く栄養価が高いみたい。普段、作ってるやり方で作ったけど、こんなに美味しさが違うんだよ」


「それは凄いな……」


「私もここまで美味しくなるとは思わなかった。ニアの料理の腕、かなり上がって来てるのね」


 フレイナもまたニアの料理を食べて、そう料理を見つめながら驚いた視線を向けて感想を言った。

 それからフレイナとグレンは、黙々と料理を食べて、ニアは黙々と食べるグレンの姿を見て笑みを浮かべながら自分も料理を食べ進めた。


「グレン、今日は何かする予定あるの?」


「ん~、特に決めてない。正直、こっちに来たのもニアと一緒の時間を作ろう思ってきただけだから、特定のしたい事は考えいないんだよな。逆に、ニアは何かしたい事とかないのか?」


「したい事? ん~……」


 グレンからの質問にニアは、頭を抱えて悩んだ。

 しかし、一向に案が浮かばず結局、昨日と同じく妖精界を散歩してみて回る事になった。


「そういや、野菜って妖精達が作ってるのか?」


「自然に出来てるのもあるけど、あの子達が作ってるのもあるわ。まあ、そもそも妖精界自体が過ごしやすく作られてるから、野菜や果物は自然に成長してるのよね」


「みたら分かる。色んな所に果物の木とかあるよな」


「田舎の村とかでも、ここまで沢山の果物の木は無いと思う。妖精界って本当に凄い所だね」


 ニアは、妖精が持ってきた果物を受け取りながらそう言った。

 その後、妖精界の中でも開けた場所にやって来たグレン達はそこにシートを敷いて休む事にした。


「風が気持ちいいな」


「うん。そうだね~、こんなゆっくりしたのはじめてかも……」


 グレンとニアは、シートに横になりながら風を感じてそう言いながら空を見上げた。


「二人共、そのまま寝ちゃ風邪ひくわよ?」


「わかってるよ。さっきまで俺は寝てたから、眠くも無いしな。ニアも大丈夫だよな?」


「……私はちょっと眠くなってたかな」


 フレイナの言葉に反論したグレンは、隣に寝ているニアを見るとちょっと眠そうにしているニアが居た。


「……まあ、これだけ気持ちよかったら眠くなるのも分かるな」


「どうする? 一旦、家に帰ってお昼寝でもする?」


「ん~、大丈夫だよ。ちょっと眠くなっただけだけど、散歩の続きしよう」


 ニアはフレイナの提案を断り、シートから起き上がった。


「無理そうなら、いつでも言うんだぞ?」


「うん。本当に無理してないから、大丈夫だよ」


 グレンからも心配されたニアは、笑みを浮かべてそう答えてグレン達は散歩の続きをする事にした。

 それからグレン達は昨日も来た湖の近くに行ったり、妖精達が作ってる野菜畑を見に来て採れたて野菜を食べたりと散歩を楽しんだ。


「ふ~……今日は一日歩いてちょっと疲れたな……」


 その日の夜、家に戻って来たグレンは温泉に入ってそう口にした。

 すると、温泉の出入り口の方から音が聞こえ、そちらを向くとフレイナとニアが立っていた。

 流石にグレンは、ニアの裸はまだ見た事が無く慌てて「何で、ニアが入って来てるんだ!?」と叫んだ。


「わ、私もグレンと一緒に入りたいの……駄目?」


「いや、駄目じゃないが……おい。フレイナ!」


「なんで私が怒られるのよ? それにグレンは、私と一緒に入っても何も感じなかったでしょ? なら、大丈夫じゃない。それに手を出しても、グレン達はもうすぐ結婚するんだし、良いでしょ」


「いや、良いでしょって……ったく、ニアもそこに立ってないで早く入ってこい。風邪ひくだろ」


 グレンは頭を抱え、入口付近で止まってるニアを呼び、ニアは「う、うん」と恥ずかしそうに湯舟へと近づいた。

 そしてかけ湯をして、体の汚れを落としたニアはグレンから少し離れた位置の場所に入った。


「……恥ずかしがるなら、最初から後で入れば良かっただろ」


「だって、グレンとはもうすぐ結婚するから、その時にはやらないといけないでしょ? 初夜で恥ずかしくて出来ないってなったら、嫌だからグレンの体を見慣れておきたいと思ったの……」


「別に見慣れなくても良いだろ……」


 ニアの言葉に更に頭を抱えるグレンは、溜息交じりに「別に子作りの事を悩まなくても良いんだぞ」とニアに言った。


「確かに国や世界は、俺の子を望んでると思うが。ニアの気持ちが固まった時にすればいいと俺は思ってるから」


「……気持ちはあるよ。でも、恥ずかしい気持ちがあって、フレイナさんに相談して、それなら一緒にお風呂入る所から練習すればいいって言われたの」


 ニアから〝子作りしたい気持ちがある〟と知ったグレンは、その言葉を聞き少しドキッとした。

 その後、グレンはニアとの混浴が想像よりも緊張して、普段よりも早く風呂から上がり、早々に寝る事にしたグレンだった。

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