第284話 【お出かけ・3】
帰宅後、グレンは直ぐに飯と風呂を済ませ、明日は早い時間に出発する予定だからと早い時間に眠りについた。
「さてと、ニア。忘れ物は無いか?」
「うん、大丈夫」
翌日、グレンは荷物の最終チェックを行いニアを連れて、領土内の妖精界に通じてる場所へと転移して向かった。
そして転移してやってきた森の中に入っていき、少し先の方に行くと先に結界を解きに来ていたフレイナと合流して妖精界へと入った。
「うわ~、凄い。ここが妖精界?」
「ああ、ここが妖精界だ。俺が一年間暮らした場所だ」
「凄い幻想的な場所だね」
ニアは妖精界を見渡しながら、そう言うとフレイナが「ふふ、まだまだこんなものじゃないわよ?」と楽しそうに言った。
そしてフレイナとグレンは、妖精界が初めてのニアに色んな場所を紹介しつつ、妖精界を見て回った。
「妖精界って来たことがあるのって、私とグレンだけって本当なの?」
「ええ、そうよ。妖精界は強い結界が張られていて、私に認められた人しか入れない様になってるのよ。それで今まで私がこの世界に入っても良いって認めた相手は、グレンとニアの二人だけよ」
そうフレイナが言うと、ニアは「世界で二人目って凄いね」と他人の事の様にそう言った。
その後、妖精界の中に新たにフレイナが用意した大きな森の中にある湖へと到着した。
「こんな場所、前は無かったよな?」
「ええ、あの子達がグレンとの遊び場を作ってほしいって言われたから、用意してみたのよ。どうかなりいい光景でしょ?」
「……確かにな、妖精界で湖って考えた事が無かったがこれは有りだな」
「凄くいい、幻想的な空間がより強調されてる感じがする」
グレンとニアにそう褒められたフレイナは、嬉しそうに微笑んだ。
それから、グレン達はその湖の近くで少し早いが昼食を食べる事にした。
「こういう場所で飯って初めてだな」
「私も初めて、そもそもずっと街で暮らしてたからこんな沢山自然を堪能したの今日が初めて」
「……そういや、ニアは帝国の帝都生まれで今までこういう所に来る機会は殆どなかったな」
「うん。冒険者の時に依頼で森に行った事はあるけど、その時はこんな風にゆっくり食事とか出来なかったしね」
そうニアは言うと、朝食の為に用意して来たパンを食べながら周りの景色を堪能した。
「なあ、フレイナ。俺が暮らしてた時は、大樹が沢山ある所で暮らしてたけど、ここにも暮らす場所を作っても良くないか?」
「そう言われると思って、ちゃんと用意してるわよ。ちゃんとグレンの為に、温泉も用意してるわ」
「流石、フレイナだな。夜、風呂に入るのが楽しみだな」
温泉もあると聞いたグレンは、笑みを浮かべてそう言葉を返した。
フレイナは外でグレンと温泉に入る事で、グレンがどんな温泉が好きなのか大体把握している。
その為、グレンが妖精界で生活していた時と比べ、温泉の効能等もグレンが好きなタイプへと調整していた。
その話はフレイナはまだせず、グレンが温泉に入った時に明かそうと考えている。
「グレンって本当にお風呂が好きだよね。それって、何か理由があるの?」
「う~ん……ただ普通に好きってだけだな、風呂に入る事自体が好きで風呂に入ったら嫌な事も忘れられるからな、ストレスを感じても風呂に入れば少しの間は緩和されるから好きなんだよ」
「グレンは生まれつき風呂が好きなタイプの様ね。でも、昔はそんなお風呂に興味は示してなかったわよね?」
「ああ、自分が風呂好きって分かったのは冒険者になってからだな。それまでは、風呂なんて贅沢な物は入れなかったからな」
教会で育ったグレンは水浴びかシャワー等で汚れを落としていた生活をしていて、風呂になんて入った事は無かった。
冒険者になって初めて風呂というものを知り、そこで自分が風呂が好きで、特に温泉が好きだと初めて認識した。
「ただ、その頃は既に俺もおかしくなってたから、風呂に入ってもストレスが減る事は無かったんだよな」
「もう少し早くに分かってたら、また違ってたかも知れないわね」
「まあ、ただこうなって良かったと、今は思ってるよ。あそこで俺が壊れた事で妖精達やフレイナと会えたし、ニアともこうして出会えたんだからな」
そう言うとフレイナとニアは嬉しそうに微笑み、ニアは「私もグレンと会えてよかったよ」と言葉を返した。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。





