第281話 【式の準備・3】
式場を作る事は想定していても、まさか街まで作ってしまうとは予想していなかった王妃はグレンから話を聞いて驚き。
その報告に、王妃は頭を抱えた。
そして一緒に報告を聞いていたキャロルは、グレンの言った事に「流石、グレン君にゃ」と笑いながらそう言った。
「……それで、もうその街の建築は始めてるの?」
「はい、既に大部分は出来てますよ。基本的に俺の魔法で出来るので、フローラ達と何処にどんな建物を建てるか話し合いながら作ってるので、話し合ってる方が時間を取ってる感じですね」
結婚式場の為、新たな街作りを始めてから既に一週間が経っていた。
その間にグレンはかなりの速度で街を作っているが、その大半がフローラ達との話し合いで時間を取られている。
その理由は、今の街から人を流す為に少しでも住みやすい街を作るのが目的だった。
最初の街は安全性を第一に考える者達が集まり、第二の街はそれ以外を目的として集まった者達の街にしようと考えいた。
「成程ね。流石、フローラさんが協力して作ってるだけあるわね」
「はい、あいつのおかげで時間はかかってますが、良い街が出来つつあります」
その後、グレンは報告を終えると作成途中の街へと転移して向かった。
ここ数日間、転移を使えば家に帰れるが、寝るだけの為に帰っていたらニアに申し訳ないと思い。
グレンはこっちで借り暮らし用の家を建てて、そっちで最近は過ごしている。
「グレン、王妃様は何か言ってた?」
「ああ、式場の用意の為に街を作る事に驚いてたけど、今の街の収容人数とかも見せたら、街を作るのを納得してくれたよ」
「そう。まあ、あの人数を見たら誰だって許可をさせる得ないものね……」
グレンと共に街の資料をまとめているフローラは、今の街の人の数も知っている為、王妃の気持ちを察してそう言った。
「それで、職人の方はどうだ? 集まりそうか? こっちの街の建物自体は俺が作るけど、内装は職人に任せるんだろ?」
「ええ、大丈夫よ。もうこっちの街に集まっていて、今は素材待ちをしてる段階ね」
「そうか、なら止めてた建物作りも再開して良さそうか?」
「今の状態でもかなりの数を収容できるから、一旦はここでやめておこうと思うわ。グレンには、別の事をやってもらいたいの」
フローラの言葉に対し、グレンは「わかった。それで、別の仕事はなんだ?」と聞いた。
そんなグレンにフローラは、地図をテーブルの上に置いて仕事の説明をした。
グレンの次の仕事は、街と街を繋げる道を作る事だった。
「あのままだと、折角良い街でも人の流れが悪いわ。冒険者や商人も向こうの街とこっちの街を行き来すると思うから、グレンには道の整備をしてもらいたいわ」
「成程な、確かに道がガタガタだと移動もしにくいだろうから、道の整備はしておいた方がいいな」
「ちなみに、これは出来たらで良いんだけど、元々あった街の方にも新しく道を整備してほしいんだけど、良いかしら? 向こうの住民からも、こっちにも人の流れが欲しいって要望があって、最初のからある街を潰すわけにもいかないでしょ?」
「そうだな、分かったよ。なら、新しい道はフローラ達が考えておいてくれ、俺はその地図通りに新しく道を作っておくよ。街作りの方は俺の仕事は終わったみたいだし、道の整備は明後日からする」
そう言ってグレンはこっちの街での作業が落ち着いたので、久しぶりにニアの待つ家に帰宅した。
そうして家に帰ってきたグレンは、ずっと家を空けていた事をニアに謝罪して、その日は普段よりも一緒に居る時間を作ったグレンだった。
翌日、グレンは今日はニアの為に一日使おうと思っていて、朝早くに起きてニアと一緒に過ごしていると、懐かしい魔力を感じた。
「フレイナ、久しぶりだな」
「ええ、ただいま。グレン」
その懐かしい魔力とは、長い間グレンの元を離れていたフレイナ達だった。
「それで、俺の力になる為に考えてくるって言って出て行ったけど、何か考えついたのか?」
「ええ、勿論よ。最初は私達もグレン達が求めてる人材の確保をしようと考えたわ。でも、妖精の私達は特定の人としか喋る事が出来ないから、早々に人材確保の手助けは諦めたの」
元々、グレンは人材に困ってるのを見てどうにかしたいと考えていた妖精達だが、それが無理だと理解した後、どうすればいいのか話し合った。
「それでたどり着いたのが、人材を集めなくてもグレンが困らない方法だったの」
「そんな事可能なのか?」
「資料制作や物を作る人みたいな事は、流石の私達でもできない。でも、グレンの領土を守る事位なら私達でも可能だと話し合って気づいたの」
フレイナはそう言うと、グレンとニアの肩に手を置くと転移してある場所に移動した。
その場所はグレンの領地の端っこで、少し先に行けば別の貴族の領土だった。
その境目の所にグレンは目をやると、何かある事に気づいた。
「もしかしてだが、お前等領土全体を守る結界を張ったのか?」
「ええ、そうよ。私達に出来る事でグレンの力になれる事と言えば、外敵から守る事位だと思って、それならいつでも守れるようにと結界を張ったわ。結界の効果としては、領土に悪意を持ってる者が入った際に警告を出す力と、いざという時に領土全体に防御壁を出す力が備わっているわ」
一応、グレンの領土はダンジョンの数も多い事から、魔物に対してはそこまで効果は無いが、防御壁だけでも十分な力だった。
フレイナはそう言うと、妖精達が現れ「グレン、どう凄いでしょ!」とサプライズに成功して嬉しそうにしていた。
まさか、妖精達がこんな物を用意していたとは思わなかったグレンは、妖精達の力に改めて凄いと感じた。
「領地全体を守る結界って、相当な魔力が必要なんじゃ?」
「そこは大丈夫よ。自然の魔力を吸収して、結界を維持できるようにしてるの」
フレイナはそう言うと、再びグレン達の肩に手を置いて転移した。
次の場所は、森の中だったが視線の先にある物にグレンは視線が止まった。
「何だあれ?」
「あれは、結界の維持の為に作った物よ。まあ、名前を付けるとしたら領土守ってる事から〝守護石〟って名前が妥当かしらね?」
「凄い物だって感じるけど、そこまで魔力を感じないね?」
「……いや、あれは自然界に流れる魔力を吸い取ったのと同時に結界の維持に使ってるんだ」
グレンは一目でその石の力を見抜くと、フレイナは「そうよ。流石、グレンね」と微笑みながらそう言った。
「ちなみにこの石が壊されたり盗まれたら大変だから、この石の周りには強い認識阻害の結界を付けてるわ。グレンや、グレンが認めた人以外は入れない様になってるから安心して」
フレイナの言葉を聞き、グレンは「妖精って、やっぱりすごいな」とそんな感想を言うと、ニアも頷き、妖精の凄さを改めて知った二人だった。
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