第280話 【式の準備・2】
街の外に出たグレンは、ウォルドレット達と共に街から一番近いダンジョンへと潜る事になった。
そこは初心者から中級者向けのダンジョンで、レベルの割にかなり美味しいとグレンの領地でもかなり人気の高いダンジョン。
「ここ一度は来てみたかったにゃ、グレン君も入るのは初めてかにゃ?」
「そうだな、噂では聞いていていつかは行ってみたいと思っていた場所だな。こんな形で来るとは思わなかったが」
そうグレンが溜息交じりに言うと、ウォルドレットが「ほら、早く行こうよ」と言って速足でダンジョンの中に入っていった。
そんなウォルドレットの後をキャロルは楽しそうについていき、グレンも嫌々ながらもついていった。
「あれ、グレン。今日は魔法剣は使わないの?」
「こんな低レベルのダンジョンで使ったら、運動にもならないだろ? 運動目的で来てるから、使わないようにしてるんだよ」
「成程ね~、でもグレンって力強いからどっちみち一発で魔物殺してるから、意味ないと思うけどね~」
「……一応、こっちの方が疲れるからいいんだよ」
ウォルドレットの指摘に対してグレンはそう言葉を返し、ダンジョンの探索を続けた。
その日は結局、一日ウォルドレット達と一緒にダンジョン探索をして、良い気分転換にもなり翌日の仕事は少しだけ捗った。
「グレン、式場なんだけど本当に作っちゃうの?」
「ああ、なんかどれも惜しい感じだったろ?」
「そうだけど……でも、たった一回の結婚式にそんな作るなんて……」
「別に金ならいくらでもあるんだから、少しくらい無駄遣いしてもいいだろ」
世界を救った上に、今は大陸一の領土を持つグレンの懐は潤い続けている。
兵士団も作ったりと色々と金を使っているのだが、それでも受け取るお金の方が大きく、溜まり続けているのが現状だ。
「それに一生に一度の結婚式だろ? 俺達二人が気に入るところでやりたいだろ」
「う~ん……まあ、グレンがいいならいいけど……」
ニアはグレンの言葉に対し、グレンが折れる様子は無いのを見てそう言った。
実際の所、ニアは自分の為に金を使おうとしてくれてるグレンに嬉しさを感じていたが、それをうまく表現できずに困っていた。
しかし、このまま断り続けるとグレンに悪いと思い、自分が折れる事にした。
その後、ニアとの話し合いがまとまったグレンは、まずはフローラに話し合いの結果を伝えに行った。
「迷った結果、自分達の希望通りの結婚式場を作る事にしたのね」
「ああ、その方がいいと思ってな。一生に一度の結婚式だからな、お互いにこうしたかったって思いが無いようにしたいと思ってな」
「ふふっ、本当にグレンはニアちゃんの事を想ってるのね」
グレンがここまで変わった事に対し、フローラは内心涙を流したいほどに感動していた。
そんな内心をグレンに見透かされないように、フローラは早速その式場の建物の場所となる所を決める事にした。
グレン達の希望の中に、高台で建物から出たら景色がいい場所とあった。
その為、まず領主の街は候補から外された。
「まあ、これ以上ここに人が集まるのも人口の密度的に厳しい所だったし、丁度いいわね」
「ああ、それも考えていたんだ。それで、俺が考えたのはこことかどうだ?」
そうグレンは言いながら、グレンの領土が細かく書かれた地図のある場所を指をさした。
そこは領主のある街から半日程、馬車で移動した所で丁度何もない場所。
そこに良い感じに街を作ったら、希望通りの結婚式場が出来そうだとグレンは考えた。
「……貴方、まさか最初から街を作る気なの?」
「まあ、式場だけ作っても意味がないだろ? それにここなら、良い感じに他の街との中間地点だし、前からこの近くに街を作りたいってフローラも言ってただろ?」
「いずれはって話で、こんな直ぐに作るつもりは考えていなかったわよ……まあ、でもあったら便利なのは間違いないわね。この街は人が多すぎるから、少しくらい分けた方がいいって前から思ってたし」
フローラはグレンの話を聞き、そう自分の考えも口にしてグレンの提案に乗る形で話を進める事にした。
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