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第279話 【式の準備・1】


 ウォルドレット達がグレンの領地に住み始めて、一月程が経った。

 最初は更に増加した移民に手を焼いていたグレン達だが、徐々に人の数も減っていきようやく仕事が落ち着き、交代で休みを取る事にした。


「グレンが家でゆっくりしてる姿、久しぶりにみるね」


「ここ最近、ずっと忙しかったからな……マジで人の数が多すぎなんだよ」


「仕方ないよ。この街は大陸一の人気の街らしいから」


 ニアは愚痴るグレンに対してそう言うと、お茶を渡して隣に座った。

 既に王都以上の人が集まってるグレンの街は、元々かなり広い街だったが人が多すぎて拡張工事が行われた。

 グレンの魔法で拡張出来る為、そこまで難しくない。

 しかし、工事をした事で業務が一時的にできなくなり、工事を終えたグレンは業務に追われたのだった。


「そう言えば、最近はフレイナさんや妖精の子達みないけどどこに行ったの?」


「あ~、なんか俺の手助けをする為に妖精界で何かしてるらしい。一応、寝るときは戻って来てるから、心配はしなくても大丈夫だぞ」


「そうなんだ。妖精さん達もグレンの力になるために頑張ってるんだね」


 そうニアが言うと、玄関の呼び鈴がなりグレンは魔力を感じ取り、誰が来たのか察して溜息を吐いた。

 そしてグレンの反応を見て、ニアは「もしかしてキャロルさん?」と聞いた。


「無視だ無視。どうせ、ろくでもない内容で来たんだろうから」


 キャロルが大事な用で来る際はもっと緊急で来る事を知ってるグレンは、ただ遊びに来たと判断して居留守をしようとした。

 だがしかし、キャロルはそんなグレンの考えも見抜いていて、玄関から「ぐ~れ~ん~く~ん、あ~そ~ぼ~」と叫んでグレンを呼んだ。

 その声にグレンはイライラとしたが、ここで出たら負けだと思い耐える事にした。

 そうして耐える事数分、キャロルの声がしなくなりホッと胸を撫でおろした。


「キャロルさん帰ったのかな?」


「ふっ、今日は俺の勝ちだな……」


 そうグレンが思っていると、もう一人の魔力を感じて今度はその人物と一緒にグレンを呼ぶ声がした。


「……この声って、もしかして」


「ああ、馬鹿が二人に増えた」


 もう一人の声、それはウォルドレットだった。

 偶々、グレンの家の近くを通りかかったウォルドレットはキャロルの声を聞いて、面白そうだと思い一緒にグレンを呼び始めた。

 馬鹿二人の呼ぶ声に耐えられなくなったグレンは、イライラした様子で玄関に行きバッと扉を開けて叫んでいた二人の頭に拳骨を落とした。


「うるせぇんだよ! 出てこないって事は、面倒だから帰れって意味だ! 今すぐ、帰れこの馬鹿どもが」


「酷いな~、友達が遊びに来ただけだろ~」


「そうにゃ! 遊びに来た友達を無視するグレン君が悪いにゃ!」


 二人してグレンに抗議をすると、グレンは「本気で殴るぞ」と二人を脅した。

 そんなグレンを後ろからニアが止めて、「折角、来てくれたんだし」と言ってウォルドレット達を家の中に招き入れた。


「ニアちゃんは優しいにゃ~」


「うんうん、グレンとは大違いだよ」


 家に招き入れてくれたニアの事を褒め、居留守をしようしたグレンに対してべーと舌を出した。


「……それで、お前等は何しに来たんだ?」


「僕はキャロルの声がして、面白そうと思って来ただけだよ。まあ、久しぶりにグレンと遊ぼうかなって思っただけ」


「私はちゃんとした用事にゃ。王妃様から、グレン君の結婚式の予定はまだ決まってないか聞いてきてほしいって頼まれたにゃ」


 キャロルのその言葉に対し、グレンは「あ~……それはまだ決まってない」と言葉を返した。

 決まってないというより、グレンは決める時間が無かったのだ。

 この一か月間、仕事で忙しくて結婚式について先延ばしにしていた。

 ニアもグレンが忙しい事はわかっているので、落ち着くまでは大丈夫と言っている。


「確かにここ最近、人が更に増えて大変だよね。ガリウスもようやく落ち着いてきたのにって、少し前に酒場で嘆いてる姿を見たよ」


「あいつには本当に感謝してる。シルバーナイツとレッドヘッドオーガが居なかったら、街の治安は悪くなってたかも知れないからな」


 二つのクランには本当に世話になってると言うグレンに、キャロルは「じゃあ、もうちょっとかかりそうかにゃ?」と聞いた。


「ああ、一応だが式の場所はニアと色々と話して数個絞ってるから、それだけは早めに伝えれるように頑張ると王妃に伝えておいてくれ」


「了解にゃ」


 グレンの言葉にそうキャロルは返事をすると、立ち上がる様子もなくお茶を飲んでゆっくりとしていた。

 そんなキャロルの姿に、グレンは「何で帰らないんだ?」と聞いた。


「えっ? 用事もあったけど、グレン君と遊ぼうとも思ってたにゃから、まだいるにゃよ?」


「……このくそ猫が」


 キャロルの言葉にグレンはそう言うと、ウォルドレットから「久しぶりに体動かした方がいいと思うよ」と提案された。

 その言葉に、グレンも確かにと思ってしまった。

 その後、グレンはウォルドレットの提案に乗ってニアに留守番を頼み、ウォルドレット達と共に街の外に出かけた。

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