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第274話 【噂を聞いた者達・2】


 アンドルの店へと移動してきたグレン達は、グレンのおすすめの料理を注文した。


「へ~、ここがグレンの行きつけになる予定の店なんだ。雰囲気が良いね」


「ああ、個室だし、今度両親も連れてくる予定だ。肉の味が凄く美味いからお前も気に入ると思うぞ」


「それは楽しみ」


 ウォルドレットはグレンがそこまでおススメする料理が気になり、早く来ないかなとワクワクとした表情をした。


「そういえばグレンは肉が好物じゃったな」


「ああ、肉ならいくらでも食えるぞ、ただまあ肉だけ食ってたら健康に良く無いからニアには肉だけ食える日を週に一日作って貰って、その日以外は肉をメインじゃなくて野菜とか麺とかにしてもらってる」


「ほ~、意外と健康に気を遣ってるんじゃな」


「グレンさんってそういうの気にしないタイプかと思ってたんですが、意外と気を遣ってるんですね」


 グレンがちゃんと健康を意識して食事をしていると知ったマーリン達は、驚いた顔をしてそう言った。


「俺じゃない。ニアとフレイナが気にしてるんだよ。ほったらかすと、肉ばっかり食うからって」


「グレンに何か食べたい物ある? って聞いたら、肉ってしか返さない位に肉の事しか考えてないもんね」


「妖精界に居た時は酷くなかったけど、それまでの食生活とか知ってるから私もニアと一緒にグレンの食事を気にかけてるのよ。ほったらかすと、焼いた肉だけでも満足そうに食べ続けるもの」


 フレイナとニアの話を聞いたマーリン達は、それが予想通りだったため納得した顔をした。

 その後、暫く談笑していると料理が運ばれて来た。

 マーリン達は運ばれて来た料理の匂いを嗅いで、その匂いだけでも美味しいという事が分かり皆の分が並ぶと、直ぐに食べ始めた。


「んっ、これは美味いの!」


「高級店ではない店でこのレベルの食事は驚きです……それに美味しさに関しては、高級店を超えてますよ……」


 マーリンとティアは料理を一口食べると、そう感想を言った。

 二人の感想を聞いたウォルドレットは、自分の分の料理を一口食べると目をパッと見開き「なにこれ美味しい!?」と叫んだ。

 そして最後にニアも自分の前の料理を食べると、その美味しさに驚き「これがグレンが好きな味……」と研究者の様な顔をして料理を食べ進めた。

 そうして4人の反応を見たグレンは、満足した様子で自分の料理を食べ始め、それからグレン達は料理を味わいつつ会話をした。


「そう言えば、王都で活動してたクランが何組かこっちに流れてるって噂聞いたけどあれって本当なの?」


 食事をしていると、唐突にウォルドレットがそんな話題を切り出した。


「んっ? ああ、何組か確かに移って来たな、ガリウス達に影響された所が多かったな」


「シルバーナイツは王都でも有名なクランだったからの、あそこがこっちに移ると聞いて動く者は多かったじゃろうな……それこそ、商人も団体で移動したと聞いたぞ、現在も移動を考えてる者達が居ると聞いたから更に発展しそうじゃの」


「発展するのは良いけど、面倒事が増えなきゃいいんだけどな……ただでさえ、街の事で大変だったからな。人が来ないのも大変だろうけど、人が来すぎるのも逆に大変だ」


 そうグレンが愚痴ると、マーリンは「大変そうじゃの」と笑みを浮かべながら言った。


「マジで大変。色々と手伝ってもらったりしてるけど、それでも領主の役目があってマジで疲れてる。フローラやガリウス達、それにフレイナ達が居なかったら、俺は多分過労で倒れていただろうな」


「グレンさんの領地の話は聖国の方でも噂されてますけど、新しく領主になったばかりなのに大変だろうなと皆言ってますね。人が多く集まると、それだけ仕事が増えると言ってましたね」


「マジでその通りで、来る日も来る日も仕事に追われてましたよ。ここ最近は伴侶についてで色々と動いてましたけど、今も仕事は溜まり続けてますからね……仕事に戻りたくない」


 そうグレンは本音が漏れると、ティアも「その気持ち分かります」と悲し気な顔を浮かべながらそう言った。


「戦いが終わって国に戻ったら、仕事が山積みになっていて、本当に大変でした……戦い以上に辛くて、何度も逃げたいと思いながら必死でやってました」


「ティアさんもですか……お疲れ様です」


 グレンは自分の同じ境遇のティアに仲間意識が芽生え、労いの言葉を掛けるとティアもまた「グレンさんもお疲れ様です」と言葉を返した。

 その後、食事を終えたグレン達は店の前で解散する事になり、グレンはニアとフレイナと共に家に帰宅した。

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