第273話 【噂を聞いた者達・1】
ティア達の姿を確認したグレンは、三人に対して「何で居るんだ?」と声を掛けた。
「お久しぶりです。グレんさん、突然お邪魔してすみません」
「久しぶりじゃなグレン。お主が結婚すると聞いて、本当か確かめに来たんじゃよ!」
「そうそう。グレンが結婚するって聞いて、嘘でしょ!? って驚いて確かめに来たんだよ」
ティアはグレンに謝罪をして、他二人は結婚する事について聞きに来たと堂々と言った。
「それでグレン。結婚するって本当なの?」
「……本当だ。世界を守った事で俺の血を残したいって思う奴等が居るらしくてな、知らない奴と結婚するならこっちで決めようと思ってニアと結婚する事にしたんだ」
「そうなんだ。ニアちゃんは、料理が上手いから羨ましいよ。グレン、もう既に胃を掴まれてるんじゃない?」
「まあ、否定はしないな」
ウォルドレットの言葉にそう答えると、話を聞いていたニアは恥ずかしそうに顔を赤くして俯いた。
「ってか、それの為に皆来たのか?」
「儂とウォルドレットはそうじゃな、ティアは別件もあるようじゃったが一緒に行くかと話して一緒に来たんじゃ」
「別件? ああ、前に頼んでいた事ですか?」
グレンは〝別件〟と聞いて、以前ティアに頼んでいた事を思い出した。
グレンが頼んだ事、それは領地内の神殿建築と神官の派遣。
元の領地だけだったらこんな事を頼まなかったが、新しい街を作ったりしたので神殿が無いなと思ったグレンはティアにその事を頼んでいた。
「はい、グレンさんの頼みですから神官の中でも信頼できる者達を派遣する事にしました」
ティアはそう言うと、派遣した神官達の情報が載った資料をグレンに渡して、グレンはその中身を確認した。
普通、他国の神殿に派遣する場合、末端の神官と上級神官が派遣される事が多い。
しかし、グレンの所に派遣されたのは上級神官よりもさらに上、特級神官や神殿の幹部を務めていた者達が選ばれていた。
「……えっと、マジですかこれ?」
「はい、大マジですよ」
グレンの言葉に対してティアはニッコリと笑みを浮かべてそう返し、資料をチラ見したウォルドレットは「これは驚くな……」とグレンが驚いた事に納得していた。
「ってか、この人俺でも知ってるぞ? 一番弟子じゃないですか?」
「ええ、私の一番弟子ですがグレンさんの活躍を聞いて、修行の一環で神殿で活動させる事にしたんです。能力に関しては聖国でもかなりの腕なので、安心して良いですよ」
「安心というか、過剰な気が……」
聖女の弟子。
賢者マーリンの弟子である聖女ティアには、数多くの聖職者から選び抜かれた弟子が居る。
何万という聖職者の中でも聖女の弟子になる事は大変厳しく、その弟子の中でも序列争いは激しく行われている。
そんな序列争いの中、この数年間不動の一位として活動しているのが〝聖女の一番弟子〟という名で知られているイナという少女。
年齢は15歳と若く、聖女の弟子になったのは5年前と聖職者としては経歴が浅い。
しかし、能力はずば抜けていて次期聖女とも呼ばれている程の高い能力と、それに見合う性格だと世間では噂されている。
「元々、そろそろ神殿に派遣して仕事をさせようと考えていたんです。そんな時に悪魔騒動が起きて、その話が一旦無くなってたんですが今回、グレンさんの頼みを聞いて彼女に話をした所、神殿で働く事にしたんです」
「そうなんですね……」
グレンは驚き疲れ、ティアの言葉にそう返すと一息つこうとお茶を飲んだ。
「それにしても、他の人達もかなり腕のいい人達ばかりですよね」
「聖国でもグレンさんは人気が高いんです」
ティアがそう言うと、聖国来たら王都以上に歓迎されると思いますよと続けていい。
グレンは余程の事が無い限りは聖国は近づかないでおこうと、心の中でそう思ったのだった。
その後、時間的に昼食の時間になったので今からニアに飯を作って貰うのも申し訳ないと思ったグレンは、ニアとティア達を連れてアンドルの店に行く事にした。
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