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第267話 【嫁探し・1】


 自分の伴侶探しが密かに始まってる事を知ったグレンは、一度両親の所へと向かった。

 正直、一人で考えるには荷が重い話だし、こういった話は家族でした方がいいとグレンは考えた。


「グレンのお嫁さんか……確かにグレンは当主として、跡継ぎを残さないといけない立場だから、お嫁さんは必要だよね」


「それも俺の場合は世界を救った血を絶やすべきではないみたいな話があって、このままだと折角の平穏な生活が無理矢理婚活話が舞い込んで大変になりそうなんだよ……父さん達には、なにかいい案が無いか聞きに来たんだよ」


 グレンの必死さにグレイとアリアは初めてグレンに頼られた為、その頼みを聞こうと知恵を振り絞る事にした。

 その過程でグレイ達は、ある事を思いだしてこの場の話し合いに参加してるもう一人の人物へと視線をやった。


「そう言えば、グラムはどうなんだ?」


「……このまま気付かれないと思ったけど、無理だったか」


 グラムはグレイ達の視線に耐えかねて、溜息を吐きながらそう言い。

 勿論、居ないとグレイ達の質問に答えた。


「正直、お嫁さん探ししてる時間なんて今まで無かったからね。そもそも、貴族の子供で悪魔憑きじゃない方が少ない状況だったからね」


「……確かに、そう言われたらそうね。グラムの場合、見つける以前に相手が居なかったわね。グレンは、今まで恋愛とかしてこなかったの?」


 アリアからのその言葉に、グレンは一瞬反応すると「昔は居たよ」とその話題に触れられたくない様な態度でそう言った。

 その態度にアリア達は察して、それ以上の事は聞かなかった。


「それにしても、二人共容姿とかそんな悪くないのに今までそんなに女性関係が薄いとはな……」


「正直、俺は前の事件のせいで女性と距離をとっていたってのはある」


「僕の場合はそんな事する暇は今まで無かったからね。ようやく、最近落ち着いて考え始めたよ」


 グラムの言葉にグレイ達は「確かに、グラムには今までそんな考える暇は無かったな……」と申し訳なさそうな顔でそう言った。

 それからブラッド家は、今後の事も考えて真剣にグレン・グラム二人の嫁についての話し合いを行った。


「まずは自分の好みを知る所からだと思う」


「好み……グラム兄さんは何かあるの?」


「……特に無いね。まあ、家庭的とかは貴族だし要らないとして、身分で相手の態度を変える女性は嫌かな?」


 グラムのその言葉にグレンは「それは俺も一緒だな」と、グラムの理想の女性像の一つに共感した。


「でも、正直それ以外はパッと思い浮かばないかな? 強いて言うなら、運動が好きな子が良いかな? 今までずっと家の中で過ごしてきた反動か、最近は外で運動する事が好きだからそれに付き合ってくれる子だったらいいね。グレンはどうなの?」


「う~ん……年下は違う感じがするけど、絶対に嫌って訳では無いな。正直、パッとは出てこない。前付き合ってた相手の容姿に惹かれたとかでは無かったからな……」


「二人共、今まで本当に苦労をしてきたんだな……」


「二人に迷惑ばかりかけてごめんなさいね……」


 グレン達の回答に対して、グレイとアリアはそう申し訳なさそうにそう謝罪をした。

 ここまで自分の好みも把握してないとは思ってなかったグレイ達は、これは二人のお嫁さん探しは難航するなと心の中で思っていた。


「性格とか、特に気にしてる事とかは無いのか? こう明るい子とか、真面目な子とか」


「「特にない」」


「容姿については?」


「「健康的なら」」


「家柄とかは気にしてないもんな……」


「「気にしてない」」


 グレンとグラムは互いに同じ言葉でグレイからの質問に答えると、グレイは溜息を吐いて「難しいな……」と呟いた。

 そんなブラッド家の話し合いは一日で終わる事は無く、結局その日は解決策を見つける事が出来なかった。


「グレン、入ってもいいかしら?」


「母さん? 入っても良いよ」


 その日の夜、ブラッド家の領地の家に泊る事にしたグレンは、自分の部屋で寝る準備をしていると部屋にアリアがやって来た。


「昼間の話を聞いて思ったのだけど、無理にお嫁さんを探さなくてもいいのよ? 国からは世界の救世主だから跡継ぎを残して欲しいって思われてるかも知れないけど、私達は無理にグレンに結婚して子供作って欲しいとは思って無いから、あまり考えこまなくてもいいのよ」


「母さん、心配してくれてありがとう」


 自分の事を心配して声を掛けに来てくれたアリアに対して、グレンはそうお礼を言った。

 その後、アリアに無理はしないと約束をしてグレンは眠りについた。

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