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第251話 【パレード・3】


 採寸作業から数日後、パレード当日となりグレンは朝から王城で衣装を着させられていた。


「なあ、ガリウス。俺はもう駄目だ……」


「何言ってるんだ? まだ着替えただけだろ?」


 楽しいパレードだが準備は大忙し、それも今回は世界を救った記念のパレード。

 多くの国から人が集まり、城内にも他国の王族や貴族が集まっていて大勢の人が居た。

 そんな場所にグレンは慣れておらず、更には慣れない服装も着させられて体調を若干崩していた。


「ほらっ、グレン。シッカリして」


 そんなグレンにフレイナは回復魔法をかけて、何とかグレンの体調を整えていた。


「ガリウス、お前こんな人がいるのに気持ち悪くならないのか?」


「慣れだな、俺は元々クランマスターとして会議とか出席してたり、パーティーにも何度も呼ばれた経験があるからな、まあグレンがこういう集まりに出席した事が無いから慣れてないのは分かったけど、そこまでとはな……」


 グレンの容態が大分深刻だと理解したガリウスは、なるべく人を来ない様に周りの者に言って開始時間までグレンを別室で休ませる事にした。

 その後、城に続々と人が集まり、開始時間となった。


「グレン、大丈夫か? もう開始するみたいだから、俺達も移動しないといけないみたいだぞ」


「……分かった。少し横になったおかげで、大分回復した。もうここまで来たら、さっさと終わらせる」


 ようやくここでグレンは決意して、息を整えて部屋を出た。

 そしてガリウスと共に、飾りつけがされた馬車の一番目立つ場所にグレンは配置された。


「マーリンとウォルドレットはやっぱりここか、聖女様はまた別の場所なのか?」


「うむ、一応儂等と共に戦ったが聖国の代表じゃからな」


「成程な、というかこの馬車。よく馬が移動させられてるな、何か魔法でも掛けられてるのか?」


 グレンは自分達の乗ってる馬車をひいてる馬を見て、そう疑問に感じて質問した。


「あんまり詳しく聞いてないけど、なんかこの日の為に魔道具で色々と調整したみたいだよ? この国は勿論、聖国とか他の国とも話し合って材料や職人を集めて共同で作ったって言ってたね」


「儂は作ってる所を見ていたが、皆楽しそうに作っておったの」


「そんな事してたのか、ここ最近は出来るだけ外に出たくなかったからこんな物を用意してるのも知らなかったからな」


 そう言いながらグレンは窓から外をチラッと除くと、外が居ない所も飾り付けがされている事に気が付いた。


「よくもまあ、こんなに準備したよな。数日前に見た時は、普通の街だったのに」


「皆、この日の為に頑張ってたからね。グレンが寝てる間から、ちょくちょく準備しててグレンが起きたって知らせが出た瞬間から、一斉に動き出したんだよ」


「あれは凄かったの、グレンが起きたと知った者達が一斉に街の飾りつけをはじめて、一日で風景が様変わりした時は儂は寝ぼけて別の場所に来たのかと思ったくらいじゃ」


「確かにな、所々マジで凄い変わりようの所もあるからな……」


 そうグレンは外を見ながら言うと、人がいる区画に入り馬車の進みが遅くなった。

 そろそろじゃなと、マーリンが言うとグレン達は馬車の中を移動して、台の上に出る所へと移動した。


「……」


「グレン、流石にここに来て緊張してるとかはないよね?」


「大丈夫だ。もう覚悟は決めてる。後はさっさと終わらせて、旅行に行く事しか考えていない」


 ウォルドレットの言葉にグレンはそう返して、外からの合図を聞いたグレン達は私語を止めて外に出た。

 外に出たら並んで、手を振る。

 グレンはそれだけを頭に入れていたので、外に出て自分の位置に移動したグレンは手を振り周りを見渡した。

 世界を救った英雄達を待っていた民達は、グレン達の登場に更に盛り上がり歓声があがった。


「グレン、凄いね~。こんなにたくさんの人達が僕達の為に集まったんだよ」


 緊張してるグレンとは違い、ウォルドレットは凄く楽しそうにそう言い。

 隣に立つマーリンも、「良い眺めじゃな」と笑みを浮かべている。

 そんな二人の真ん中に立つ、グレンはただ無言で作った笑みを浮かべてその場で手を振り続けている。

 そんなグレンを心配に思ったフレイナは、姿を隠したまま声を掛けた。


(グレン、大丈夫?)


(大丈夫だ。遠くの方をみて、人の数を見ない様にしてるからな……)


(グレン……)


 これまでの人生で人から嫌われる事が多かったグレンは、人の視線に対しての耐性はあると自分では思っていた。

 だがそれは少し違っていて、人からの悪意に対しての耐性はあったけど、人の視線に対してはそこまで耐性が無いと改めて自分の弱さを再確認していた。

 それからグレンは笑顔を浮かべ手を振り続け、早くこの状況が終わる事を心の中で願い続けていた。

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