第250話 【パレード・2】
ニアの料理が来るまでの間なら話を聞くと言ったグレンに、キャロルは訪問した目的を話し始めた。
「王妃様達からの伝言を伝えに来たにゃ、明日グレン君の衣装の採寸をするから朝早くに城に来て欲しいらしいにゃ」
「……衣装って、別にいつもので良いだろ」
「駄目にゃ。折角のパレードにゃよ?」
グレンの言葉に、キャロルは真剣な顔をしてそう言い返した。
「それに今回のパレードは今までで一番大きなパレードで、今後は記念祭として例年行うって決まってる大事なパレードにゃのはグレン君も知ってる筈にゃよね?」
「知ってるけど?」
「だったら、そんな事言わないにゃ」
フンスッとキャロルは言い切ると、グレンは溜息を吐き「そもそも俺は出たくないしな~」と言った。
ここまで大人しくしてるグレンも、もう逃げられないと分かってるから大人しくしてるだけであって、出ないで良いなら出ないを選択しようと未だにしてる。
「一応俺の中で、代理とか頼めないかって未だに考えてるからな」
「無理にゃね。それだったら、グレン君が復活する前にやってたにゃ。皆は、世界を救った英雄のグレン君を楽しみにしてるにゃ」
そう言ったキャロルの言葉にグレンは再び、大きな溜息を吐いた。
その後、ニアが料理を持ってきたので話は終わりにして食べ始めた。
そして食後、風呂に入ったグレンは寝室に入りベッドに横になった。
「グレン、今良いかしら?」
「フレイナか、ああ良いぞ」
もう寝ようとしていたグレンは、フレイナの声に目を開けてそう返事をした。
そして、グレンの返事を聞いたフレイナは姿を現した。
「フレイナが戻って来たって事は、無事に領地に妖精界の扉を設置出来たって事か?」
「ええ、元々向こうにも妖精族の住処があって、そこに作らせてもらう事にしたのよ」
「そうなのか、無理矢理とかでは無いよな?」
「ええ、そこは大丈夫よ。逆に皆、私と会いやすくなって喜んでいたわ」
フレイナの言葉にグレンは「そうか、それなら良かった」と言い。
具体的な場所をフレイナから聞いて、後日見に行く事を決めた。
「それで私が居ない間も体を動かしてたって、この子達に聞いたけど体の調子はどうなの?」
「大分良くなってるよ。ただまあ、まだ少し違和感はあるな……」
「それは、あの戦いでグレンが限界を超えて力を出して、その力をいつでも使える様にって無意識に考えて、近づけようとして違和感が出てるんじゃないの?」
フレイナの指摘にグレンは考え込んだ。
そして少し考えたグレンは、そうかもしれないと思い自分の中でずっと違和感を感じていたが、少しだけ解けた気分となった。
「ありがとなフレイナ、やっぱりお前は俺の事を凄く見てて的確にアドバイスしてくれるな」
「ええ、グレンの事は沢山見てるもの何でもわかるわよ」
グレンに褒められたフレイナは、嬉しそうにそう言葉を返した。
それからグレンは良い気分のまま、その日は眠りについた。
そして翌日、嫌々ながらも城に訪れたグレンは数時間拘束され、パレードで着る衣装の採寸を行った。
「……疲れた」
夕方頃ようやく全ての採寸作業が終わり、城の食堂で飯を食べる事にしたグレン。
席についてからグッタリとした様子で、テーブルに顔を突っ伏した。
「グレン、一応貴族も居るんだからそんな恰好は良くないだろ……って、ああそうかグレンも貴族になったんだったな」
「ガリウス、今俺が疲れてるから良かったな……」
自分の事を揶揄って来たガリウスに対して、グレンは顔を向けて睨みながらそう言いながら体を起こした。
「それにしても、何で一斉に採寸作業をすんだよ……分けてやれば良いだろ」
「材料とか職人とかの兼ね合いで、一度に終わらせた方がいいってなったらしいぞ、そうキャロルが言ってたが聞いてないのか?」
「聞いてねえよ。今日、採寸作業があるだけしか聞いてない」
「……まあ、人が沢山居るって分かったらお前が断るってのを見越して言わなかったんじゃないか?」
ガリウスの言葉は当たっていて、キャロルは伝え忘れていた訳ではなく意図的に話していなかった。
それを後で知ったグレンは、いつかキャロルに大きな仕返しをしてやると心に誓い。
その日は採寸だけで力を使い果たし、家に帰って来たグレンは風呂だけ入って直ぐにベッドに横になったのだった。
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