第249話 【パレード・1】
それから数日間、グレンは家で大人しく読書をしたり、偶に妖精界に行き体を動かす日々を過ごした。
妖精界には転移眼で近くまで行き、フローラやガリウスの所に用事があっても必ず転移で移動していた。
「ねえ、グレン。いつまでそれ続けるつもりなの?」
転移で逃げ回るグレンに対し、フローラはそう呆れた口調でそう聞いた。
「……俺が領地に引っ越すまでだ。俺は嫌われる事には慣れてるが、ああも騒がられるのは苦手なんだよ」
この数日前、グレンは普通に外出しようとした。
そんな時、家の近くまで来ていた人に「悪魔との戦い凄かった」と言われ、握手を求められたりした。
更にはサインをしてくれや、妖精を見せて、魔法を使って見て欲しいと、徐々に人が集まって来た。
その場は転移で逃げたが、家まで来る輩も現れ、グレンは姿を隠す事にした。
「でも今準備されてるパレードはグレンが主役で、一番人に見られる場所にグレンが置かれるって聞いたわよ?」
「……俺は猛反対した。だけど、あいつらが勝手にしたんだ」
パレードに関して、連日話し合いが行われ、グレンも勿論その会議に出席していた。
本当はその会議にグレンは、出席するつもりは無かった。
しかし、家に来たウォルドレットに「じゃあ、グレンは当日知らないまま参加だね~」と笑いながら言われ危険を感じて参加した。
結果として最悪な事が当日知るではなく、数日前に知るに変わっただけで終わった。
「グレンって結局甘い所があるから、最後は許しちゃうもんね……まあそこがいい所だけど」
「俺自身は良くない……パレードが終わり次第、領地の方に引きこもるか……ガリウスからクラン活動は向こうでしないかって提案もされたしな」
「あら、クランにはまだ所属しておくの?」
「ああ、迷惑かけるだけかけて出ていくのは俺としても嫌だしな、それにガリウス達は拠点を俺の領地に移動するって話も出てるんだよ」
貴族になり領地を貰った事をグレンは、身近な相手に話していてその中にはガリウスも居た。
「シルバーナイツが王都から移動するの?」
「ああ、移動と言ってもフローラと同じ考えで、こっちにも一応クランの建物を残しておいて、二つの拠点を使う感じだと言ってたな」
「成程ね。ガリウスもグレンの領地の良さを知ってるのね」
「ああ、俺の領地。冒険者にとっても良い場所だって、ガリウスから力説されたよ……」
グレンはその時の事を思いだし、溜息を吐きながら天井を見上げた。
その後、フローラとの話し合いを終えたグレンは、転移眼で冒険者ギルドへと転移した。
ここ数日、転移で現れるグレンに慣れた転移先のルドガーは、グレンの登場に「扉から入って来いよ……」と呆れながらそう言った。
「なら外での騒ぎを禁止するように言ってくれ、俺の周りに来る奴等の大半は記者か冒険者なんだから」
「それは無理だな、今じゃお前に憧れて冒険者になるっていう子供もいる位だから、それだけあの戦いがカッコよかったんだろうよ。少し前は子供からも距離を置かれてた奴が、まさか憧れの存在になるとは俺は思いもしなかったよ」
「……俺もだよ。こんな事になるなんて、一年前は思いもしなかったな……ルドガー、あの時は色々とありがとな」
「グレンがお礼を言った!? ハッ、ドラゴンが攻めて来るんじゃ!」
ルドガーのそんな言葉に、「お前な……」とグレンは言いながら睨んだ。
「それでだルドガー、前から言ってたあの事は大丈夫そうか?」
「ああ、グレンの領地の冒険者ギルド。そこのギルドマスターにって話だろ、マスターに話したら俺だったらいいって推薦状を書いてくれたよ」
「そうか、良かったよ。って事は向こうに行っても、お前には世話になる事になるな。よろしくな」
グレンはそう言いながら手を差し出すと、ルドガーはグレンの手を握り「こっちこそ、よろしくな領主様」と握手を交わした。
その後、グレンはルドガーに「また色々と決まったら伝えにくる」と言って転移眼で自宅へと転移した。
「グレン、おかえり」
帰宅したグレンはニアに出迎えられリビングに入ると、何故かそこにキャロルが居た。
「おかえりにゃ、グレン君」
「……ニア。お腹減ったから、何か作ってくれないか? 昼、食べずに色々と回ってたから」
「うん、何が良い? お肉?」
「そうだな、最近は肉ばっかり食ってたから、野菜スープが良いかな」
そうニアと話ながら、グレンは椅子に座って料理が来るのを待つ事にした。
そんなグレンにキャロルは「無視するにゃ!」と言って、グレンの髪の毛を引っ張った。
「ちっ、何だよ。無視してるんだから、勝手に出て行けよ……」
「にゃ! それが仲間にいう事かにゃ!?」
「いつ俺とお前が仲間になったんだよ……それで、今日は何しにきた?」
グレンはキャロルを睨みながらにそう聞くと、キャロルは「良い話を持ってきたにゃ」と無い胸を張ってそう言った。
そんなキャロルの言葉にグレンは「良い話ね……」と言い、キャロルの胸を一瞥して溜息を吐いた。
「にゃ! あたしの胸見て、溜息吐くなんて失礼にゃ! 需要はあるにゃよ!」
「何処にだよ。別にお前の事は聞きたくないから、その良い話を早く話せよ」
これまで散々迷惑を掛けられてるグレンは、キャロルをそう雑に扱い話だけでも聞く体勢をとった。
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