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第245話 【表彰と褒美・1】


 それからグレンの体調は徐々に回復していき、数日後には魔法も使えるまで回復した。


「……マジで、いかなきゃダメか?」


「グレン君がいないと意味ないにゃ、だからもう諦めるにゃ」


「ここまで来て、まだいうか」


「グレン、そんな嫌がる事無いと思うよ。適当に受け答えするだけなんだし」


 魔法が使えるまで回復したグレンは現在、王城の前で入るのを嫌そうな顔をして躊躇っていた。

 そんなグレンに対してキャロルやガリウス、ウォルドレット達が無理矢理王城の中へと連れて行った。

 何故、グレンは王城に連れてこられているのか? それは、世界を救った英雄であるグレンを表彰するためだ。


「なあ、別に表彰式とかしなくてもいいんじゃないか? 裏で褒美を渡すだけで、俺は良いと思うんだ」


「世界を救った相手に対して、そんな裏で褒美を渡すだけで終わらせられるわけないだろ……」


 グレンの言葉にガリウスは呆れた顔でそう言うと、普段着のグレンを正装に着替えさせる為にメイドにグレンを引き渡した。

 その後、正装へと着替えさせられメイクまできっちりされたグレンは国王達が待つ部屋の前に連れてこられた。


「はぁ……」


「グレン、流石に諦めたらどうなの? 世界を救った時点で、こうなる事は予想できてたでしょ」


「あんだけ俺が拒否してたから、わんちゃん無くなると思ってたんだよ。それなのに他がごり押ししてきて……」


 悲し気な表情でグレンそう言って、目の前の扉を開けて中に入った。

 貴族、王族は勿論の事、悪魔との戦いで戦にこそ参加しなかったが準備等に手を貸した者達等、部屋の中には大勢の人々が居た。

 グレンはそんな面々が集まるなか部屋の中央を歩き、国王の前に向かった。


「俺、嫌だって言いましたよね……」


 ジト目でそう国王を睨むグレン。

 そんなグレンに対し、王様はニコリと笑みを浮かべ、大臣にアイコンタクト送り表彰式を始めた。


「冒険者グレン。世界を脅かそうと暗躍をしていた悪魔の発見、そしてその悪魔の討伐を最前線で戦った成果を称え表彰する」


 表彰式の間、グレンはその内容を聞き流し、心の中で早く終われとずっと願っていた。

 大臣の言葉、そして国王からの言葉を聞き終えたグレンは終わったと安堵した。

 しかし、一通りグレンの表彰が終わると、次はグレンと共に戦った者達の表彰が始まり更にグレンはその場に拘束された。


「今、俺の番は終わったじゃんかよ」


 そう愚痴を零すグレンの事は無視され、更に表彰式は続いた。

 その後、ようやく全ての表彰式が終わり、パーティーが始まるとグレンは色んな国々の貴族達から話しかけられ、嫌になったグレンはバルコニーへと避難した。


「英雄とかなるもんじゃないな……」


「ふふっ、嫌われ者だった頃に比べたら良いんじゃないの?」


「……まだあの頃のが自由だったよ。まあ、周りからの視線は今の方がいい気はするけどな」


 ふと、グレンは当時の事を思いだし、フレイナの言葉にそう返した。

 犯罪者の様な扱われ方をされ、嫌われていた自分は今では世界を救った英雄として称えられている。

 そんな事になるなんて思っても居なかったグレンは、持っていたワインを一気に飲み干し空を見上げた。


「フレイナ、ありがとな。俺が変われたのはお前や妖精達のおかげだ」


「好きでした事よ。それにグレンが変われたのは、グレンの力よ。私達は後ろから少し、押してあげただけだもの」


 そうフレイナが言うと、妖精達も「そうそう」「押しただけだよ」と口々に言った。

 そんなフレイナ達に、グレンは笑みを浮かべ「これからもよろしくな」と言った。


「あっ、グレン君。こんな所に居たにゃ! 主役が居なくなって、探してたにゃ!」


 少し酔い気味のキャロルがパルコニーに現れると、グレンは笑みを消して嫌そうな顔をキャロルに向けた。


「別にもうあいさつ回りは終わったんだし、俺が何処にいようと良いだろ」


「駄目にゃ! 主役様は、ちゃ~んとパーティーが終わるまで楽しんでもらうにゃ!」


 そうキャロルは言うと無理矢理、グレンを会場へと戻して再びグレンは色んな人に絡まれる事になった。

 そして翌日、パーティーで酔いつぶれるまで飲まされたグレンは何とか帰宅した自室のベッドで起床した。


「頭、いってぇ……」


 頭痛に苦しむグレンはフレイナに頼み回復魔法をかけて貰うと、少しだけ気分がよくなった。


「なあ、フレイナ。あの後の事、どうなったか教えてくれるか?」


「あの後って、キャロルに会場に連れ戻された後の事?」


「ああ、その後の事が曖昧にしか覚えてなくて何か変な事とかしてなかったか?」


「大丈夫よ。グレンが変な事を起こす前に連れて帰って来たから」


 フレイナからそう聞いたグレンは「助かった。ありがとな」と感謝の言葉をフレイナに言った。


「まあ、でもあのまま見ているだけも面白そうだった気もするわね。私が連れ帰ろうする時点で、上半身裸になってたもの」


「……本当に俺、変な事してないよな?」


「大丈夫よ。脱がされた時点で、連れ帰って来たから」


 ジーとフレイナの見つめるグレンは、その言葉が本当だと信じるしかなかった。

 それから汗臭さと酒の匂いが入り混じった変な匂いしてる事に気付いたグレンは、風呂に入る事にした。

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