第243話 【10日後・3】
それから数時間後、日が落ちきった頃にグレンは目が覚め、寝る前は酷かった頭痛は治まっている事に安堵した。
「病み上がりはちゃんと大人しくしておくか……」
マリア達との話に少し自分でも楽しくなって、無理をしていたという自覚があった。
だがそれでここまで酷くなるとはと後悔して、完全に良くなるまでは大人しく過ごそうとグレンは決めた。
「今のグレンに回復魔法も効かないし、ゆっくりと休むことが一番いいものね」
今のグレンはただの体調不良ではなく、魔力減少による体調不良の為、魔法でどうにかできるものではない。
一番いい回復方法は安静にして暮らす事、そうフレイナはグレンに言った。
「分かってるよ……ああ、でも腹は減ったな。ニアに頼んで、飯作ってもらうか」
それからグレンはベッドから起き上がり、リビングへと向かいニアに夕食を作って欲しいと頼んだ。
「お昼にお肉食べたけど、どうする? 夕飯は、スープにしておく?」
「あ~、そうだなスープでいいけど、肉少し多めに入れてくれるか?」
「うん、分かった。お肉多めの野菜スープ作るね」
ニアはそう言うと、厨房の方へと行きグレンは夕食が出来るまでリビングで待つ事にした。
待ち始めて少しした頃、玄関の呼び鈴が鳴り調理をしてるニアに行かせるの無理だと判断したグレンは重い腰を上げて玄関に向かった。
「むっ? 意外に元気そうじゃな、グレンよ」
「グレンさん、体調の方は大丈夫ですか?」
「マーリン、それにティアさんも何しに来たんですか?」
玄関の扉を開けると、外にはマーリンとティアが居た。
「キャロルからグレンが起きたと聞いての、様子を見に来たんじゃよ。ティアとは偶然そこで会って、一緒に来る事になったんじゃ」
「私は先生からグレンさんが起きたらしいと聞いて、体調確認も兼ねて来ました」
二人からそう言われたグレンは、取り敢えず家の中にいれる事にした。
「……思っていた以上に体調は良さそうですね。魔力減少になると、体を悪くする人が多いのですがグレンさんは魔力減少以外は殆ど良い状態です」
「そうですか? 昼間、物凄く頭痛が酷くてついさっきまで寝込んでましたけど?」
「頭痛や吐き気に関しては、魔力減少によってよく起こる事ですからそこはどんな魔法使いでも抑える事は出来ないと思います。ただそれ以外の筋肉の現象だったり、関節痛等も怒るのですがグレンさんはそれらの症状は一切ないですよね?」
「あ~、そうですね……もしかして、フレイナが治してくれていたのか?」
ハッと気づいたグレンは、横に座っているフレイナの顔を見てそう聞いた。
「ええ、魔力減少で起こる症状の中でも魔法が効く症状は随時魔法で治していたわよ」
「そうだったのか……殆ど、寝ていたから魔法を使われてる事に気付いてなかった。ありがとな、フレイナ」
そうグレンがお礼を言うと、フレイナは「当然の事をしただけよ」と頬ほ赤くして照れた様子でそう言った。
「成程、妖精族の長様の力でしたか……人間の魔法では不可能の魔力減少によっておこる症状を和らげるなんて、凄いとしか言えませんね」
「聖女の力でも無理なんですか?」
「神の力を使えば出来ない事も無いですけど、そんな事に使える程頻繁に出来る技ではありませんから、実質無理ですね」
ティアはグレンの質問に対して、キッパリと言いきった。
「ちなみに言うと賢者の儂でも、魔力酔いによって減少状態になった場合は苦しむ日々を送る事になる。じゃから、ギリギリで保つように心がけておる」
「俺も普段はそうだよ。ただ今回に関しては、そんな事を考えている暇はなかったからな……」
「そうじゃろうな、グレンの戦い儂も見させてもらったがギリギリで勝利を掴めたようじゃったしな」
「ああ、出せる力全てを使って何とか倒せた。それ程、最後の悪魔はヤバイ奴だったよ」
上位悪魔1体ずつなら、まだグレンもここまで疲弊する事は無かった。
だが6体の上位悪魔と数百の下位悪魔が集まった〝集合体の悪魔〟を倒すには、自分のもてる全ての力を倒せなかったとグレンはマーリンに言った。
「ふむ……あの戦いを見て、流石の儂も戦いたいという思いは考えられなかったのう。よく勝てたの、グレン」
「勝たなきゃヤバかったしな、俺が倒れたら終わるっていう考えもあったから根性で耐えてたよ」
その後、夕食の調理が終わりニアが料理を運んできた。
夕食を済ませて来たと言っていたマーリン達だが、料理を見て何故か腹の虫が鳴いた。
「多めに作ってますから、賢者様達もいりますか?」
「……うむ、用意してくれぬか」
「……その、お願いします」
流石に恥ずかしいと感じたマーリン達は小声でそう言うと、ニアはマーリン達の分の食事も用意して一緒に食べる事になった。
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