第24話 【報告会・1】
突然のマリアの登場に、グレンは「えっえっ?」と混乱した。
そんなグレンに対して、マリアはダッとダイブするようにグレンに抱き着いて、涙を流した。
「グレン君。生きてて、良かったぁ~!」
マリアは大粒の涙を流しながら、そう叫びグレンの胸で泣き続けた。
その後、暫くマリアを落ち着かせる為に時間を使った。
「そのマリアさん、王都に来てたんですね」
「ええ、丁度グレン君が居なくなった後位から王都の実家に帰って来て、色々としていたのよ」
「それって、俺を探す為ですか?」
「それは勿論だけど、他にも色々とあったのよね」
グレンの質問に対して、マリアは疲れた表情を作りそう答えた。
この一年、グレンの捜索をする為に王都に拠点を移していたマリアだが、捜索だけに集中する事は出来なかった。
その理由は、グレンやマリアが過ごした教会の悪事が酷かったせいである。
国からの援助金を着服、犯罪組織との繋がり、違法薬品の密輸等。
教会の責任者達は、揃いもそろって悪事に手をそめていた。
「そんな事になってたんですね……」
「よく今まで隠し通してきたと、それらが明るみになった時に感心したわ」
「あれっ? って事は、今教会はどうなってるんですか?」
「事件が片付くまでは、誰も出入りしたら駄目って事になってて今は私の実家で皆暮らしているわ」
マリアの言葉を聞いたグレンは、子供達が野宿していない事に「そうなんですね」と安心した様子でそう言った。
「それで、グレン君。私もそろそろグレン君が居なくなっていた間の事を知りたいのだけど、話してくれるかしら?」
そうマリアから言われたグレンは、自分が信頼する相手でもあるのでルドガー達に話した同じ内容をマリアに伝えた。
終始、驚いた顔をしたり悲しい顔をしたりと表情をコロコロと変えていたマリアは、話を聞き終えた後、グレンの事をジッと見つめた。
「……色々あったね。グレン君」
「その言葉で済ませちゃうのねマリア」
「だって、こんな話を聞くなんて思わないじゃない! 今も頭の中は、混乱してるのよ!」
フローラの呆れた言葉に、マリアはそう反論した。
「そう言えば、今更だけどフローラ達はマリアさんと知り合いだったのか?」
「グレン繋がりで知り合ったのよ。グレンが消えた時に、マリアさんが王都に移住して来て、そこから関係があるのよ」
「そうだったのか……それにしても、フローラはマリアさんに敬語は使わないんだな」
「出会った時に無しで良いって、言われたのよ。それより、私達からしたらグレンがマリアに対して敬語を話しているのが不思議よ」
フローラのその言葉に、ルドガーもウンウンと頷いた。
「まあ、慣れかな? 子供の頃からマリアさん相手には、こんな風に喋ってたからな……でも他のシスターとかには、普通に喋ってたけど何でマリアさんには敬語で喋ってたんだろ?」
「グレン君って昔っから本が好きで、敬語で喋り慣れてた方が大人になった時に面倒事が少なくなるって自分で考えて、私を練習相手にしてたらそれが染みついちゃったのよね」
そんな幼少期のグレンの行動を思い出しながら、マリアはそうフローラ達に語った。
それを聞いたフローラとルドガーは、ここで初めて聞いたぞ? という目でグレンを見た。
「いや、ほら王都に来る頃には色々と頭を弄ってたからさ……でも、最初来た時はまだマシだったと思うぞ? ルドガーも覚えてるだろ?」
「ああ、まあ言われてみれば王都に来た当初は、まだマシだったような気もするな……」
ルドガーを味方につけたグレンは、フローラに対して「ほらな!」と言った。
そんなグレンの様子に「誇れる事じゃないわよ」と、フローラは一刀両断した。
その後、当初の目的だった情報をフローラ達から教えて貰う事にしたグレン。
まず最初に聞いたのは、アレイン達がどんな状況なのかを聞いた。
「やっぱり、そこが気になるの?」
「気にならないって言うと嘘になるな、ただまあ王都に居るんなら出来るだけ会いたくはないな」
「そう。でも残念ね。アレインを含めた幼馴染パーティーは、まだ王都で活動を続けているわよ。まあ、活動と言える程の事はしてない様子だけどね」
そう言ったフローラは、資料の束を本棚から取り出してテーブルに置いた。
そこにはアレイン達の行動が細かく書かれていて、グレンは「何でこんなものがあるんだ?」とフローラには聞いた。
「理由は二つあって一つは、グレン君がいつか戻って来た時に必要だと思ったから、二つ目は教会の悪事に加担していないかの監視の為ね」
「……成程ね。一つ目は良いとして、二つ目の理由は俺も分かる気がするな」
「あら、何か知ってる風ね。この一年、色々と調べてるけど全くその事には情報が入らないんだけど、グレン君は何か知ってるの?」
グレンの言葉にフローラ、ルドガー、マリアの三名は真剣な表情でグレンの顔を見つめた。
「俺も別に詳しく知ってる訳じゃないぞ? もうその時には、パーティー内でも扱いが酷くなってたからな」
グレンはそう前置きを置いてから、自分が知っている情報を話し始めた。
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